Apple Vision Proの光と影、発売前レビューで明かされた弱点
Apple Vision Proがアメリカで2月2日に販売が開始されるのを前に先行レビューしたジャーナリストが、Vision Proの素晴らしさと同時に、いくつかの問題点があると指摘しています。カメラやディスプレイの性能は優れているものの、ハードウェア的な限界も感じられるようです。
■3行で分かる、この記事のポイント
1. Apple Vision Proの販売開始を前にジャーナリストがレビューを公開。
2. 本体デザイン、高解像度のディスプレイやカメラは素晴らしい。
3. 重いことのほか、頭を動かした時のブレ、低照度で解像度が下がるなどの問題も。
デザインの美しさ、ビデオパススルーを賞賛
現地時間1月19日に予約受付が開始され、2月2日に発売されるApple Vision Proは、すでに約20万台が売れたと伝えられています。販売開始を前に、複数のジャーナリストらが先行レビューを公開しています。
The Vergeの編集長、ニレイ・パテル氏は、数日間Vision Proを使用した体験として、本体デザインが驚くほど美しく、iPhoneやApple WatchといったAppleと共通する親しみやすさを感じると評価しています。
また、リアルタイムで動作するVision Proのビデオパススルーは、これまで見たどの製品よりも素晴らしく、高解像度であり驚異的な工学的な成果だ、と賞賛しています。
2つで合計2,300万ピクセルの内蔵ディスプレイは、文字を読んだり、映画を鑑賞したりするのに十分なクオリティであり、鮮やかで色表現も正確だそうです。
最大の弱点は「重い」こと
パテル氏は、Vision Proの問題点として、非常に高価であることのほか、実際に使って感じたいくつもの問題点を挙げています。
Vision Proをしばらく使って最も気になったこととして、ただ「重い」ことだ、とパテル氏は語っています。Vision Proの重量は600〜650グラムと、12.9インチiPad Pro(682グラム)に迫ります。
さらに、Vision Proは、重量バランスの面でも不利だ、とパテル氏は指摘しています。Vision Proよりも重いQuest Pro(722グラム)は、重量のバランスが考慮されている一方、Vision Proは重量物が全てフロント側に偏っていることで、より重さを感じやすいようです。
ちなみに、Vision Proにケーブルで接続される353グラムのバッテリーは、取り外すとVision Proの電源がオフになってしまいます。
カメラやディスプレイの限界ゆえの弱点
Vision Proが非常に高い性能のカメラとディスプレイを搭載しているとはいえ、ハードウェア的な限界として、以下のような問題点も感じたそうです。
- Vision Proを装着して頭を動かすと、映像がぶれるモーションブラーが生じる。
- 低照度環境では、ノイズリダクションが働く影響で、ビデオパススルーの解像度が低下する。例えば、日没後にVision Pro越しに見るiPhoneの画面がぼやけて見えた。
- 中程度の明るさの部屋で、暗い仮装環境の中で明るいウィンドウを開いて作業していると、システムが見えているものの明るさを平均化しようとするため、ディスプレイの明るさがゆっくりと変動する。
- Vision Proのカメラを通して見ると、電子レンジなどの液晶画面がちらついて見える。
- ディスプレイの視野角が広くない。Quest 3の水平方向110度よりも少ないと感じる。視界の周辺部に黒い縁取りがあり、双眼鏡越しに世界を見ているような感じ。
- レンズの縁の部分には少し歪みやケラレがあり、明るい環境で周辺部に緑やピンクのカラーフリンジが発生した。
パテル氏がAppleに尋ねると、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、影響を最小限に抑えられるよう設計していると説明があったそうですが、実際に問題は発生する、とパテル氏は指摘しています。
手と目で操作するシステムは素晴らしいがストレスに
手と目の動きで操作できるコントロールシステムは素晴らしいものの、パテル氏は何度か使っているうちに、操作対象を見なくてはならないことをストレスに感じるようになったそうです。
操作対象を目で追う動作は、これまでのiPhoneやMacを操作する時には意識していなかったことだけに、好みが分かれるのかもしれません。
Eyesightは「幽霊のようで不気味」
周囲の人がVision Proユーザーの目を見て話せるとアピールされているEyeSIghtについては、OLEDディスプレイの解像度が低く、薄暗いうえにカバーガラスが光を反射するので、普通の明るさでは見えにくく、見えても低解像度の幽霊のようで、不気味に感じる、とパテル氏はコメントしています。
また、ユーザーは外部ディスプレイの表示内容を把握できないので、相手が自分をどう見ているか分からないのも使っていて不安に感じるようです。
ペルソナはまだまだ発展途上
Appleがベータ版、と位置付けているペルソナは、Vision Proを装着してビデオ通話する際、お互いの表情を見られるようにする機能です。
著名YouTuberのマーカス・ブラウンリー氏、The Wall Street Journalのジョアナ・スターン氏とのビデオ通話を試した感想としてパテル氏は、非常に奇妙でとても不気味と述べ、ストレスなく使えるようになるまで、まだ時間がかかりそうだとコメントしています。
近くの人と共有できず「孤独」
Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)は以前から、仮想現実(VR)は周囲の世界から隔絶されてしまう、周囲の世界に溶け込める拡張現実(AR)のほうが優れていると主張していました。
しかしパテル氏は、Vision Proは本質的にVRデバイスだ、とコメントしています。通常のコンピュータやスマートフォンと違い、自分が見ている世界を近くの人(Vision Proユーザーとすらも)共有することができず、孤独を感じたそうです。
レビュー動画はこちら
パテル氏による、辛口コメントを交えたVision Proのレビュー動画はこちらで再生できます。
Photo:Apple, The Verge/YouTube
(hato)