アイブ氏退社が意味するAppleのソフトウェア&サービス重視戦略

Appleの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブ氏の退社は、Appleが今後ハードウェアよりも、ソフトウェアとサービス事業へとさらに舵を切っていくことを意味していると、The Wall Street Journalが報じています。
クックCEOはデザインに興味がない
アイブ氏が2015年のApple Watch発売以降、徐々に仕事量を減らし、出勤日数も少なくなっていたという事実は、米メディアBloombergが報じました。Apple Watch開発にすべてを注ぎ、心底疲れ果てていたと米雑誌New Yorkerは伝えていますが、アイブ氏がAppleを離れるに至ったのは、働きすぎによる「燃え尽き」だけが理由ではないようです。
WSJは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)はアイブ氏の才能を高く評価し、ほかの役員よりもはるかに高い報酬を認める一方、アイブ氏が監督するデザインスタジオに顔を出すことはめったになく、同氏を含むデザインチームの面々は、クックCEOはデザインに興味がない、と感じていたそうです。
またAppleの役員が技術者ではなく、財務や経営などを専門とする人材で占められるようになったことにも、アイブ氏は苛立っていたと、関係者は証言しています。
デザインチームのトップはCOOに報告
アイブ氏退社後のデザインチームの人事にも、変化が伺われます。これまで同チームを率いてきたアイブ氏は、クックCEOに直接報告していました。しかし後任となるインダストリアル・デザイン部門副社長のエバンス・ハンキー氏、そしてヒューマン・インタフェース・デザイン部門副社長のアラン・ダイ氏の2名は、クックCEOではなく、ジェフ・ウィリアムズ最高執行責任者(COO)に報告することになります。
多くのテクノロジー企業では、製品開発において何より優先されるのは技術ですが、Appleではデザインが最優先されるといわれてきました。同社のハードウェア技術者らの口癖は「神を怒らせるな」だったそうです。
アイブ氏の退社によってデザインチームは「神」の座から降り、ソフトウェアとサービス事業の比重はさらに高まっていくと見られています。
Source:The Wall Street Journal
Photo:Twitter/Tim Cook
(lunatic)