「iPhone XS」に搭載の「A12」プロセッサ、当面はライバル不在か

A11 Bionic

A11 Bionic

 
今年の新型iPhoneに搭載される、7nmプロセスルールで製造される「A12」プロセッサは、処理性能でライバルをリードする状態が続きそうです。

「iPhone XS」に搭載、7nmプロセスルールで製造の「A12」

iPhone XS」「iPhone9」になると見込まれる新型iPhoneに搭載される「A12」プロセッサは、台湾TSMCが独占受注し、7nmプロセスルールで製造されると言われています。
 
プロセッサは、微細化が進むほど処理性能が向上し、消費電力が少なくなります。10nmプロセスルールで製造されるA11 Bionicプロセッサよりも、7nmプロセスルールで製造される「A12」プロセッサの方が高性能で省電力になります。
 
「A12」プロセッサは、iPhone Xに搭載されているA11 Bionicプロセッサと比較して処理速度が最低でも30%向上し、消費電力が40%は減少すると予測されています。

主要チップメーカー、7nmプロセスルールでの製造を延期

サプライチェーンの動向に詳しい台湾メディアDigiTimesによると、チップ製造大手であるQualcommとMediaTekは、「A12」と同じ7nmプロセスルールでの製造開始を当初計画の2018年から2019年に延期しています。
 
UMCも同様に、設備投資を最先端の微細化技術から既存技術へとシフトしているほか、Globalfoundriesは7nmプロセスルールでの製造を無期限延期することを決めています。

プロセッサの微細化とともに膨れ上がる設備投資

主要チップメーカーが7nmプロセスでの製造を先送りする背景には、微細化の進行とともに、製造に高い技術と巨額の設備投資が必要となる、という事情があります。
 
A11 Bionicプロセッサは10nmプロセスルールで製造されていますが、チップメーカー各社は10nmプロセスルールでの製造に必要な設備投資も負担が大きく、Androidスマートフォンは当面、12nmや14nmプロセスルールで製造されたチップを搭載するモデルが主流になると予測されています。

当面、「A12」が処理性能トップの座を維持か

巨額の研究開発費と設備投資を投入できるAppleとTSMCが製造する、7nmプロセスルールによる「A12」は、しばらくはプロセッサの処理性能トップの座を維持できそうです。
 

「チップゲート」騒動まではiPhone用の「Aシリーズ」を受注していたSamsungが、Appleから「A13」の受注獲得に向けて動いているとの報道もありましたが、2020年まではTSMCによる独占受注が続くと報じられています。

進化どこまで続く?TSMCの創業者「ムーアの法則はもう無効」

プロセッサの性能向上のスピードは、「ムーアの法則」という言葉で語られてきました。これは、Intelの共同創業者ゴードン・ムーア氏が1965年に提唱した「集積回路上のトランジスタ数が18カ月ごとに2倍になる」という法則です。
 
しかし、TSMCの創業者で、今年6月に引退したモリス・チャン氏は昨年、「ムーアの法則はもう有効ではない」と、2025年には技術の進化が行き詰まるとの見通しを語っています。

 
 
Source:DigiTimes, 9to5Mac, AppleInsider
(hato)

この記事がお役に立ったらシェアお願いします

この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

特集

目次