EUのDMA施行を前にApp Store Connectに代替アプリストア追加可能に

Apple EU Digital Markets

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Appleは現地時間2月8日、欧州連合(EU)の開発者がApp Store Connect(アプリのApp Storeへのアップロードや提出、管理を行うための開発者ツール)に、代替アプリマーケットプレイス(代替アプリストア)を追加できるようになったと発表しました。
 
また、代替アプリマーケットプレイスで提供される全てのアプリに必要な公証プロセスの申請受付も開始されています。マーケットプレイスで提供するアプリは、必ずAppleによる「公証(Notarization)」を受けなければなりません。
 

■3行で分かる、この記事のポイント
1.EU開発者、App Store Connectへマーケットプレイスを追加可能に。
2.マーケットプレイスで提供されるアプリは「公証」を受ける必要がある。
3.DMAへの準拠を目的としたAppleの新ビジネス規約に批判も。

App Store Connectにマーケットプレイスが追加可能に

Appleは、EUのデジタル市場法(DMAへの準拠を目的としたiOS、Safari、App Storeの変更を発表しており、3月以降に提供予定のiOS17.4以降で変更が適用される見通しです。それに先立ち今回、App Store Connectがアップデートされました。
 
なお、数日前にiOS/iPadOS17.4、watchOS10.4などの開発者向けベータ2が公開されています。
 
代替アプリマーケットプレイスは、App Storeの代替となるサードパーティーのアプリストアです。マーケットプレイスではiOSアプリを配布できるため、開発者はApp Store以外で自身のアプリを販売することも可能になります。
 
代替アプリマーケットプレイスや、それらのマーケットプレイスを通じて配布されるアプリは、マルウェア、不正行為や詐欺、違法有害コンテンツなどを防ぐためにAppleの承認プロセスを経る必要があります。

コア技術料など新しいビジネス規約に同意する必要あり

代替アプリマーケットプレイスを追加したり、公証を受けるためにアプリを提出したりするには、開発者はAppleの新しいビジネス規約に同意しなければなりません。
 
このビジネス規約には、マーケットプレイスは1インストールにつき0.5ユーロ(約80円)を、アプリは初回インストール件数が年間100万件を超えた場合に、1インストールごとに毎年、同料金を支払うことを義務付けるコア技術料に関する条件などが含まれます。
 
代替アプリマーケットプレイスをApp Store Connectに追加できるようになったことで、マーケットプレイス配信とアプリを設定し、TestFlightを使用して新機能のベータテストを行うことができるようになりました。TestFlightは、代替ブラウザエンジンを使用するアプリやサードパーティーの決済プロバイダを介した代替決済システムもサポートしています。

新規約に批判も

この新しいビジネス規約については、Epic Gamesのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)や、Spotifyのダニエル・エックCEOが強く批判しています。
 
彼らは「大手アプリ開発者はほとんど恩恵を得られない」と主張していますが、筆者も同意見です。
 
AppleはEUでのアプリ配布におけるコストを予測する「料金計算ツール」を公開していますが、以前、筆者がこのツールで計算したところ、年間200万回のダウンロードで約320万円ものコア技術が必要だと予測されました。これは、無料アプリ開発者にとっては相当の痛手であるため、今後、さらに批判の声が挙がるのではないでしょうか。

デジタル市場法(DMA)の狙い

EUのDMAは、デジタル市場の競争力と公平さを確保することを目的としており、同法の規制対象として大手テック企業6社が提供する22のサービスが規制の対象となりました。ゲートキーパー(門番)と表現される規制対象の6社は、2024年3月までに(遅くとも3月6日までに)DMAの規定を遵守する必要があります。AppleについてはiOS、Safari、App Storeが規制対象となり、同社はDMAに準拠するための取り組みを進めてきました。
 
DMAの狙いは、規制対象となった大手企業の支配力を抑制して小規模事業者の参入を促すことであるため、同法の施行でデジタル市場への新規参入が期待されます。
 
しかし、批判されているAppleの新規約のように、ゲートキーパーにとって有利な条件を設定できるなど、何かしらの「抜け道」があるのではと個人的には思ってしまいます。同法が施行されて、どれほどの効果があるのかは少なくとも数年経たないと検証できないと思いますが、今後、デジタル市場の動向にさらなる注目が集まることでしょう。
 
 
Photo:Apple
(m7000)

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この記事を書いた人

本職はWebデザイナーでMacBook Airを10年以上愛用中。iPhone Maniaのライターとしては、2020年から活動開始。iPhone歴は4s→6→7→XS→12 Pro Max。

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