【レポ】0円SIM第3の刺客、povo2.0を試す~楽天やdonedoneとの比較も

povo2.0のトップ画像

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携帯電話料金の低廉化が政府から要請されるなか、最近は低価格を売りにしたさまざまなSIMが登場しています。なかでも、楽天モバイルやdonedoneは0円で使用可能なプランを持ち、運用によっては無料でスマートフォンを利用することが可能です。
 
そんななか、auが提供する新料金プランである「povo」がバージョンアップし、「povo2.0」へと生まれ変わりました。povo2.0も基本料金が0円であるところが特徴ですが、楽天モバイルやdonedoneとはどのような違いがあるのでしょうか?
 
この記事では実際にpovo2.0を契約して使ってみたレポートと、楽天モバイルやdonedoneを含めた0円運用SIMの比較をお届けします

基本料金が0円のpovo2.0

povoは4大キャリアの1つであるauが提供する新料金プランであり、auに比べて低廉な料金が特徴となっています。
 
当初はドコモのahamoやソフトバンクのLINEMOとある意味横並びの料金プランだったのですが、9月13日にpovo2.0として生まれ変わることが発表されました
 
このpovo2.0は9月29日から提供開始され、基本料金が0円なのが特徴です。
 
基本料金が0円の場合、通話料金は従量制で30秒あたり22円、国内SMSは1通あたり3.3円かかり、通信速度は128kbpsに制限されます。
 
しかしながら、「トッピング」という形でさまざまなオプションを都度購入できるようになっており、これにより規定時間まで通話かけ放題にしたり、高速に通信できる通信容量(いわゆる「ギガ」)を購入したりすることが可能です。
 
ただし、最後に購入した有料トッピングの有効期限の翌日から180日間、有料トッピングの購入がない場合には、利用停止や契約解除となることがある点には注意が必要といえます。
 
それぞれのユーザーのニーズに合わせてオプションを都度足せるということで、うまく運用すればそれぞれの人にとって最適な料金にすることが可能といえるでしょう。

povo2.0のeSIMを契約

そんなpovo2.0を実際に契約してみました。
 
使用するスマートフォンはiPhone XRで、eSIMでの契約です。

povo2.0アプリで契約開始

povo2.0は「povo2.0」アプリを使って契約をおこないます。
 

 
最初にメールアドレスを使ってアカウント登録をおこなうのですが、メールで送られてくる6桁の認証コードを入力する有効期限が2分間しかありません
 
povo2.0のメール認証
 
認証コードに時間制限があるのはよくありますが、2分間というのはこれまで経験したなかで圧倒的に短いです。
 
メールアドレスが認証できたら契約に入ります。
 
まずは、SIMカードかeSIMか、そして新規契約か他社からの乗り換え(MNP)かを選択します。
 
povo2.0のSIMなどの選択
 
今回はeSIMと新規を選択しました。
 
続いて契約内容やお申し込み内容が表示され、重要事項説明などへの同意が求められます。
 
povo2.0の申し込み内容の確認および重要事項説明への同意
 
支払い方法にはクレジットカードしか選べないようです。国内で普及している主要なブランドに対応しています。
 

 
今後の流れが表示されるので確認しましょう。
 
povo2.0の契約の流れ

本人確認で大苦戦!

次に、運転免許証、マイナンバーカードまたは在留カードを使って本人確認をおこないます。
 
povo2.0の本人確認
 
povo2.0はスマホのカメラを利用してアプリ上で契約が完結できるためかんたん、と思っていたのですが、ここで大苦戦しました。
 
まず、本人確認のために使えるブラウザはiPhoneの場合Safariのみです。Chromeの場合はカメラが起動できず、エラーとなりました。
 
しかも、使うブラウザをアプリから選ぶことができず、自動的にデフォルトのブラウザが使われます。このため、povo2.0の契約の前にはデフォルトのブラウザがSafariになっていることを確認しておくことをおすすめします
 
無事Safariが起動してカメラが使えたら、まず、本人確認書類をカメラで撮影します。
 
確認書類を斜め上から撮影することにより、その書類がコピーでないことを確認する点が印象的でした。
 
povo2.0の本人確認書類の撮影
 
次に顔を撮影するのですが、ここでも首を振ることにより写真を使って認証をしていないことが確認されます。
 
povo2.0での顔の撮影
 
これらの撮影の際、ピンボケや枠内に入っていないなどの問題点は自動的に判定され、やり直しが促されます。
 
無事に撮影できたら名義や住所などを登録します。
 
povo2.0の名前や住所などの登録
 
上の画像では隠していますが、本人確認書類から名前や生年月日、住所を自動的に読み取っているらしく、入力する必要があるのは読み仮名や電話番号など一部のみでした。
 
ただし、筆者の場合はマンション/アパート名に関しては住所の一部として入力されてしまっており、自分でカット&ペーストしてマンション/アパート名の欄に記載する必要がありました。
 
無事に入力できたら本人確認処理が開始された旨のメールが来ます。
 
povo2.0の本人確認処理開始
 
ところがここで再び苦戦を強いられます。
 
筆者の場合、2回も本人確認に失敗し、再度手続きが要求されました
 
povo2.0の本人確認処理に失敗
 
1回目は処理を始めて1分で失敗の旨のメールが来たのですが、2回は3時間くらいしてから来ました。
 
しかも、どちらも上の図のように明確な理由が書かれていません。
 
このため、何が悪いのかわからず、自分としては同じことを何回も繰り返すしかありませんでした
 
最終的に3回目で通ったのですが、このときは3分でOKのメールが来ました。
 
povo2.0の本人確認に成功
 
3回目で変えたことといえば、マンション/アパート名と号室の間にスペースがなかったのを、書類にはあったので入れたことくらいです。スペースがなかったのはpovo2.0が読み取った内容そのままだったのですが…。
 
繰り返しますが、何が原因なのか明確に通知されないため、結局何が悪かったのかについては闇のなかです。

eSIMを発行して設定

続いて、eSIMの発行処理がおこなわれ、完了すると「eSIMを発行する」というボタンがアプリに現れます。
 
筆者の場合は本人確認処理が夜遅くに完了したため、このボタンが現れたのは翌朝でした。
 
povo2.0でのeSIM有効化
 
残念ながらメールでの完了通知はなく、自分で完了を確認する必要がありました。
 
意外だったのは、電話番号として090で始まる番号がもらえた点です。たまたまかもしれませんが、使われなくなった番号が回ってきたのかもしれません。
 
その後、20分ほどでSIMの有効化が完了した旨のメールがやってきました。
 
アプリを立ち上げると、「eSIMの設定」ボタンが現れるので、これを押すことで設定方法とQRコードなどが現れます。
 
povo2.0でのeSIMの設定
 
しかしながら、eSIMを設定したいのはアプリを使っている端末であり、QRコードをカメラで撮影することができません
 
どうすればいいのかと説明を読むと、アクティベーションコードを手動で設定せよとのことでした。
 
やり方は、設定→モバイル通信から「モバイル通信プランを追加」を選び、「詳細情報を手動で入力」を選んで各種コードをコピー&ペーストします。
 
povo2.0のeSIMアクティベーションコードの手動入力
 
楽天モバイルの時はQRコードの読み取りなしでも自動で設定してくれたので、ちょっと面倒です。
 
最後に発信テスト用番号である「111」に電話をかけます。この発信テストを実施しないと正常に利用できない場合があるそうなので、注意が必要です。
 
povo2.0で111にテスト用発信をする
 
色々苦労しましたが、ようやくpovo2.0が使用可能な状態になりました。
 

povo2.0のトッピングあり/なしでの通信速度は?

通信できる環境が整ったので、povo2.0での通信速度を測定したいと思います。
 
測定にはSpeedtestアプリを使用しました。
 

まずは0円運用状態の、トッピングなしでの通信速度です。
 
povo2.0のトッピングなしでの通信速度
 
前述の通りpovo2.0はトッピングなしだと最高通信速度が128kbpsに制限されます。このため、測定結果も下りが140kbps、上りが80kbpsとなりました。制限よりも少し速いのは誤差でしょう。
 
この制限は以前レポートしたdonedoneエントリープランと同じであり、かなり用途が制限されるものと考えられます。
 
次に、トッピングありでの通信速度を測定します。
 
トッピングを購入するには、アプリから利用したいトッピングを選択します。今回は試しに「データ追加1GB(7日間)」を購入してみました。
 
povo2.0で1GB(7日間)のトッピングを購入
 
「購入」を押すと即時決済され、途中解約や返金はできないので注意してください。
 
また、高速通信に関するトッピングの適用は購入するとすぐにおこなわれるようで、自分の好きなタイミングで有効にするわけではありません。
 
このため、あらかじめ購入しておいて後から使い始めることはできず、使いたいときに買う必要があります。
 
無事、1.00GBがチャージされたことがアプリのホームに表示されます。
 
povo2.0のトッピング購入後の表示
 
この状態でSpeedtestを実行した結果がこちらです。
 
povo2.0のトッピング購入後の通信速度
 
下りが27.8Mbps、上りが6.88Mbpsとかなり高速化されました
 
ちなみに、続いて楽天モバイルのSIMでSpeedtestを実行した結果がこちらです。
 
楽天モバイルのSIMでSpeedtestを実行した結果
 
測定する場所や日時によっても結果は変わるので単純比較はできませんが、今回は楽天モバイルの方が高速でした。

できるだけ安く運用するのに適したSIMはpovo2.0?楽天モバイル?donedone?

0円で運用可能なSIMとしては、povo2.0のほかに、楽天モバイルdonedoneのエントリープランがあります。
 
0円運用を含め、できるだけスマートフォンを安く運用するならどのSIMが良いのでしょうか?
 
さまざまな条件で考察してみました。

通話機能が必要なら楽天モバイルかpovo2.0

まず、通話機能が必要ならdonedoneのエントリープランが候補から外れます
 
donedoneエントリープランは通信専用であり、通話ができないためです。
 
また、発信をよくおこなうならRakuten Linkアプリからの通話が無料の楽天モバイルが良いでしょう
 
一方、電波が届きづらい場所での通話を想定するなら、基地局の整備が進んでいるauの電波が使えるpovo2.0がおすすめです。
 
povoはデフォルト状態では従量制の通話料金ですが、5分以内かけ放題(550円/月)や通話かけ放題(1,650円/月)のトッピングが用意されています。

高速通信を大量におこなうなら楽天モバイル

高速での通信を大量におこなう予定があるなら楽天モバイルがおすすめです。
 
どれだけ使っても最大3,278円/月であることを売りにしており、上限を気にせずに通信をおこなうことができます。ただし、通信しすぎると速度制御が発生する可能性はあります。
 
povo2.0はトッピングの種類が豊富で、自分が使う通信容量に合わせて購入すればお得に使える点が売りです。
 
ただ、実際比較してみると、どの容量を選んでもpovo2.0は対応する楽天モバイルの料金と同等か高くなることがわかりました。
 

通信容量 povo2.0 楽天モバイル
~1GB 390円(データ追加1GB(7日間)) 0円
~3GB 990円(データ追加3GB(30日間)) 1,078円
~20GB 2,700円(データ追加20GB(30日間)) 2,178円
20GB以上 6,490円(データ追加60GB(90日間))
or
12,980円(データ追加150GB(180日間))
3,278円

 
また、3GBや20GBのトッピングの有効期限が「1カ月」ではなく「30日間」であるため、31日ある月が来るごとにチャージするタイミングがちょっとずつずれていくのも気になります。
 
1GBのトッピングの有効期限が7日間というのも、あまり使わない人には短いと感じられることでしょう。
 
なお、povo2.0にはほかにも330円で24時間高速データ通信が使い放題になるトッピングが用意されています。
 
donedoneエントリープランは今のところ最高128kbpsでの通信のみとなっており、高速通信ができません。
 
将来的には高速通信が可能になるチケットが用意されるとのことなので、その登場に期待したいところです。

Wi-Fiメインならどれでも

あまりSIMを使った通信をおこなわず、Wi-Fiがメインという人はどれを選んでも良いと思います。
 
SIMを使った通信をまったく使わなければ、どのSIMを選んでも0円運用が可能です。
 
ただし、povo2.0には180日間の間に一度もトッピングを購入しない場合は利用停止や契約解除となります。
 
このため、本当の0円運用をするにはpovo2.0はおすすめできません
 
povo2.0のトッピングのなかには、スポーツ配信のDAZNやバーティカルシアターのsmash.が使い放題になるパックもあるので、そういったものに興味があるのであれば選ぶのもありです。

複数SIMの組み合わせは?

最近のiPhoneは、iPhone13シリーズであればデュアルeSIMまたは物理SIM+eSIM、それ以外のiPhone XR以降のモデルなら物理SIM+eSIMで複数SIMの組み合わせが可能です。
 
このため、複数の0円運用SIMを組み合わせるのも良いでしょう
 

おすすめなのは、楽天モバイル+povo2.0か、楽天モバイル+donedoneという組み合わせです。
 
楽天モバイル+povo2.0の場合は、楽天モバイルの電波が届くエリアが狭いという欠点をpovo2.0が使えるauの電波で補うことができます。
 
さらに、povo2.0側でもトッピングを購入すれば高速通信ができたり、電話番号を2つ持てたりするのもメリットといえます。
 
楽天モバイルをメインに、donedoneエントリープランをサブにすることでも、同じように楽天モバイルの電波を補うことが可能です。
 
また、この組み合わせではpovo2.0のように有料トッピングを購入する義務がないので、真の0円運用が目指せます。
 
一方、povo2.0+donedoneは今のところメリットを見いだせません
 
どちらもauの電波を利用する上に、donedoneエントリープランは今のところ高速通信ができず、povo2.0だけで十分です。
 
将来的にdonedoneエントリープランの有料チケットとして、povo2.0のトッピングラインナップを補えるようなものが提供されたら組み合わせる価値が出てくるかもしれません。

また1つスマホを安く運用する手段が増えた

この記事で紹介したとおり、povo2.0は基本料金が0円であり、うまく運用すればスマートフォンの利用料金を安く抑えることができる魅力的なSIMといえます
 
また、デュアルSIMが使えるなら楽天モバイルとの組み合わせもおすすめです。
 
一方、契約の申込時には本人確認が理由もわからず失敗するなど、窓口を持たないサービスゆえの難しさもあると感じました。
 
ただ、povo2.0の登場によって、消費者にとってはスマートフォンを安く持つ手段がまた1つ増えたといえます。
 
さまざまな選択肢から自分に合ったものを賢く選びたいものです。

 
 
Source: povo2.0
(ハウザー)

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この記事を書いた人

本職はSoCの設計者。このためPCやスマホのHW/SW両方に造詣が深く、その知見に基づいた記事を執筆している。スマホ歴はiPhone4→(Android)→iPhone XR→13 Pro。

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