ウイグル強制労働抑止法、Appleがロビー活動で弱体化狙っていた〜米報道

    Apple サプライヤー責任 2020

    Apple サプライヤー責任 2020
     
    Appleがロビー活動を通し、新疆ウイグル自治区での強制労働を抑止するための米法案の弱体化を試みていたとするスクープが飛び出しました。人権尊重に取り組んできた品行方正なイメージとは裏腹の“やり手”な一面を、米メディアWashington Postが報じています。

    他でもないAppleが弱体化に関与か

    米中関係の緊張は日に日に増しており、中国の行動に対しては党を超えて厳しい批判が投げかけられています。2020年9月には新疆ウイグル自治区での強制労働による製品の輸入制限法案(Uyghur Forced Labor Prevention Act:ウイグル強制労働抑止法)が、米下院で賛成406反対3の圧倒的多数で可決されました。
     
    ところが、人権を侵害した強制労働を強く非難する同法案に対し、他でもないAppleが「待った」の声をかけていたことが分かりました。米メディアWashington Postにに対し、複数の議会スタッフが匿名で語ったところによると、Appleは法案を弱体化させようとロビー活動を試みていたというのです。

    特定を恐れて詳細は明かされず

    よく知られている通り、Appleはティム・クック最高経営責任者(CEO)が旗手になり、従業員やサプライヤーなどの人権の尊重に強く取り組む姿勢を見せてきました。最近もiPhoneの組み立てを請け負うPegatronが、Appleの定める労働規定に違反していたとして、新規取引の一時停止を通達されたばかりです。
     
    そんなAppleが人権擁護に繋がる法案を弱体化させようとしていたとは考えにくいですが、Washington Postのインタビューに答えた先述のスタッフは、法案を通すにあたって開催された非公開の話し合いの中で、記載内容に反対を表明してきた企業の一社だったと話します。
     
    具体的にAppleがどう問題視し改善案を出してきたのかについては、同社に個人特定されることを恐れて明かされなかった、とWashington Postは報じています。米企業は法案に影響を及ぼすロビー活動を行ったかどうかは公開する義務が法的にありますが、何を狙いとするのかまでは開示する必要がありません。

    Appleは「法の目標を支持」と声明発表

    Washington Postの取材に対し、Appleのスポークスマンは「サプライチェーンの全員が確かな尊厳と敬意を持って扱われることに邁進している」と述べ、「我々は強制労働を拒絶し、ウイグル強制労働抑止法の目標を支持している。強制労働を根絶し、米国法を強化する委員会の目標を共有し、その達成に向けて彼らと協力していくつもりだ」と答えています。ロビー活動の実施については否定しませんでした。
     
    また「中国のサプライヤーと詳細な調査を実施し、Appleの製品ラインにおいて強制労働に関するいかなる証拠も見つからなかった。引き続き極めて注視していく」と述べ、Appleと強制労働の関係を否定しました(2020年3月にはThe Independentが、AppleのサプライヤーであるBOEとO-Filmが強制労働に関係したとスクープしていました)。
     
    なお、強制労働に関係していたとされるPatagoniaやCoca-Cola、Costcoといった特定の企業ブランド名が今回の法案では名指しされていましたが、Appleの名は含まれていなかったとされています。
     
    ウイグル強制労働抑止法で影響を受けるのは、Coca-Colaであれば新疆の砂糖、Heinzであればケチャップ向けのトマト(人権団体ChinaFile調べ)、Patagoniaであれば服原料の綿など、主に織物や先端技術とは関係のない(ローテク)製品だとされており、テック企業への直接的な影響は少ないと考えられています。

    中国政府と仲良くやりつつ、厳しい態度で臨んでいく

    テック企業への影響は軽微だとはいえ、ウイグル強制労働抑止法の実施によって、サプライヤーのリスクが潜在的に高まることは避けたいと考えるのは不思議ではありません。
     
    またAppleとしては、中国政府との良好な関係を維持したい狙いもあるのでしょう。事実、同社は9月に「Our Commitment to Human Rights(人権への私たちの取り組み)」と題したレポートを公開したものの、明らかに念頭に置いているはずの中国の名前がどこにも見当たらなかったために一部で批判を浴びました。
     
    ティム・クックCEOは2020年7月、議会の召喚で「強制労働はおぞましい」と発言し、Appleは一切許容するつもりがなく「仮に見つけた場合は、そのサプライヤーとの提携を打ち切る」と強い態度を表明していました。Washington Postの報道が事実だとすれば、Appleの人権への取り組みが“本物”であるかは、今後どれだけ行動で示せるかに懸かっています。
     
     
    Source:Washington Post via 9to5Mac
    (kihachi)

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    この記事を書いた人

    丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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