Apple、App Storeの理念や取り組みを公開。米最高裁の判断に対応か

    Apple App Store 「Principles and Practices」

    Apple App Store 「Principles and Practices」
     
    Appleは現地時間5月28日、「Principles and Practices(原理と取り組み)」と題したWebページを公開しました。App Storeがユーザーの安全性を確保し、公正なビジネスを行い、雇用を創出していることを紹介しています。先日の米最高裁が下した判断に対応した動きとみられます。

    App Store、2つの目標

    Appleが公開した「Principles and Practices」のWebページには、「Dedicated to the best store experience for everyone.(誰もが、最高の経験ができるストアであるために)」というコピーと、App Store創設時の2つの目標が示されています。
     
    1つは「ユーザーが安全に、信頼してアプリを発見しダウンロードできる場所であること」、もうひとつは「開発者に素晴らしいビジネス機会を提供すること」です。
     
    Apple App Store 「Principles and Practices」
     

    App Storeの審査で重視するもの

    App Storeでは、「プライバシー保護、セキュリティと内容に優れたアプリを提供し続けることで、ユーザーの信頼を獲得し、維持することが何より大切」というAppleの考えのもと、アプリの審査が行われていることが紹介されています。
     
    App Storeの審査では、ユーザーの多様な考え方に配慮しつつ、ガイドラインが定める基準を満たさないアプリはリジェクト(却下)されます。
     
    却下の対象となるアプリとしてAppleは、特に子供を危険にさらすようなアプリ、ポルノや差別的内容、拷問や虐待のほか、ひどく悪趣味な内容を含むもの、と例を挙げています。
     
    安全性、パフォーマンス、ビジネス、デザイン、法的事項の5つの柱で構成される「App Store Reviewガイドライン」は、日本語でも公開されています。
     
    Apple App Store 「Principles and Practices」
     

    1週間に10万点のアプリを審査、通過率は60%

    App Storeでの審査体制についても情報が公開されています。
     
    App Storeを完全な状態に保つために、世界の81言語、3つのタイムゾーンに対応しているそうです。
     
    最新のOSで動作しないために削除したアプリの数は2016年からの通算で140万点以上にのぼり、これによってユーザーが高品質なアプリを探しやすい環境を整えている、と取り組みを説明しています。
     
    Appleは、App Storeに関する、以下の数字も公開しています。
     

    • 1週間の審査数:10万点。大半は、開発者の申請から24時間以内に審査される
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    • 審査の通過率:60%。開発者は、審査通過後にすぐ公開するかどうかを選ぶことができる
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    • 審査での却下率:40%。最も多い却下理由は、細かいバグ、次いでプライバシーの問題
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    • App Storeの審査チームが1週間にかける電話:1,000件。開発者に電話をかけ、却下の原因を解決できるよう支援し、App Storeに掲載できるよう支援

     
    Apple App Store 「Principles and Practices」
     

    世界のアプリ開発者が、App Storeから約13兆円を獲得

    Appleは、App Storeが世界2,000万人の開発者にとっても、世界155の国と地域のユーザー10億人にとっても、使いやすく魅力的であるのに加えて、社会に貢献していることをアピールしています。
     
    App Storeの創設から、アメリカで150万人、ヨーロッパで157万人以上の雇用を創出しており、世界のアプリ開発者はApp Storeから1,200億ドル(約13兆円)を得ている、と説明しています。
     
    なお、Apple Japanは今年3月、日本国内で80万人以上、App Storeだけで576,000人の雇用を創出し、日本のデベロッパがあげた収益は240億ドル(約2.7兆円)以上、と説明しています。
     
    WWDC 18
     

    Appleの利益にならない無料アプリが84%

    App Storeで公開されるアプリの84%が無料アプリであり、Appleは無料アプリに公開場所を提供しているが一切利益を得ていないことや、Appleが販売金額に応じたコミッションを徴収する場合としない場合についても、例を挙げて説明しています。
     

    • 無料アプリ:開発者が他の収益モデルを持つなどの理由で、ダウンロードも使用も無料にしたアプリ。Appleはアプリへの支援、掲載、公開に対してコミッションを受け取っていない。
      (例:Amazon Alexa、Wikipediaなど)
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    • 広告により無料のアプリ:無料でダウンロードでき、開発者はアプリ内の広告で収益を得るアプリ。Appleはコミッションを受け取っていない。
      (例:Instagram、Twitterなど)
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    • 実物販売のための無料アプリ:開発者は物品販売や各種サービスから収益を得る。Appleは、App Storeでの公開だけでなく、実物の販売やサービス提供の取引からもコミッションを得ていない。
      (例:Amazon、Airbnbなど)
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    • アプリ内購入のある無料アプリ:ユーザーはアプリを無料で入手でき、追加機能やコンテンツが有料販売される。売上高の70%が開発者に支払われ、Appleは30%をコミッションとして受け取る。
      (例:キャンディークラッシュ、Skypeなど)
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    • サプスクリプションアプリ:ユーザーはアプリを無料で入手でき、定期利用料金をアプリ内課金で購入する。最初の1年間は、売上高の70%を開発者、30%をAppleが受け取る。2年目以降は、85%を開発者、15%をAppleが受け取る。
      (例:Hulu、Pandoraなどなど)
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    • 有料アプリ:ユーザーがダウンロード時に代金を支払う。売上高の70%が開発者に支払われ、Appleは30%をコミッションとして受け取る。
      (例:Monument Valley 2、Facetuneなど)
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    • 再生用アプリ:ユーザーがアプリの外で購入したコンテンツ(本、音楽、映画など)を楽しむためのアプリ。開発者が売上高の全額を受け取り、Appleはコミッションを受け取らない。
      (例:Amazon Kindle、Netflix、Spotifyなど)
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    • クロス・プラットフォームアプリ:App Store以外でもコンテンツや機能を購入可能なアプリ。Appleは、App Store以外で購入されたコンテンツに対して、コミッションを受け取らない。
      (例:Dropbox、Microsoft Word、Minecraftなど)

     
    Apple App Store 「Principles and Practices」
     

    開発者を支援、次世代の開発者を育成

    Appleは、開発者にApple Developer Programで各種ツール、コンパイラ、言語、API、SDKを提供し、革新的なアプリ制作を支援している、と説明しています。
     
    開発者には、掲載されるとダウンロード数が大きく伸びるApp Storeの「Today」特集や、ユーザーに合わせた「おすすめ」、検索ツール、ランキングなど、マーケティング機会が無料で提供されていることも紹介されています。
     
    また、次世代のアプリ開発者養成のための取り組みとして、インドのアプリ開発者支援プログラム「App Accelerator」や、イタリアのナポリ大学と提携して開設した「Apple Developer Academy」のほか、女性起業家を支援する「Apple Entrepreneur Camp」、毎年の世界開発者会議(WWDC)に学生を招待する「WWDC Scholarships」、誰でもプログラミングを学べる「Everyone Can Code」などを紹介しています。
     
    Apple App Accelerator
     

    App Storeは競争を歓迎する環境

    Appleは、App Storeは優れたアプリを提供するために競争を歓迎する環境であり、以下のApple製アプリと競合するアプリが数多く公開されている、とアプリのアイコンを挙げて紹介しています。

     

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    米最高裁の判断への対応か

    Appleがこのページを公開したのは、アメリカの消費者団体が「App Storeは独占禁止法に違反している」と訴えた裁判について、最高裁判所が訴訟の継続を認める判断を下したのに対応し、App Storeビジネスへの理解を広める目的と考えられます。
     
    Appleは今年3月、音楽ストリーミングサービスのSpotifyが「Appleは自社のビジネスを妨害しており、売上高の30%を取るのは不当だ」などと主張したことに対しての反論も公開しています
     
     
    Source:Apple
    (hato)

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