AirPodsとAirPods Proの開発経緯は大きく異なっていた

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AirPods Proは、Apple初の完全ワイヤレスイヤホンAirPodsがさらに進化した製品であり、同一線上に置かれがちですが、その開発プロセスは大きく異なっていたことが、元Apple従業員のエッセイにより明らかになりました。

情報を共有しないことで生まれた軋轢

Appleで人事部の役員クラスの従業員だったクリス・ディーバー氏は、米メディアFast Companyに寄稿したエッセイの中で、Appleの秘密主義文化をどのように共有可能なものへと変革していったかを語っています。
 
Appleの秘密主義文化はすでに周知の事実となっており、新製品発表イベントでの“驚きと喜び”を楽しみにしているという方も多いかと思います。実際にこの秘密主義がAppleの価値創造の重要な一端を担っており、Apple社内でも“情報を共有しない”というのが通例となっていました。
 
しかしながら、この秘密主義には暗黒面があり、これが顕著に現れたのがAirPodsの開発でした。社内で情報を共有できないために、それぞれのチームは秘密裏にイノベーションを行う必要があり、製品発売の11時間前にようやくすべてが集結したそうです。そのためミーティングは毎日5、6時間に及んでしまい、多くの摩擦と燃え尽き症候群を引き起こしていました。

役員たちはすでに共有することの重要性を認識していた

ディーバー氏は、秘密主義に徹底するあまり社内で情報が共有できない問題を解決するため、「7つの習慣 人格主義の回復」スティーブン・R.コヴィー著、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか」エド・キャットマル著などの書籍を参考にしながら、やがて“チーム間で情報を共有しなければならない”という結論に達します。
 
実際にAppleの役員に話をしてみて驚いたのは、みな共有することの重要性をすでに認識していたことでした。執行担当のプリヤ・バラスブラマニアム氏は他者と早期に共有することの重要性を語っており、小売担当のアンジェラ・アーレンツ氏も同じことを述べていました。デザイン担当のジョナサン・アイブ氏、ワイヤレスデザインチームのマッティア・パスコリーニ氏、ディスプレイ・カメラ・タッチ担当のリン・ヤングス氏も同様に共有することの大切さを語っていたのです。

カメラ開発で導入した新プロセスをAirPods Proにも適用

秘密主義の中での共有を実現するため、Appleはカメラ開発で新たな手法を導入しました。毎週、スタッフ間で透明性のあるセッションを行い、脆弱性やオープンアプローチに焦点を当て、直面している問題を共有したのです。各リーダーと各チームが発言し、自分たちの開発状況や他のチームからの要望を正確に共有しました。その結果、イノベーションのサイクルが生まれ、Appleのカメラ技術は新たな高みへと加速し、この手法がコラボレーションにおけるゴールドスタンダードとなったのです。
 
そしてこの手法をイヤホン開発に適用した結果、非常に優れたノイズキャンセリング機能を持つAirPods Proを世に送り出すことができたのです。
 
「共有は秘密主義の中でも可能なのです」と、ディーバー氏はエッセイの中で誇らしげに語っています。
 
 
Source:Fast Company
Photo:Apple
(lexi)

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この記事を書いた人

ARラボ出身の猫愛好家。往年のMacユーザーで、iPhone使用歴は10年以上。

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