どうしてAppleは中国で地元ベンダーに負けてしまったのか

    iphone apple vivo oppo

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    どうしてAppleは世界最大級のスマートフォン市場である中国で、名前も聞いたことのない中国ベンダー2社に負けてしまったのか――中華圏のスマートフォンユーザーならば誰でも知っているOPPOとVivoですが、先進国ではまったくと言っていいほどその名を耳にする機会はありません。その謎について、Bloombergが興味深い特集を組んでいます。

    2社だけで34%のシェアを獲得

    調査会社IDCの統計によると、2016年第3四半期(7~9月)の中国スマートフォン市場において、OPPOとVivoは計4,000万台のスマートフォンを売り上げ、2社で34%のシェアを占めました。4年前の2012年、両社のシェアは合わせても2.5%ほどだったことを思えば、成長力がいかに凄まじい勢いかが分かります。一方でAppleは、同四半期の売り上げ台数は、中国国内で820万台にとどまり、シェアも前年同期比の11.4%から7.1%にまで減少しています。
     
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    OPPOとVivoがここまで規模を拡大できた秘訣は、安価なスマートフォンを中国の地方都市にオフラインチャネルで販売したこととされています。先進国に比べれば比較的物価が安い中国にあって、これまでスマートフォンの売り方は主に2種類でした。
     
    庶民には容易に手が出ないハイエンドモデルを取り扱うAppleのように、販売する地域を北京や上海といった、いわゆる「Tier-1」と呼ばれる大都市を中心に据えるか、もしくはXiaomiのように、実売店舗を持たずにオンラインチャネルでの販売に尽力することで、コストパフォーマンスに優れたモデルを販売するかです。

    Apple流でもXiaomi流でもない、第3のアプローチ

    ところが、OPPOとVivoが採った手法はどちらでもなく、地方を中心にオフラインチャネルで販売するという、一種の「泥臭い」アプローチです。
     
    Bloombergによると、今年6月の時点でOPPOが契約している個人ストアは24万件にも上るそうです。これは世界中にあるマクドナルドの店舗数の約6倍です。売り上げ台数の90%を実売店舗に頼り、81%を中国国内で売るOPPOならではの数字です。個人ストアは1台売るごとに、40~200元(600~3,000円)ほどのコミッションを手にします。
     
    一方でApple Storeは大都市を中心として40店舗近くがあるのみです。

    カメラの性能アピールが鍵

    Appleも手をこまねいてるわけではなく、iPhone5cやiPhone SEといったコストパフォーマンスに優れるモデルを中国で展開していますが、確立したブランドイメージが逆に災いしているのか、わざわざ性能の劣ったスマートフォンを買いたいとは思わない、というのが消費者の本音のようです(実際にはiPhone SEは6sに劣らない性能です)。
     
    一方、OPPOやVivoはもとより、200~500ドル(2万~5万円)のミッドレンジモデルを中心に据えています。例えば、OPPOの旗艦モデルであるOPPO R9 Plusは2,999元(約45,000円)。しかも、アルミニウムボディにディスプレイは6インチ、カメラは1,600万画素、バッテリーは19時間駆動、と宣伝されては、5,388元(約81,000円)するiPhone7ではなく、R9 Plusに食指が動くのは無理もないでしょう。
     
    oppo r9 plus
     
    もちろん、スマートフォンカメラの性能は画素数よりも搭載センサーが鍵を握っているため、R9 Plusのカメラが1,200万画素のiPhone7を上回っているというわけではありませんが、それでも数字上のインパクトは少なくありません。
     
    Vivoの副社長であるニー・シュードン氏も、「将来的にはカメラと音楽が鍵となる」と強調します。彼によれば、この2つの領域を高性能デバイスで追求することこそ、若年層からの支持増加、ひいては更なるシェア拡大につながっていくとのことです。

    ただし、利益面ではAppleの大圧勝

    ただ、Appleはシェアよりも利益率を重視しているという指摘は以前よりなされており、スマートフォン市場全体でみた、Appleの第3四半期における営業利益シェアは、調査会社Strategy Analyticsの試算で91%、投資銀行BMO Capitalで103.6%という「一人勝ち」状態です。
     
    その半面、OPPOやVivoはというと、利益こそ出してはいるものの、2社合わせてもシェアは4.4%に過ぎません。Appleが中国市場で売り上げを落とす傾向が続けば、これらの数字は将来的に多少変化するかもしれませんが、Appleの利益面での独走は同国でも当面変わらないとみていいでしょう。
     
    しかも、2017年は「iPhone登場10周年」にあたるため、これまでとは大きく外見の異なるiPhoneが登場するのではないか、とも噂されているだけに、来年も高価格帯のスマートフォン市場で、Appleが引き続き強い存在感を放つのは必至とも言えます。
     
    「Appleは最新鋭の何かを、成熟した中国のスマートフォンユーザーに提供する必要がある」とは調査会社Counterpoint Researchのネイル・シャー氏です。「その時が来るまで、OPPOとVivoは自分たちのポジションを固める猶予がある」
     
     
    Source:Bloomberg,GSMArena
    (kihachi)

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    この記事を書いた人

    丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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