Siriの「中の人」、収録当時を語る!

Siri

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2011年、iPhone4sとともに公開された人工知能アシスタントのSiriは、今も進化を続け、世界各国の言語に対応しています。アメリカ版Siriの声を担当していた声優スーザン・ベネットさんのロングインタビューを、Typeformが公開しています。

音楽が好きだった子ども時代

1949年にニューヨーク市で生まれたスーザン・ベネットさんは、幼少の頃から音楽が好きで、4歳の時には耳で聴いたメロディをピアノで演奏できるほどでした。
 
1960年代から70年代にかけて、バート・バカラックやロイ・オービソンのバックコーラスとしてツアーに参加し、ラジオやテレビのコマーシャル用のジングルを歌うミュージシャンになっていました。
 
スーザン・ベネットさん
 
ある日、スタジオに現れなかった声優の代役を急きょ担当したスーザンさんの声が良かったことから、声優としての仕事を引き受けることとなります。

銀行ATMの普及に一役

1970年代半ば、銀行はATMの導入を進めていましたが、多くの人が機械で預金を引き出す方法に拒否感を示し、各行はATMの利用率向上を課題としていました。
 
そんな中、ある広告代理店が「ATMを人間らしくしよう」と思い付き、ATMに行員(テラー)をもじった「ティリー」と名付け、短い歌を歌わせました。その声を担当したのが、スーザンさんでした。「ティリー」は、全米で初めて普及に成功したATMとなりました。
 
「私の声優人生は、機械として始まりました」と、スーザンさんは振り返ります。

ひたすら無意味な単語の羅列を読み上げる

その後、1980年代から90年代にかけて、GPSの案内音声や銀行や航空会社の音声応答システムの声などを担当していたスーザンさんに転機が訪れたのは、2005年のことでした。
 
その仕事は、ひたすら無意味な単語の羅列を読み上げ続ける、というもので、1日4時間、週5日の録音が1か月間続きました。
 
「何をやっているのか、さっぱり分かりませんでした」「クリエイティブの対極にある仕事だと思っていました」と語るその仕事は、Siriの源流にあたるScanSoftのメッセージシステム用の収録でした。
 
ようやく収録を終えた時、コンピュータから流れる合成音声は、録音していない新しいフレーズや文章も発声可能でした。Appleに買収される前、Siriはサードパーティアプリとして公開されました。
 

スーザン・ベネットさん

Apple共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏と


 
「Siri、愛してるよ」と話しかけると「どうせ、他のApple製品にも同じことを言っているんでしょう」と返すような、Siriの少し生意気な返答についてスーザンさんは、「Siriが話す内容に、声優は何も関与していません。会話の内容はすべて、プログラマーによるものです」と語っています。

2011年、世界の話題をさらったSiri

そして2011年10月4日、iPhone4sとともに公開されたSiriは世界の話題をさらいます。しかし、自身の声がSiriに使われることを知らなかったスーザンさんは、友人から「この声、あなたじゃない?」という指摘で、Siriの存在に気付きます。
 
その時の感覚について、スーザンさんは以下のように語っています。
 

奇妙な感覚でした。どこか会社に電話をかけて、自動音声も「お電話ありがとうございます。1番を押してください」と言われても、みんな指示の内容に意識が行っていて、声の主に注意を払いません。でも、Siriのような匿名の声と会話すると、それが「人」だと意識されるんです。

2013年、Siriの声が変更

Siriが世に出て2年後の2013年、iOS7の登場と同時にSiriの声はスーザンさんの声から置き換えられました。AppleはスーザンさんがSiriの声の主であることを認めておらず、音声収録の時給以上の報酬も支払っていません。
 
それまで、Siriのことを明かさずにいたスーザンさんは、2013年を境に自身がSiriの声の主であることを発表し、多くのテレビ番組やイベントに引っ張りだこになりました。
 
以下は、2013年10月4日、スーザンさんがCNNに出演した時の映像です。
 

iOS11で機能強化が期待されるSiri

macOS Sierraでも利用可能になったSiriは現在、人工知能音声アシスタントとして最も多い21の言語で利用可能です。
 
英語だけでもアメリカ、イギリス、オーストラリア英語があり、アメリカ英語の中にも9つの方言が男女それぞれの声で用意されています。
 
6月の「WWDC 2017」での発表が確実視されるiOS11では、SiriにiMessageやiCloudとの連携などの機能強化が行われると期待されています。

 
 
Source:TypeForm via AppleInsider
Photo:スーザン・ベネットさんのFacebook
(hato)

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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