修理困難なデザインがAppleに大きなリスクをもたらす、との指摘

iFixit MacBook Pro 2016 バタフライキーボード

iFixit MacBook Pro 2016 バタフライキーボード
 
Appleは先日、MacBookやMacBook Proのバタフライキーボードに問題があることを認め、無償修理プログラムを開始しました。Appleは、修理が困難な設計のために多くのコストを負担することになるだろう、と指摘されています。

集団訴訟、そしてAppleが無償修理を発表

Appleは、2015年のMacBook、2016年のMacBook Proに、薄型で「安定性に優れた」バタフライキーボードを導入しました。
 
しかし、バタフライキーボードはその薄さゆえに、細かいゴミが入るだけで正常に動作しなくなる弱点があり、以前のモデルと比べて修理件数が多く、故障の再発率が高いこともわかっています。
 
また、キーボードの修理を依頼すると、キーボードは単体で交換できず、バッテリーやトラックパッド、スピーカーを同時に交換する必要があるために高額な修理費用が発生したとして、Appleを相手取ったユーザーによる集団訴訟が相次いで起こされています
 
そしてAppleは現地時間6月22日、「MacBook および MacBook Pro キーボード修理プログラム」としてキーボードを購入から4年間、無償で修理することを発表しています。

問題の予兆は2012年のMacBook Pro

iPhoneなどの詳細な分解レポートを発売直後に公開することで知られるiFixitの共同創業者で最高経営責任者(CEO)カイル・ワインス氏は、iFixitの公式ブログで「修理しにくい設計にしたために、Appleは高い代償を払うことになる」と述べています。
 
ワインス氏によると、今回のバタフライキーボードの問題の予兆は、2012年に発売されたMacBook Pro Retinaディスプレイモデルにあったそうです。同モデルはキーボードがバッテリーに接着されており、単体で交換できなくなっていたことが今回の問題と共通している、と指摘しています。
 
当時、MacBook Proは多くのテクノロジー系メディアに絶賛されましたが、iFixitは修理のしやすさで評価したスコアを10点満点中2点と非常に低く評価しました。翌年に発売された2013年モデルには、史上最低の1点という評価を下しています。

小さな砂粒が入ると取り除くのは非常に困難

バタフライキーボードの問題は、極限まで薄さを追求したデザインのために、ごく小さい物体がキーボードの下に入り込むだけでキーが正常に動作しなくなることにあります。
 
また、個々のキーキャップをユーザーが取り外すのはかなり難しく、特にスペースバーを壊さずに取り外すのは、修理のプロでも不可能です。
 
キーのスイッチ部分(画像の右下)に、小さな砂粒を入れてみると、キーを押す動作が完全に妨げられてしまい、AppleがサポートWebページで推奨しているような、エアダスターの圧縮空気で取り除く方法はあまり現実的ではありません。
 
iFixit バタフライキーボード
 
通常のキーボードであれば、細かいゴミでキーボードが使い物にならなくなることはないうえ、キーボードを単体で交換することも可能ですが、従来よりも40%薄いバタフライキーボードではそれらが犠牲になっています。

修理困難な設計がもたらす大きな代償

ワインス氏は、バタフライキーボードは製品を極限まで薄くした結果、使いやすさや機能性、修理のしやすさ、そして環境への優しさが犠牲になっている、とAppleの姿勢を批判しています。
 
また、Appleは購入後4年間の無償修理プログラムを実施することで、本来なら得られたであろう修理サービスによる利益を失っています。
 
これは、修理困難な製品デザインが、企業に大きな損失を与えることを示している、として、バッテリーの爆発・炎上が相次ぎ、世界的なリコール騒動に発展したSamsung Galaxy Note 7の例を挙げています。
 
仮に、バッテリーの交換が簡単な設計なら、Samsungはリコール対応に50億ドル(約5,500億円)もの費用を負担しなくて済んだはずです。

修理費用だけではない、Appleの損失

Appleにとって、損失は無償修理プログラムにかかる費用だけではありません。長期間の使用に耐える信頼性が高く交換可能な製品を望む、多くのユーザーの期待に応えないことは、より大きな損失になりえる、とワインス氏は指摘します。
 
第3世代バタフライキーボードは、少しくらい厚みが増しても耐久性の高いものになるだろう、と期待するコメントでブログを締めくくっています。

 
 
Source:iFixit
Photo:iFixit
(hato)

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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