Apple、visionOSアプリをARやVR等の言葉で表現しないよう開発者に要求
Appleは現地時間1月8日、Vision Proを米国で2月2日(金)にリリースすると発表し、その翌日には、Vision Proに対応するXcode 15.2とTestFlight 3.5も公開しました。
これに伴い、Apple DeveloperのWebサイトでは、Apple Vision ProアプリをApp Storeで公開するためのガイドラインが記載された新ページも公開されましたが、同社はこのガイドライン上で、Vision Pro向けアプリに対し、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、クロスリアリティ(XR)及び複合現実(MR)という用語を使わないよう開発者に求めています。
■3行で分かる、この記事のポイント
1.Apple、visionOSアプリをARやVR等の言葉で表現しないよう開発者に要求。
2.Apple、visionOSアプリは「空間コンピューティングアプリ」だと強調。
3.Vision ProをMetaのMR製品と関連付けたくないとAppleは考えている。
Appleは「空間コンピューティング」アプリだと強調
ガイドラインには、開発者がアプリをテストする方法、スクリーンショットの準備やアイコンを作成する方法などの詳細が説明されているだけでなく、開発者がアプリにどのような名前を付け、説明すべきかについての詳細も記載されています。これによると、visionOSは文の最初の単語であっても小文字のvで表記し、製品名を分割せずに「Apple Vision Pro」と表記する必要があるということです。
これらの要件は驚くようなものではありませんが、Appleは開発者に対して、AR、VR、XR、MRといった用語を使ってvisionOSアプリを紹介しないように求めており、visionOSアプリは「空間コンピューティングアプリ」だと強調しています。
Appleは、Vision ProをAR及びVR技術を搭載した製品だとしているため、この要件はやや矛盾していると言えるでしょう。確かに、同社のほとんどのマーケティング資料には、Vision Proは「空間コンピューティング」プラットフォームだと書かれています。しかし、世界開発者会議(WWDC 2023)においてティム・クックCEOは、この製品を「まったく新しいARプラットフォーム」として発表しました。
Apple、他社製品との差別化を図りたい
Appleは、Vision Proが空間コンピューティングプラットフォームであることを強調することで、他社のAR/VRヘッドセットとの差別化を図りたいと考えているのです。Vision Proが正式に発表される前、同社のエンジニアの間では、visionOSはxrOSと呼ばれていました。
同社はまた、Vision Proを「メタバース(仮想空間)」という言葉で知られるMetaのMR製品と関連付けたくないと考えているようです。Appleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長であるグレッグ・ジョズウィアック氏は2022年のインタビューで、「メタバース」は絶対に使わない言葉だと語っています。
Metaは2021年10月に、社名をFacebookから現在の社名へ変更することを発表し、Metaと言えば「メタバース」だと世の中に強く印象付けました。実際、筆者もメタバースと聞けば、MetaのMRヘッドセットを1番に思い浮かべてしまうため、そういった意味では、Metaのマーケティング戦略は成功したと言えるのではないでしょうか。
そのため、AppleがMetaを始め他社製品との差別化を図りたい気持ちは理解できますが、「空間コンピューティング」を強調したとしても、消費者からしてみれば、「他社製品と同じような製品」もしくは「二番煎じ」という印象があり、そのイメージを覆すのは簡単なことではないように思います。
ただ、Apple Vision Proが発売される国や地域が増え、同社の今後のマーケティング戦略次第では、その印象も変わってくるかもしれません。
同製品は、2月2日に米国で発売され、1月19日午前5時(PST/米国太平洋標準時)から予約注文が開始されます。ストレージ256GBモデルの価格は、3,499ドル(約50万円)で、度ありのZEISSレンズのオプションは149ドル(約2万1,000円)だということです。
(m7000)