Appleが中国政府に忖度?刻印NGワード多数との指摘。写真検出への懸念も

    Apple 中国 AirTag

    Apple 中国 AirTag
     
    Appleは、製品に好みの文字や絵文字を刻印してカスタマイズするサービスを提供していますが、中国や香港、台湾では政治的な理由で刻印できない単語が多い、と人権団体が指摘しています。iOS15で導入予定の児童ポルノ写真をスキャン・報告する機能が、政府による思想弾圧や検閲に使われるのではと懸念する声もあがっています。

    製品への刻印、ブロックされる言葉も

    Appleは、AirTagやiPad、AirPodsなどの製品にユーザーが好きな言葉を刻印できるサービスを提供していますが、差別的であったり下品な意味を持つ言葉や特定の配列の絵文字は刻印することができません
     
    ベルギーの人権団体CitizenLabが、Appleは中国本土や、中国との緊張関係にある香港、台湾で「検閲」ともいえるほど多くの言葉をブロックしている、と指摘しています。

    中国や香港で目立つ、政治的単語のブロック

    CitizenLabは、刻印がブロックするアルゴリズムを解析し、ブロックされる単語の数を比較しています。
     
    中国本土、香港、台湾、日本、カナダ、アメリカでブロックされる単語数は以下のとおりで、中国が群を抜いて多いことがわかります
     

    • 中国:1,045
    • 香港:542
    • 台湾:397
    • 日本:192
    • カナダ:206
    • アメリカ:170

     
    ちなみに、カナダの単語数がアメリカよりも多い理由はフランス語やイギリス英語が対象に含まれているためです。
     
    Apple 刻印禁止ワード
     
    ブロックされる理由ごとに分析すると、下品な言葉などを含む「社会」が最も多いのは各地域共通ですが、中国本土では458語、香港では174語と「政治」が多いのが目立ちます
     
    中国本土では「人名」が27件含まれるのも特徴的です。
     
    一方、日本やアメリカ、カナダでは「政治」で禁止されている言葉はありません。
     
    Apple 刻印禁止ワード
     

    中国で刻印できない数字「8964」とは?

    中国本土では「人権」「政治」「抵抗」「法輪功」といった言葉のほか、1989年6月4日に発生した天安門事件を指す数字である「8964」もブロックされます。
     
    Apple 中国 AirTag
     
    人名では「達賴」(ダライ・ラマ)、「毛主席」(毛沢東)や中国共産党幹部の名前も禁止されています。
     
    中国政府との衝突が続いた香港では「新聞自由」「雨傘革命」「雙普選」(普通選挙)など、中国政府が神経を尖らせている言葉がブロックされています。
     
    CitizenLabは、「Appleは法的義務もないのに、中国政府に忖度してブロックする言葉を選択している」と指摘しています。

    iOS15で導入の児童ポルノスキャンとの関係で懸念も

    中国におけるブロック問題は、AppleがiOS15で導入を発表した児童ポルノ写真をスキャンする機能への懸念にもつながる、とテクノロジーメディアThe Vergeは指摘しています。なお、Appleの最近の業績発表で、中華圏は全体の売上高のおよそ2割を占める重要市場です。
     
    Appleは、スキャンの対象は児童への性的虐待写真として非営利団体のデータベースに登録されたものに限定してアメリカから開始し、政府による要請に応じることはない、と説明していますが、政府による検閲や弾圧、プライバシー侵害につながる可能性を懸念する声もあがっています
     
     
    Source:CitizenLab, The Verge
    Photo:Apple China
    (hato)

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    この記事を書いた人

    2013年からライター&編集担当として活動。2007年、駐在中のシリコンバレーで発売直後の初代iPhoneに触れて惚れ込む。iPhone歴は3GS→5s→6 Plus→7 Plus→XS Max→12 Pro Max→14 Pro。

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