iPhone11シリーズに搭載されたモデム、Intel製としては最後
Intel製のスマートフォン向けモデムが、iPhone11シリーズにも採用されていることが確認されました。以前からIntelのモデムは性能の問題が指摘されており、法廷闘争を繰り広げていたQualcommとAppleが和解した原因とされています。
Intel最後のスマホ向けモデム
少なくとも米国では、今年発表されたiPhone11、iPhone11 Pro/Pro Maxの3モデルとも、搭載されているモデムはIntel製のようです。
見分け方は簡単で、フィールドテストモード(「電話」アプリのキーで*3001#12345#*と入力し電話をかける)で表示されるメニューがQualcomm製とIntel製では異なります。
採用されているのは、最後のIntel製スマートフォン向けモデム「XMM 7660(下り最大通信速度1.6Gbps)」だと考えられています。iPhone11 Proシリーズはこのモデムによって、XMM 7560(同1.0Gbps)を搭載したiPhone XSよりも通信速度が速くなっており、先日もiPhone11 ProがiPhone XSよりも約13%速いとする調査結果が出ています。
IntelとAppleの縁
Appleにとって、近年のIntelは頭痛の種でした。
iPhone7/7 Plusを始めとした一部iPhoneシリーズは、キャリアや地域によって、採用されているモデムがIntel製かQualcomm製かで異なります。ところが、Qualcomm製がIntel製の性能を上回っていることが判明すると、Intel製モデム搭載端末を入手せざるを得なかったユーザーを失望させました。
Appleが通信速度の遅いIntel製に合わせるべく、Qualcomm製の性能を制御しているとする疑惑は、iPhone7シリーズに限らずiPhone Xでも浮上しました。
5G対応で躓き
幸か不幸かQualcommとAppleが決裂したことで、iPhone XSシリーズはIntel製で統一されましたが、Qualcomm製を搭載したSamsungのGalaxy Note9にLTE通信速度テストで完敗しています。
Qualcommと泥沼の訴訟合戦を繰り広げていたAppleは、消去法でIntelを採用するほかありません。
しかし、Intelは次世代通信規格5Gのモデム開発でもQualcommの後塵を拝しており、5G対応iPhoneのリリースにも黄信号が灯っていました。当時、多くのアナリストは「5G対応iPhoneの登場が2021年以降になるだろう」と予測していました。ライバルのSamsungはQualcomm製モデムを利用し、2019年に5G対応モデルをリリースしています。
Qualcommと和解する羽目に
この頃になると、Apple幹部もIntelへの苛立ちを隠そうともしなくなります。
ハードウェア技術を担当をするジョニー・スルージ副社長は「Appleでは決してこんなことは起きない」とIntelの担当者に激昂、ティム・クック最高経営責任者(CEO)も決算発表会で「Intel製プロセッサがMacの売れ行きにブレーキをかけた」と批判しています。
最終的にIntelに任せていては埒が明かないと悟った結果、Appleが採った行動はQualcommとの和解、さらにIntelのスマートフォン向けモデム事業の買収でした。
Appleは和解金としてQualcommに45億ドル~47億ドル(約4,870億円~5,080億円)を、モデム事業の買収金としてIntelに10億ドル(約1,080億円)を支払ったとされています。
これによってAppleは、2020年の5G対応iPhoneにQualcomm製モデムを採用し、今後数年かけて自社開発モデムを進めていくと考えられています。
Source:PC Mag
(kihachi)