日本政府、Appleにアプリストアの開放を義務付け、ストア審査も担わせる方針

Apple App Store

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日本政府がAppleに対し、App Store以外のアプリストアからiPhoneにアプリをダウンロード可能にする、サイドローディングを認めるよう義務付ける方針だと読売新聞が報じています。危険性のあるアプリが公開される懸念に対応するため、Appleにアプリストアを審査させ、政府が審査内容が妥当かを判断する仕組みも検討されています。仮に実現したとしても、ユーザーや開発者のメリットになるか、疑問も残ります。

■3行で分かる、この記事のポイント
1. 政府が、Appleにアプリのサイドローディングを認めるよう義務付ける方針との報道。
2. アプリストアの安全性をAppleに審査させ、政府が審査内容を監視する案も。
3. Appleは以前からサイドローディングに強く反対している。

App Storeに替わるアプリストアへの開放を義務付ける方針

Apple以外の企業が運営するアプリストアからもアプリを入手可能にする、サイドローディングを認めることを義務付ける方針が、政府のデジタル市場競争本部の会議で固まった、と読売新聞が報じています。
 
これは、Appleが運営するアプリストアApp Storeが独占状態にあり競争が働いておらずアプリ開発者側が負担する手数料率が高いと批判があることに対応するもの、と同紙は伝えています。
 
政府は、App Storeに替わるアプリストアに、Microsoftや日本の通信大手企業の参入を見込んでおり、競争が手数料率の引き下げにつながり、消費者の負担軽減につながることを期待しているとのことです。
 
また、AppleとGoogleがアプリ開発者に対して自社の決済システム利用強制を禁止する規制も導入が検討されています。

外部アプリストアをAppleに審査させる方針

AppleのApp Storeでは、アプリ公開前にAppleが厳しい審査を行なうことで安全性を確保していますが、外部企業が運営するアプリストアでは同等の安全性が確保されず、悪意のあるアプリが公開されてユーザーを危険に晒すのではないか、と専門家からも指摘されています。
 
日本政府は、安全性確保のために、Appleがアプリストアを審査し、安全性やプライバシー保護の対策が講じた上でアプリのダウンロードを可能にすることを検討している模様です。
 
Appleが安全性を理由として他社のアプリストアを認めないおそれがあるとして、Appleによる対策に行き過ぎがないか、政府が判断する仕組みもあわせて検討されている、とのことです。

ティム・クックCEO、岸田首相に方針の再考求める

Appleは、サイドローディングによって悪意あるアプリが流通し、ユーザーが危険にさらされると主張しており、今後も認めない方針を明らかにしています
 
2023年2月のデジタル市場競争本部に提出した資料でAppleは「iPhoneにサイドローディングを導入することは、AppleにiPhoneを完全に別の製品に変えることを要求することとなるため、軽く受けとめることのできない問題」と、サイドローディング導入に強く反対しています。
 
「第48回 デジタル市場競争会議 ワーキンググループ」Apple提出資料から
 
Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)が2022年12月に訪日し、岸田文雄総理大臣と会談しています。会談で、iPhoneへのマイナンバー機能搭載を求めた岸田首相に対しクックCEOは、サイドローディングを認めさせようとする政府方針を再考するよう求めています
 
Appleは先日、詐欺行為を働くアカウントや不正アプリの削除、盗難クレジットカードのブロックなどにより、App Storeが2022年だけで20億ドル以上の詐欺行為を防いだ、と発表しています。

小規模開発者の手数料率を引き下げたApple

App Storeにおいて、アプリ開発者がAppleに支払う手数料率は通常、売上高の30%です。しかし、2021年からAppleは、App Storeで開発者の約98%を占める、年間収益額が100万ドル(約1億3,000万円)を下回るアプリ開発者を対象に、手数料率を15%に引き下げています
 
Appleは、30%の手数料率はソフトウェア業界の標準的な水準であり、2008年のApp Store開設後に一度も引き上げを行なっていない、と妥当性を主張しています。

サイドローディング認めるAndroid、外部アプリストア利用率は低迷

Androidでは、Google Play以外のアプリストアからアプリを入手することが可能です。
 
しかし、公正取引委員会が2023年2月に公開した資料では、日本のAndroidユーザーの82.7%はGoogle Playからアプリをインストールしており、AmazonやSamsung、Huaweiなどのアプリストアを利用しているユーザーは、7.5%にとどまっています。
 
Morgan Stanley Researchのアナリストは、他社のアプリストアが提供されても、iPhoneユーザーの需要があるとは思えない、との見解を発表しています。
 
仮に、iPhoneでApp Store以外からアプリを入手可能になったとして、ユーザーが外部のアプリストアを利用するメリットを感じられるかは未知数です。
 
公正取引委員会「モバイルOS等に関する実態調査報告書」概要
 
 
Source:読売新聞 (1), (2)
Photo:Apple, デジタル市場競争本部, 公正取引委員会
(hato)

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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