AppleがiPhoneをデュアルSIM対応にするかもしれない理由とは
Appleが、今秋発売する新作iPhoneの3モデルのうち、いくつかをデュアルSIM対応にするのではとの噂がありますが、もし仮にAppleがデュアルSIMをiPhoneに導入するとして、そこにどのようなメリットがあるのでしょうか?
デュアルSIMは2000年代中期が起源
デュアルSIMをサポートするデバイスはすでに20年ほど前から存在していましたが、2つのSIMカードを1つのデバイスで同時に使用できるコンセプトが、中国の小規模なデバイス生産者により最初に導入されたのは、2000年代中期から後期だといわれています。
そもそもデュアルSIMは、キャリア契約よりもロック解除されたデバイスを直接購入することを望んだユーザーが、ローミング料金を回避するために考案されたといわれています。
中国では長い間、携帯電話番号が地方に結びつけられてきた過去があります。例えば北京から上海へと移動した場合、新しいSIMカードを購入する必要があり、中国のキャリアは長距離の国内電話に対しローミング料金を取ってきました。デュアルSIMを使うことで、人々はトラブルをうまく避けてきたわけです。
国内通話のローミング料金は昨年で廃止されましたが、デュアルSIMは今では2つの異なるキャリアのプランを同時に使用し、通信料金を抑えるためのツールとして重宝されています。
また、インドやアフリカなど通信インフラがいまだに発展途上の地域では、デュアルSIMでカバーエリアの異なる2つのキャリアを同時使用することで、通信状況の安定化を図るという目的もあります。
インド市場では鳴かず飛ばずのApple
インドにおけるスマートフォン市場でのAppleのシェアは1%まで縮小しており、鳴かず飛ばずの状態が続いています。
iPhoneのインド国内での販売価格を下げるため、AppleサプライヤーのWistronが2017年春からiPhone SEの組み立てをスタートさせ、同年6月に国内向けに販売を開始、また今年6月には、iPhone6sの量産も始めたと報じられていますが、Appleの計画は予定通りに進んでいない模様です。
この状況の中で、仮にデュアルSIMを搭載したハイエンドモデルを発表したところで、波及効果は非常に薄いものになるであろうことが予測されます。
ゆえにiPhoneのデュアルSIM搭載は、インド市場をターゲットにしたものではない可能性が濃厚と言えるでしょう。
やはり中国市場がねらいか
デュアルSIM搭載のターゲットがインドでないということは、残された選択肢は中国しかありません。
中国は、国際市場の中でもiPhoneの浸透率が高く、デュアルSIM非対応が、ユーザーのデバイス購入選択の妨げになり得る唯一の国だからです。
ゆえにデュアルSIM搭載iPhoneが中国のみの限定販売となっても何ら不思議ではありません。米国ではデュアルSIMの文化は浸透しておらず、デュアルSIM対応の中国ベンダーデバイスもキャリア契約に縛られたものしか存在していません。
Appleが国際市場に向けてデュアルSIM搭載iPhoneを販売する可能性ももちろんありますが、SIMカードという技術自体がAppleが入れ込むようなものとは思えない、と米メディアThe Vergeは結論づけています。
Source:The Verge
Photo:Ilya Plekhanov/Wikimedia Commons
(lexi)