Apple Watchの睡眠トラッキング機能、5年前から構想されていた
Apple役員へのインタビューから、WWDC20で新たに発表されたApple Watchの睡眠トラッキング機能は、5年に渡り構想が練られて開発が続けられていたことが分かりました。
待望の睡眠トラッキング機能
WWDC20では、今秋リリース予定のiOS14とwatchOS7で、多くのユーザーから嘱望されてきた睡眠トラッキング機能が採用されることが発表されました。市場に流通しているスマートウォッチの中でもヘルスケアをサポートするデバイスとしての側面が強いApple Watchですが、他社製品とは異なり、これまで睡眠トラッカーについては採用が見送られてきました。
しかし、Appleでテクノロジー部門を統括するケビン・リンチ副社長いわく、睡眠トラッキング機能は初代Apple Watchが登場した5年前から採用が模索されてきたそうです(リンチ氏は2013年にAppleに入社後、Apple Watchのソフトウェア開発に携わってきました)。
5年も要した理由は?
リンチ氏がニュースサイトCNETに語ったインタビューから察するに、5年も要した理由は大きく2つ存在します。
1つ目は、Apple Watchの睡眠トラッキング機能が先行する他社のサービスとは異なるためです。しばしば他社の睡眠トラッカーでは、レム睡眠(脳が起きているが身体は休息している状態)とノンレム睡眠(脳も身体も休息している状態)がグラフで視覚化され、睡眠の“質”がスコア化されますが、Appleが提供するトラッカーは日々の睡眠スコアを表示しません。画像でも目立っているのは、端的な睡眠時間です。
リンチ氏いわく、そもそも睡眠データから得られるデータは余りにも膨大で分析するのには無理があるうえ、レム睡眠の時間をユーザーが意図してコントロールすることは不可能だからです。「(睡眠中の)手の動きのデータ入力は、脳内で起きていることの全体像を意味しない」
その代わりにAppleが重視したのは、ベッドへの移行のスムーズ化に焦点を当てて、“結果的に”睡眠の質を高めることです。
例えばApple Watchと連動するiOS14では、就寝準備(Wind Down)機能を有効にすると、設定した就寝時間までのカウントダウンがiPhoneに表示されるとともに、リラックスすることが推奨され、おやすみモードがオンになります。「多くの人々はすでに自分が満足な睡眠を得られていないと重々承知している。だから我々はそれに何か付け加えることはしない」。したがってAppleの睡眠トラッキング機能は、睡眠時の動きや呼吸が記録されデータとして可視化されるものの、“睡眠のトータルコーディネート”という点で他社とは目的が異なるのです。
つまり、端的なデータを雑に可視化することではなく、どのようにコーディネートを手掛けていくかといった青写真を描いていたため、実装まで時間を要したということでしょう。
バッテリー問題にも目処が立った
2つ目は、バッテリーの問題です。
他社のスマートウォッチは1カ月近く作動するものも存在しますが、Apple Watchは最新のSeries 5でもバッテリー駆動時間は18時間です(合計4時間の4G LTE接続と14時間のBluetooth経由でのiPhoneへの接続が想定されています)。
そのため、当初Appleとしては日中にApple Watchを着用し、就寝時には充電してもらうことを意図していたと考えられます。事実、あくまでも個人的な感想ですが、初代Apple Watchは着用しているだけで、勝手に充電が減っていくような感覚を抱きました。
しかし、技術の進歩によってSeries 5はバッテリー残量80%の状態まで1.5時間、100%まで2.5時間の充電しか必要としません。また、睡眠トラッキング機能はベータ版の調査からバッテリー残量が1日目は22%、2日目は12%と、比較的穏やかな減少に落ち着くことが判明しています(バッテリー残量が30%以下の状態でトラッキング機能を使おうとすると、充電するようサジェストが表示されます)。
つまり、充電スピードが向上し、消費電力が最大でも30%程度に抑えられるようになって初めて、睡眠トラッキング機能を導入できる目処が立ったというわけです。
ちなみにケビン・リンチ氏によると、自動手洗い検出もやはり数年前から開発が始まっていたそうです。
Source:CNET via AppleInsider
Photo:YouTube-AppleInsider
(kihachi)