【CES2019後記】どうなる?近〜中距離ワイヤレス充電技術
米ラスベガスで現地時間1月8日に開幕したコンシューマー・エレクトロニクス展示会CES 2019は、11日に幕を閉じました。会期中に報告しきれなかった分を、【CES2019後記】という形でお伝えしたいと思います。
Appleと提携との噂もあったEnergous
昨年のCESで注目を集めた技術のひとつが、近〜中距離ワイヤレス充電でした。CES 2018開催を数週間後に控えた2017年12月には、ワイヤレス充電技術開発の米Energousが、同社の近距離ワイヤレス充電技術「WattUp」が米連邦通信委員会(FCC)による認証を取得したと発表、話題となりました。
Energousは以前からAppleとの提携が囁かれており、2017年秋発売のiPhone8に、同社のワイヤレス充電技術が採用されるのではないかとの噂が流れたほどでした。
ご存知の通り、これはあくまで噂話に終わりましたが、Energousは今年のCES 2019において、招待客のみを対象に「WattUp」を活用した近距離ワイヤレス充電が可能なレシーバーを搭載した補聴器、スマートグラス、トラッキングタグ(モノの場所がわかるようにするタグ)など、さまざまな製品のプロトタイプを披露しました。同社によればこれらの製品は提携企業により、それほど遠くない将来商品化されるとのことです。
また昨年のCESにも出展していた米Ossiaも、スマートフォンアクセサリーの人気ブランドSpigenと提携、トランスミッターから送られた電波を受信し、それを電力に変換してiPhoneを充電するケースを実用化すると発表しました。
近距離ワイヤレス充電のさまざまな課題
このように書くと、近〜中距離ワイヤレス充電機能を搭載した製品が、近い将来購入可能になるようにも思えますが、実際はそれほど簡単なことではなく、今もさまざまな課題が山積しています。
ワイヤレス充電の最大の問題は、エネルギー効率の低さです。トランスミッターとレシーバー間の距離が遠くなればなるほど、充電効率は落ちてしまいます。つまり電力を多く消費する機器の充電には不向きです。
前述のEnergousが、まず補聴器やトラッキングタグなどの実用化に取り組んでいるのは、これらの製品が小型で電力消費量が少ないからでしょう。同社はApple Watchのようなスマートウォッチや、スマートフォンのメーカーとも話し合いを進めている模様ですが、「契約が締結しない可能性もある」とも述べています。
一方Spigenとの提携を発表したOssiaはエネルギー効率を向上したと主張しているものの、それでも消費電力120Wのトランスミッターから2mの距離で3〜4Wの給電です。
また近距離ワイヤレス充電を行うには、レシーバーを搭載したケースだけでなく、トランスミッターも購入、設置する必要があります。1台のスマートフォンのみを充電するために、わざわざトランスミッターを購入する消費者はいないでしょうから、レシーバーを搭載したさまざまな機器(もしくは多様な機器に装着できるレシーバー)の普及も必須です。
近距離よりQi規格に軸足移動か
イスラエルWi-Chargeも、赤外線ビームによって離れた場所からのワイヤレス充電を可能にする技術を今年もCES会場でデモしていましが、照明にそっくりなトランスミッター(LIGHTS)から、レシーバーを搭載したおもちゃの列車を充電しながら走らせるという、昨年とまったく同じ内容でした。
ブース内の展示を見る限り、近〜中距離ワイヤレス充電技術よりも、公共スペースへのワイヤレス充電機器設置(こちらはQi規格)に力を入れているように見えました。
したがって、スマートフォンなどを離れた場所からワイヤレス充電する技術が一般に普及するには、まだかなり時間がかかると見てよさそうです。
(lunatic)