課題山積、iPhone8のTouch ID埋め込みは「Appleの意地」か

今秋の発売が噂されるiPhone8は、有機EL(OLED)ディスプレイへの指紋センサーを埋め込む技術的問題により、本格生産と発売が遅れると予測されています。発売の遅れは、Appleの業績にも影響を与える可能性が指摘されています。
Appleがリスクを冒してまでiPhone8のTouch IDをディスプレイに埋め込む理由は、iPhoneでスマートフォンのデザインに革命を起こしたAppleの意地のようです。
進化止まったスマートフォン、選択にデザイン重視の傾向強まる
2007年に発表された初代iPhoneは、タッチスクリーンによる直観的操作と、シンプルで洗練されたデザインで、それまでBlackBerryに代表される物理キーボードが付き物だった「スマートフォン」の概念を一変させました。
10年が経過し、スマートフォンの機能・性能の進化は頭打ちになったと言われ、主要国では販売数も伸び悩み、スマートフォン市場は低成長の成熟状態と言われています。
AppleとSamsung両社にコンサルティングを行ったプロダクトデザイン調査会社のMauroNewMediaによると、人々がスマートフォン購入時に「デザイン」を重視する傾向が強まっている、と指摘します。デザインを重視してスマートフォンを選ぶ人は、以前の調査では7%程度でしたが、現在はおよそ半数に達しているそうです。
デザイン重視と自社生産で優位に立つSamsung
スマートフォンの世界シェアでAppleとライバルであると同時に、iPhoneのデザイン模倣疑惑でAppleとの法廷闘争が続くSamsungは、デザイン重視の経営姿勢を強めています。
サプライヤーに依存するAppleと異なり、主要部品を自社生産する強みを活かし、早期に有機ELディスプレイを本格採用したほか、2017年4月に発売したGalaxy S8では画面縁のベゼルがないデザインを導入しました。
Appleとしては、iPhone8で指紋センサーをディスプレイに埋め込むことでSamsungに対する明確な優位性を打ち出したいのではないか、とThe Wall Street Journalは指摘しています。
「Appleは変わった。ジョブズの築いた組織は終わった」
このままだとAppleはデザインでSamsungに置き去りにされる、とかつてAppleのデザインを指揮したヒュー・ダブリー氏が警告しています。
ダブリー氏は、1980年代後半から90年代前半にかけてAppleでデザインチームを率いていました。後にSamsungのグローバルデザイン諮問委員会にも加わり、両社の内部を知る同氏は、The Wall Street Journalに対し以下のように語っています。
Samsungがそれほど良くなったわけじゃない。しかし、Appleは根本的に変わってしまった。スティーブ・ジョブズが築いた組織は終わったんだ。
Apple、次の10年を示せるか?
2017年秋の発売が噂されるiPhone8で、Appleは10年続いた長方形の本体に丸いホームボタンという、iPhoneを象徴するデザインを捨てると予測されています。
iPhone8で、Appleは次の10年を示せるのでしょうか。
Source:The Wall Street Journal
Photo:Martin Hajek, Samsung
(hato)