ロシア政府当局からの要請遵守で、Appleの監視システムに警戒感強まる
ロシアの政府当局にAppleが立て続けに従う姿勢を示したことで、同社が最近導入を発表して問題となった児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の監視システムについて、改めて警戒する声が上がっています。
政府当局の意向にあっさりと従う
Appleは今週に入り、市民的自由を左右する問題で二度、ロシア政府当局の要請に従いました。
一度目は同社が提供しているiCloudプライベートリレー(プライバシー保護機能)の停止、そして二度目は反体制派の投票アプリのApp Storeからの削除です。Appleは詳細を明らかにしていませんが、いずれも政府当局からの圧力を受けての行動だと考えられています。
これまでもAppleは現地法に準拠することを明らかにしてきたため、ロシア政府当局の意向に従うこと自体は驚きではありません。
しかし、同社がユーザーのiCloudやiMessageをスキャンして、児童性的虐待コンテンツの発見に取り組む方針を打ち出した際、少なくないユーザーやセキュリティ専門家が政治的検閲に転用される危険性を指摘していたことを忘れてはならないでしょう。
監視システム導入に警戒感強まる
セキュリティ専門家は、デジタルフィンガープリントを児童性的虐待コンテンツに限らず、あらゆる種類のコンテンツに対して作成することができるため、権威主義的な政府が政治的キャンペーンポスターの画像をデータベースに追加することもあり得ると指摘します。
これに対し、Appleはそのようなことは絶対に許されないとし、iCloudなどで導入を計画しているシステムは、児童性的虐待コンテンツのデータベースにある画像のハッシュを検索するだけに過ぎないと述べています。
また、抑圧的な政府が特定のコンテンツを検索するよう強制する場合においても、Appleは「そのような要求は拒否する」と強調しています(後に導入延期を発表)。
とはいえ、今回のようにあっさりと現地法に準拠する姿勢を見せられると、このような表明もどこまで信じていいのか分からないと語る、セキュリティ専門家の指摘にも頷けるところはあります。ニュースサイト9to5Macも「どうやってAppleがこの件を貫き通せるのか分からない」と厳しい口調で、監視システムの導入に警戒感を示しています。
なおGoogleも先日、米司法省を経由しない限りは香港政府当局からのユーザーデータの提供要請には一切応じないと表明していたにもかかわらず、香港政府当局にユーザデータを開示していたことが判明しています。
Source:9to5Mac
(kihachi)