被害総額は数千億円!iPhone修理めぐるAppleと詐欺師たちとの戦い

iFixit iPhone XS Max 分解

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Appleはこの数年間、中国のApple Storeで頻発していたiPhoneの修理をめぐる詐欺により、数千億円に相当する規模の被害を被りました。Appleと詐欺師たちの攻防の結果、詐欺被害は大幅に減少しています。

偽物のパーツに差し替えたiPhoneを新品と交換

Appleが苦しめられた、iPhone修理をめぐる組織的な詐欺との戦いについて、The Informationが、匿名を条件に取材に応じた10名以上の元Apple従業員の証言をもとに報じています。
 
Appleに数十億ドル(数千億円)もの被害を与えた詐欺は、盗品のiPhoneからプロセッサやロジックボードといった価値の高いパーツを抜き取り、偽物のパーツと入れ替えたiPhoneをApple StoreのGenius Barに持ち込んで新品と交換してもらい、パーツも新品のiPhoneを転売するという手口です。
 
関係者によると、Apple Storeの前には詐欺師が、偽物のパーツ入りのiPhoneが詰まったスーツケースを持って立っており、詐欺師に雇われた「客」がGenius BarでiPhoneを新品に交換してもらうと、「客」はかかった時間に応じて報酬を受け取っていたそうです。

世界最大の電脳都市・深センで大量発生

詐欺の多くは、Appleの主要サプライヤーであるFoxconnなどの工場があり、世界最大の電脳街として知られる中国南部の都市、深センで発生していました。
 
深センは、香港とも距離が近く、犯罪者集団の温床としても知られています。
 

深センのApple Store

深センのApple Store


 
2012年11月、深セン初のApple Storeがオープンした当初は週200件程度だったiPhoneの保証修理や交換の依頼件数は、半年ほどで週2,000件へと急増しました。
 
これは、米ニューヨークの旗艦店舗Apple Fifth Avenueの約3倍にあたる、異常な多さです。

Appleと詐欺師の戦いが始まる

Apple StoreのGenius Barは、「故障した」iPhoneが意図的に壊されたものでなければ、最初は規定どおり新品に交換していたそうです。
 
しかし、被害規模がAppleの収益にまで影響を及ぼすようになり、Appleは対策を取る必要に迫られました。
 
Appleは所有者であることの証明が必要なオンライン予約システムを構築し、さらに店頭で簡単に偽物のパーツを検出できる診断システムを導入しました。
 
しかし、詐欺師たちは中国国内で販売されたiPhoneの製造番号を含む、Appleの顧客情報を入手して対抗しました。なお、Appleの顧客情報を盗み出していた犯罪者が昨年、中国で逮捕されています。

修理を断られて激怒する「客」たち

Apple Storeで修理を断られた詐欺師の手先たちが店内で激怒することが増えたため、Appleは店頭でiPhoneの確認と交換を行うのをやめ、外部の試験場に送るようになりました。
 
Appleは製造工程で、バッテリーやAシリーズチップに、特定の波長の光にだけ反応する染料で目印を付け、修理の過程で正規品かどうか確認可能にしました。

修理依頼の60%だった詐欺が20%に

これらのAppleの努力の結果、中国圏全体で発生する修理依頼の約60%を占めていた詐欺は、約20%まで激減したそうです。
 
現在、詐欺師集団は標的を中国からトルコやアラブ首長国連邦(UAE)などの他の国へと移しているとも伝えられています。

 
 
Source:The Information via MacRumors
Photo:Apple, iFixit
(hato)

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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