チップ製造最大手TSMC、Huaweiとの取引停止を発表〜米政府の新ルール受け
米政府が新たにHuaweiの禁輸措置を見直したことによって、同社からの新規受注を台湾大手チップ製造メーカーTSMCが停止しました。昨年Huaweiが禁輸リスト入りした際は、TSMCは取引を停止しない意向を明らかにしていました。
米政府に“抜け道”が問題視された
Huaweiが2019年5月に禁輸措置対象のリスト(エンティティリスト)入りしたことによって、米国企業と同社との取引が原則禁止されました(米政府の許可があれば可能)。これによってHuaweiのスマートフォンは、YouTubeやGoogleマップ、Google PlayといったGoogleのサービスをプリインストールできなくなりました(オープンソースのAndroidは利用可能)。
しかし、あくまでもHuaweiとの取引が禁止されたのは米企業であって、他国企業は取引が可能でした。また、2019年9月に発表されたMate 30シリーズでは、米国企業であるQualcommの半導体が活用されているように、米国のソフトウェアおよび技術が25%以下であれば規制の対象外となるなど、実際には輸出規制の網をかいくぐる“抜け道”があったようです。
そうした状況を快く思っていなかったのか、米政府は15日に禁輸措置のルールを新たに設け、「米国のソフトウェアおよび技術を利用して製造された半導体」を許可なくエンティティリストの企業に販売することを禁じました。この新ルールでは、米国のソフトウェアおよび技術が25%以下だったとしても規制の対象となります。
業界最大手のTSMCと取引停止に
さっそく今回の新ルール発表を受け、チップ製造を請け負う台湾企業TSMCは、昨年の取引続行発表から一転、Huaweiからの新規受注を停止しました。TSMCは米企業の半導体製造装置を使用しているためです。
Huaweiが自社スマートフォンに搭載する独自チップ「Kirin」シリーズは、設計を子会社のHiSliconが、デザインのコアアーキテクチャを英企業ARMが、製造をTSMCが担っています。iOS製品のチップ「A」シリーズの製造を独占していることからも分かる通り、TSMCの技術力は業界随一で、Huaweiにとっては大きな痛手です。もちろん、主要な取引先を失う点ではTSMCも同じです。
ちなみに、ARMは2019年5月に禁輸措置が発表された際は米政府の意向に従う態度を一旦は見せたものの、数カ月後には取引続行を発表しています。事実、2019年9月に発表され、先述のMate 30にも搭載されているKirin 990にはARMのデザインが使われています。昨年に取引続行を発表した際は、技術が英国起源であり米国の規制には違反しないと述べていた同社ですが、TSMCと同じく影響が甚大なだけに、新ルールでどのような態度を示すかに注目が集まります。
Source:日本経済新聞,日経xTECH,Reuters
(kihachi)