iPadのマウス対応から見えてくるAppleの意図とは
先日開催されたWWDC 19では、iPad独自のOSとして「iPadOS」が発表されました。このOSではiPad史上初めてマウスがサポートされる予定です。以前より根強い要望のあったマウス対応ですが、Appleはあくまでも「アクセシビリティ機能」の一環であることを強調しています。しかし、はたして障がい者だけを念頭に置いているのでしょうか。
名目上はアクセシビリティ機能だが
iPadOSを搭載したiPadでは、USB Type-C(USB-C)/Lightningポート経由でマウスを有線接続できるだけでなく、Bluetoothで無線接続できることも分かりました。
マウス対応について、Appleはタッチ操作に困難があるユーザーに向けた「アクセシビリティ機能」である点を強調していますが、一方で障がいを持つユーザーだけを想定しているわけではないようです。
ニュースサイトTechCrunchのインタビューでは、そんなAppleの持つ“両義性”が強く表れました。
取材に対して、Appleのディレクターであるサラ・ヘルリンガー氏は「サポートを意図した元のコミュニティを超えた、幅広い恩恵をアクセシビリティ機能はもたらす」と認めながらも、改めて「往年のデスクトップで入力方式として使われたようなカーソルとは異なる」と主張しました(下記ツイートはiPadでマウスを利用したデモンストレーション)。
A mouse on the iPad makes it exponentially more useful for fine-grained things, like selecting text, which was really annoying before. It’s just a shame the pointer is so…awful. pic.twitter.com/2XmSUmLtbA
— Owen Williams ⚡ (@ow) 2019年6月4日
ここで重要なのは、ニュースサイトTechCrunchも指摘しているように、「想定された利用法とは別に、障がいを持たない人でもこの機能を使うであろうことをAppleが認めた」点にあります。
「例えば、多くの人々が(本来は聴覚に不自由のある人向けに用意された)字幕に価値を見出す。我々の目的は特定の利用法を意図した設計を行うことにある。我々のデバイスが持つパワーをより多くの人びとに届けていくことが狙いだからだ」とヘルリンガー氏は語り、マウスが幅広いユーザーに利用される可能性を示唆しました。
iPadをコンピュータとして位置づけたい?
今回iPadが新たに対応するアクセサリは、マウスだけではありません。
WWDC 19では、iPadOSを搭載したiPadが「ファイル」アプリを通して、USBメモリや外付けHDD、SDカードなどの外部ストレージに対応することも発表されています。これらを併せて考えると、iPadを「画面の大きなiPhone」ではなく「コンピュータ」に近づけたいAppleの意図がうかがえます。
つまり、表向きこそAppleは「アクセシビリティ機能」としてマウス対応を位置づけていますが、実際は「コンピュータとしてのiPad」という括りでマウスを実験的に搭載してみたとも言えなくはないでしょうか。
興味深いことに、WWDC 19に登壇したクレイグ・フェデリギ上級副社長は「1990年代を喜んで認めようじゃないか」とも発言しています。
iPadがUSBメモリなどに対応することを説明するくだりで、フェデリギ氏は個人的にはAirDropがお気に入りだと述べながらも、写真家にとってはLightroomのようなアプリに直接インポートできる外付けドライブの方が重要だとも述べ、長く使われてきたもの――ややもすると過去の遺物としてAppleが軽んじてきたようにも見えたもの――にも実は価値があることを示したのです。
Source:TechCrunch,MacRumors
(kihachi)