なぜAppleはインドで成功できないのか

フリー素材 インド

フリー素材 インド
 
アメリカを抜いて世界で第2位のスマートフォン市場にまで成長したインドですが、当地でのAppleの評判は芳しくありません。Samsungや中国ベンダーが勢いを増すなかにあって、Appleのシェアはわずか2.5%ほどに留まっています。

現地の平均価格との大きな乖離

CounterpointやIDCの調査によると、Samsungや中国ベンダーがインドにおけるスマートフォン市場のシェア80%を占める反面、17年第3四半期(7〜9月)でのAppleのシェアは2.2%に過ぎませんでした。17年第4四半期(10〜12月)には、シェアは幾分か伸びて2.5%となりましたが、依然として存在感は薄いままです。
 
CNBCによれば、Appleのシェアが伸び悩む現状には、いくつかの原因が考えられるそうです。
 
まずは、インドのスマートフォン平均価格とiPhoneの価格が乖離していることです。インドにおけるスマートフォンの平均価格は150ドル(約16,500円)ほどですが、同国におけるiPhone Xの価格は約1,450ドル(約159,500円)、iPhone8は約1,040ドル(約114,400円)と、日本より高くなっています。eコマース企業Flipkartと協力して安価に販売することができた、iPhone SEですら約280ドル(約30,800円)であることを思うと、多くの消費者にとってiPhoneは高嶺の花であるのが実情です。

ハイエンドモデルで区切っても勢いは減速

では、ハイエンドモデル市場だけに限れば、Appleが成功しているのかというと、SamsungやOnePlusにもシェアを奪われている状況だ、とCounterpointは指摘します。470ドル(約51,700円 )以上のスマートフォンに限定しても、Appleのシェアは、2016年の第4四半期に記録した59%からその後の1年で35%へと下落しました。なお、同四半期に最も売れたハイエンドモデルは、OnePlusのOnePlus 5でした。
 
もっとも、インドでAppleの製品ラインナップにねじれが起きているという状況を示すには、インドで最も売れているiPhone6やiPhone5sが肝心の公式サイトに存在しないという現実を指摘するだけで十分かも知れません。

ソフトウェアサービスが成り立っていない

CNBCは他の理由として、Appleがインドにおいてエコシステムをうまく形成できていないことも原因に挙げます。
 
Apple Musicこそ120ルピー(約230円)という特別価格で享受できるものの、「マップ」やSiriはインドにおいてはマトモに機能していないそうです。インタビューに回答した、“インドのシリコンバレー”を日々運転する、ベンガルール在住のドライバーによると「Appleのマップはインドではジョークだ」とのこと。マップが完成しておらず、単純な進路変更の機能すら欠いている状態では、使いようがありません。
 
こうした問題はAppleも認識しており、ハイデラバードに設立された研究所では、「マップ」アプリの開発が進められているようですが、ナビゲーション機能すら欠いたCarPlayともども大きな改善には繋がっていないそうです。
 
また、Siriについてもインド特有の問題が立ちはだかります。Google AssistantやAmazonのAlexaに比べ、Siriがインド固有の言葉や、インド人特有のアクセントを認識しないのです。最近のiOSアップデートでは、インド人の話し方や、ヒングリッシュ(ヒンディー語と英語の合体)向けのキーボードがサポートされたものの、満足いく内容ではないと見る向きは少なくありません。
 
こうしたことから現地のリサーチ企業CMR Indiaのアナリストは「提供されているサービスがインドのユーザーを惹きつけるものではない」と指摘します。

反撃の準備を整えるApple

もちろん、Appleは手をこまねいているわけではありません。
 
2017年12月には、インドでAppleを統括してきたサンジャイ・カウル氏が「2017年度の成長率(17%)が過去5年間で最も鈍化したから」として、任を解かれています。
 
また、ティム・クック最高経営責任者(CEO)も四半期決算の報告会で、同国におけるApple Storeの建設や、チャネルの改善、アプリ開発者のエコシステムの手助け、そして「適切な」製品をラインナップに投下していくことを約束しています。
 
このように他の海外ベンダーよりも早期にインドに参入したにもかかわらず、そのメリットを大きく生かせなかったAppleですが、今後数年間で劇的な成長を遂げてくれるのではないか、と期待するアナリストも一部には存在します。「Appleのような企業にとって、インド市場はまだ転換点を迎えていない。だが、彼らは正しい方向を進んでおり、市場は相応に反応している」
 
中国ではスマートフォン市場の成長がマイナスに転じただけに、今後は一層インド市場の重要性が増していくものと思われます。はたして、Appleは大躍進を遂げることができるのでしょうか。
 
 
Source:CNBC
(kihachi)

この記事がお役に立ったらシェアお願いします

この記事を書いた人

丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

特集

目次