Appleの「内製化」の歴史〜今後はどうなるのか

    A16 Bionic


     
    2023年1月、AppleがApple WatchやiPhone向けのディスプレイを内製化するとの報道が、大きな注目を集めました。
     
    しかしAppleがディスプレイを自社開発しているとの噂は数年前から繰り返し報じられています。またその他の主要半導体部品については、10年以上前から自社で開発を行っています。
     
    Appleのこれまでの内製化の歴史と、今後内製化が噂される部品についてまとめてみました。ちなみにここでいう内製化とは設計や技術を社内で行うという意味であり、Appleは製造についてはTSMCなどの他社に委託しています

    アプリケーションプロセッサ

    Appleは2008年4月、P. A. Semiを2億7,800万ドルで買収しました。買収にあたり、P. A. Semiの技術者約150人はそのままAppleに移っています。
     
    P. A. SemiはPower ISAプロセッサを開発・設計するファブレス企業だったため、AppleはPower ISAプロセッサをMacに搭載するために買収したのではと推測されていました。
     
    しかし2008年6月の世界開発者会議において、スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO、当時)が、P. A. Semiの買収は、iPodやiPhoneを含む将来のモバイルデバイス向けのカスタムチップ開発に必要な人材を獲得するためだったと明かしています。
     
    つまりP. A. Semiの買収は、現在のシステム・オン・チップ(SoC)、Aシリーズ開発のためだったということになります。
     
    A16 Bionic

    GPU

    2017年4月、英Imagination Technologiesは、Appleが同社に対し、iPhoneなどのグラフィック処理プロセッサ(GPU)に使用している技術利用契約を2年以内に終了すると通告してきたと発表しました。
     
    imagination technologies
     
    契約終了が公表される以前、AppleはImagination Technologiesの買収を検討していたとされ、同社から技術者を引き抜いていたとも伝えられています。
     
    Imagination Technologiesが2015年〜2016会計年度にAppleから受け取っていたロイヤルティーなどは、同社の総収入のおよそ半分を占めていたため、Appleとの契約打ち切りの報道後、同社の株価は70%も暴落。2017年9月には中国政府管下のCanyon Bridgeに買収されました。
     
    Appleがその後、自社開発のGPUへと切り替えたのはご存知の通りです。
     
    ただしAppleは2020年1月、Canyon Bridge傘下となったImagination Technologiesと、再び複数年のライセンス契約を結んでいます

    電源管理IC(PMIC)

    dialog-semiconductor
     
    iPhone向けに電源管理IC(PMIC)を供給していた英Dialog Semiconductorに対し、Appleが総額6億ドルを支払い、PMICを内製化する計画を打ち出したのは2018年10月のことでした。
     
    Dialog SemiconductorはAppleが3億ドルをPMICのライセンス料として支払い、300人以上の従業員を雇い入れる見込みであると発表しました。
     
    残りの3億ドルは、その後の3年間でAppleに納品されたその他のDialogの資産と製品へと投じられました。

    Appleシリコン

    2020年6月の世界開発者会議で発表したAppleシリコンにより、AppleはiPhone、iPad、Apple Watchだけでなく、Macのシステム・オン・チップ(SoC)も内製化する計画を明確にしました。
     
    Macには2006年から、Intel製チップが搭載されてきました。
     
    AppleはM1シリーズ、M2シリーズと順調にAppleシリコンの開発を続け、Intel製チップからの移行を進めており、2023年1月にはM2 ProとM2 Maxを発表しています。
     
    M2 Pro M2 Max

    今後Appleが内製化する部品とは

    このようにAppleは、半導体を中心に部品の内製化を進めてきており、今後もその方針は続くと思われます
     
    では次に内製化される部品は何でしょうか。

     

    スマートフォン用モデムチップ

    Appleが現在開発を進めており、内製化される可能性がかなり高いと思われるのがスマホ用モデムチップです。
     
    2019年4月にIntelが5Gスマホモデム事業からの撤退を発表、同年7月にはAppleが、Intelのスマホ向けモデム事業を10億ドルで買収しました。
     
    この買収は当然ながら、自社で5Gモデムの開発・設計を行い、Qualcommへの依存をなくすのが目的と思われます。
     
    Apple製品情報に詳しいアナリストのミンチー・クオ氏は、Appleが独自開発した5Gモデムが最初に搭載されるのは、最速でも2025年発売見込みのiPhone17シリーズになると予測しています。
     

    Wi-Fi + Bluetoothチップ

    AppleはWi-Fi + Bluetoothチップを自社で開発・設計し、現在iPhoneなどに搭載しているBroadcom製チップの採用を取りやめると、Bloombergが2023年1月に報じました。
     
    同メディアによると、Appleは5GモデムとWi-Fi + Bluetoothチップを1つのパッケージに統合した製品の開発も進めているとのことです。

     

    マイクロLED

    そして冒頭でも触れましたが、AppleはApple WatchやiPhone向けとしてマイクロLEDディスプレイを内製化すると、2023年1月に報じられました。
     
    Appleは早ければ2024年にマイクロLEDディスプレイを自社製品に搭載開始するというのが、その報道の内容です。
     
    Bloombergによると、Appleは2018年頃よりマイクロLEDの開発に取り組んでおり、まず2024年末までにApple Watch Ultraに自社開発のマイクロLEDディスプレイを搭載、その後順次iPhoneを含むその他のデバイスへ搭載していく計画とのことです。

    ハードウェアだけでなくソフトウェアも自社製へ切り替え

    apple マップ
     
    Appleが「内製化」を進めているのはハードウェアだけではありません。
     
    Appleは当初、自社製品でのデフォルトとしてGoogleマップを使用していましたが、2012年に自社で開発したAppleマップをデフォルトとしました。
     
    当初は問題だらけだったAppleマップですが、その後開発が進められ、10年で大きく進化しています。
     
    またAppleは、Googleに対抗する検索エンジンを独自に開発しているという噂もあります。

     
     
    (lunatic)

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