App Storeの開放義務付け盛り込んだ新法案、国会提出へ!
AppleにApp Store以外のアプリストアを認めさせるほか、アプリ内決済に代わる外部決済を認めさせるなどの規制を盛り込んだ法案が、1月26日からの通常国会に提出される見込みと報じられています。政府は、利用者の選択肢が増え、競争が促進されることを期待している模様です。
■3行で分かる、この記事のポイント
1. 通常国会に、アプリストア開放などを盛り込んだ新法案提出との報道。
2. 新法案は、独占禁止法と異なり、禁止行為を事前に規制するもの。
3. Appleは以前からセキュリティなどの問題があると反対している。
Apple、Google規制の新法案が通常国会に
公正取引委員会が、スマートフォンのプラットフォームとして強い影響力を持つAppleやGoogleを規制する法案を1月26日に召集される通常国会に提出する方向で調整している、と朝日新聞が報じています。
提出される法案は、公正な競争を妨げた行為を取り締まる独占禁止法とは異なり、前もって独占的な行為を禁止するもので、独占禁止法を補う存在と位置付けられています。
政府は新法案によって、AppleとGoogleの寡占状態にあるアプリ配信や決済を他社にも開放し、ユーザーの選択肢を広げることを目指している、と伝えられています。
アプリストアの開放、決済手段の開放などを義務化
新法案が規制の対象とするのは以下の4点です。
- AppleのApp Store以外の、安全性の確保された他社アプリストアの利用を認めることを義務付け。ただし、Webサイトから直接アプリを入手可能にするサイドローディングは義務付けない。
- 30%の手数料を徴収しているAppleのApp Store、GoogleのPlayストア以外の、外部での決済システム利用を認めさせる。現在は禁止している外部での決済へのリンクを認めさせる。
- 初期設定としている自社製アプリについて、ユーザーが他社製アプリに変更可能にする。
- OSやブラウザのアップデートについて、仕様・ルール変更に関する変更内容や理由の事前開示を義務付ける。
欧州、アメリカで先行して進むIT大手への規制
欧州連合(EU)では、デジタル市場法(Digital Market Act:DMA)がAppleのApp StoreやSafari、iOS、GoogleのGoogleマップやChrome、FacebookやInstagramなどを「独占的」と判断し、独占的な状態の改善を求めています。
なお、EUでApp Store以外で配信されるアプリについても、Appleが手数料を徴収する方針であることが分かっています。
アメリカでは、App Storeが反トラスト法(日本の独占禁止法に該当)に違反していると最高裁判所が判断しているほか、3月にも米司法省がAppleを提訴する方針と伝えられています。
サイドローディングについては軟化。標準アプリ変更はiOS14で対応
2023年6月には、政府のデジタル市場競争本部が、アプリ配信の開放を義務付け、競争により手数料率を下げさせる方針が報じられていました。
上記の報道の時点では、サイドローディングを認めさせる方針と伝えられていましたが、今回の報道ではサイドローディングについて軟化しています。
なお、iPhoneのデフォルトアプリは、2020年に公開されたiOS14から、標準のブラウザ(Safari)、メール(メール)をユーザーが変更可能となっています。
Appleは以前から反対意見を表明、クックCEOが岸田首相に直言も
日本でもApp Storeを他社にも開放すべきとの議論が進んでいることについて、Appleはたびたび、反対意見を表明しています。
2022年12月に来日したAppleのティム・クック最高経営責任者(CEO)が岸田文雄首相と会談した際、セキュリティやプライバシーを守る上での懸念となり、岸田首相が求めたiPhoneへのマイナンバーカード機能搭載を実現する上での障壁になると伝え、再考を求めています。
2023年10月にはデジタル市場競争会議の報告書案に対するパブリックコメントで、ユーザーをより大きなリスクにさらし、日本の社会及び国民を脅かすことになる、と強い調子で反論しています。
ただし、Morgan Stanley Researchのアナリストは、iPhone向けの外部アプリストアが登場しても、ユーザーは従来と同じくApp Storeを使い続けるだろう、との予測を発表しており、アプリストア開放の効果は限定的だろうとの予測を発表しています。
Photo:Apple
(hato)