「iPhone8」、その名前が謎に包まれている理由

iPhone8 Martin Hajek

iPhone8 Martin Hajek

 
iPhone8」あるいは「iPhone X」や「iPhone Pro」と噂される、iPhone10周年の記念モデルについては、名称について確かな情報が出てきません。また、6月に発表されたHomePodは、発表まで、名前は謎に包まれたままでした。その背景には、Appleが未発表の製品名を秘密にするための取り組みがあります。

あまり有効でなかったダミー会社の活用

Appleに限らず、多くの企業が未発表の製品名は極秘事項で、事前に情報が漏れないよう細心の注意を払っています。特に世界中から関心の集まるAppleは、情報の扱いに神経をとがらせています。
 
製品名の秘密を守る目的で、Appleが最初に取り入れたのは、デラウェア州に設立したダミー会社の名前で商標登録する方法でした。しかし、この手法を用いた2010年のiPad発表の際には、アジアなどの主要地域でも商標が登録されたため、スティーブ・ジョブズ氏による発表の前に、iPadの名前はAppleファンの間に知れ渡ってしまっていました。

Appleが好むジャマイカでの商標登録

GoogleやAmazonなど多くのテクノロジー企業が採用するのは、検索可能な商標登録データベースを公開していない国に申請する方法です。アメリカの制度では、外国での商標登録後6カ月以内にアメリカで登録すれば、優先権が確保されるためです。トリニダード・トバゴ、バルバドス、ペルー、ジャマイカといった国々が該当します。
 
Appleは何度か、ジャマイカへの商標登録を行っているのが確認されています。これは、商標情報の検索には、オンラインではなく窓口での申請が必要で、書類の印刷には1枚につき150ジャマイカドル(約130円)の手数料を払わなくてはならないジャマイカの制度が、情報を知られたくないAppleにとって都合がいいという事情があります。
 
アイルランド在住の弁護士、ブライアン・コンロイ氏は昨年、Appleがジャマイカで商標登録をする傾向に興味を持ち、調べた結果、発表を数ヶ月後に控えた「iPhone7」「iPhone7 Plus」そして「AirPods」や「Touch Bar」の名前が登録商標申請されているのを見つけました

詳細な仕様が漏れても名前は謎のままだった「HomePod」

「HomePod」は6月のWWDC 17で発表されるまで、事前に7つのツイーター搭載などの仕様は明かされていたものの、名前がリークされることはありませんでした。
 
HomePod
 
製品名が謎のままだったHomePodが最初に商標登録されたのは、ヨーロッパ中部に位置する人口34,000人の小国、リヒテンシュタイン公国でした。リヒテンシュタインでは、登録商標をオンラインデータベースで検索できるものの、登録が承認されないと検索できない制度となっています。

新型iPhoneの名称を把握するのは不可能に?

コンロイ氏は、「Appleは世界各国の法制度をフル活用して、秘密を守ろうとしている」と語っています。
 
ジャマイカの商標登録制度は、「iPhone7」などの商標が登録された3週間後に制度を改正しました。新制度では、権利者名や申請時期での検索ができなくなり、検索結果の情報を得るために申請料を添えて申請すると、登録が完了した公開情報だけが渡される、という厳格なものです。
 
これによって、ジャマイカでの申請情報を事前に把握することは事実上、不可能となりました。
 
「iPhone8」や「iPhone X」「iPhone Pro」などと噂される新型iPhoneの正式名称は、9月初旬と見込まれるAppleの発表まで、漏れ聞こえてくることはないかもしれません。

 
 
Source:Bloomberg
Photo:Martin Hajek
(hato)

 
 

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この記事を書いた人

2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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