Appleが生産拠点を中国から移すのはトランプ政権の対中関税のせいではない?


     
    トランプ政権は、中国からアメリカに輸入される製品に対して最大25%の関税を課しており、Appleの主要製品も近くその影響を受ける日が来るといわれています。Appleは生産施設の一部を中国国外に移動し始めていますが、必ずしもトランプ政権が直接の原因というわけではないようです。

    すでにサプライヤーは生産施設を一部中国国外に移動済み

    iPhoneの組み立てを担う台湾のFoxconnは、中国からインドへと生産施設を移動させており、同じく台湾のPegatronも6月からインドネシアでApple製品の組み立てを開始しています。
     
    Appleが生産拠点を中国国外に移すのは、トランプ政権の対中関税が原因であるとする意見がありますが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のサプライチェーン管理プログラムのディレクターを務めるブルース・アルンツェン氏は、中国からの生産施設の移動は時間の問題だったと述べています。
     
    「多くの企業が中国に生産拠点を構えたのにはいくつかの理由があった。しかしメリットの多くはもはやなくなってしまった」とアルンツェン氏はBusiness Insiderに語りました。
     
    同氏によれば、すでにアパレル(靴を含む)、宇宙産業、自動車部品企業が、近年生産施設を中国から他の場所へと移しており、この動きはトランプ米大統領が対中関税措置を開始する前から起こっていたとのことです。

    中国での生産は容易ではなかった?

    アルンツェン氏によれば、米企業が中国で製品の生産を行う場合、言語、時差などの2国間の地理的隔たりのため、生産施設と部品メーカーとの間の供給ラインが長くなってしまうとのことです。ゆえに、リードタイム(発注から納品までに必要な時間)が長くなり、結果として市場の変化に対応しきれず、予想よりも多くの在庫を抱えてしまうことがあるそうです。
     
    また、知的財産権の盗難や、コストが高い空輸への依存も、中国で生産を行うことの問題として挙げられています。

    中国での人件費はもはや安くない

    それでも企業が中国での生産にこだわり続けたのは、人件費の安い労働力が大量にあったからです。しかしながら、中国国内の雇用情勢は海岸部を中心に厳しくなりつつあり、台湾やその他の国々とさほど変わらないぐらい人件費も高くなってきているとのことです。
     
    また、国が豊かになるにつれて、中国政府もより厳しい環境汚染と労働環境の規制を敷くようになりました。
     
    ゆえに、トランプ政権の対中関税は、Appleにとって生産施設を中国国外に移すための言い訳に過ぎない、というのがアルンツェン氏の見方のようです。
     
     
    Source:Business Insider
    Photo:Wikimedia Commons[1], [2]
    (lexi)

    この記事がお役に立ったらシェアお願いします

    この記事を書いた人

    ARラボ出身の猫愛好家。往年のMacユーザーで、iPhone使用歴は10年以上。

    特集

    [PR]オフィシャルサイト

    目次