Samsung、打倒TSMCでファウンドリ事業に巨額投資へ

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    チップの製造に本腰を入れるべく、Samsungが今後10年で1,160億ドル(約12兆7,080億円)の資金を投じ、大規模なファウンドリ(チップの受託生産工場)を設立する方針を固めているようです。

    ファウンドリ市場はTSMCの一人勝ち

    スマートフォンメーカーの大半は、チップを自分たちで生産していません。例えば大半のAndroidスマートフォンに搭載されたチップは、QualcommやMediaTekが設計し、受注したTSMCによって生産されています。iOS製品に搭載される「A~」シリーズも、設計はAppleですが生産はTSMCです。
     
    受託生産を請け負うのがファウンドリです。ところが現在、先端プロセスでチップを大規模生産できるファウンドリはほぼTSMCに限られており、他企業はTSMCの“一人勝ち”を指をくわえて眺めるしかないのが現状です。2018年には米企業GlobalFoundriesが、投資に見合っていないとしてプロセスの微細化研究を打ち切るなど、多くの企業には開発を続ける体力がありません。
     
    この状況をチャンスと見たのがSamsungです。Bloombergによると、Samsungは2030年までに1,160億ドル(約12兆7,080億円)、毎年100億ドル(約110兆円)規模の巨額資金を投じる計画を発表、極端紫外線(EUV)と呼ばれるプロセスの開発に意欲を見せています。
     
    すでに同社は、メモリや有機EL(OLED)ディスプレイ、スマートフォン市場など多方面で大きなシェアを有しているほか、ファウンドリとしても市場全体で18%のシェアを占めていますが、グループ全体で見れば“片手間”の事業でした。しかし、今後は同市場で過半数のシェアを有するTSMCの存在感を脅かしに行くというわけです。

    かつてはAppleの受注失ったSamsung

    Samsungは2015年、iPhone向けに供給していたA9チップでTSMC製のものに比べて性能が劣るのではないか、とする“チップゲート問題”が浮上、台湾政府が声明を発表する事態にまで発展した過去があります。その後の詳細な検証で性能差は否定されましたが、結果としてSamsungはAppleからのチップ受注を失いました。
     
    しかし今回は、Samsungにも追い風が吹いています。
     
    Qualcommは先日、年次イベントQualcomm Tech Summit 2019で新たに発表したスマートフォン向けチップのうち、Snapdragon 865をTSMCに、Snapdragon 765をSamsungに発注すると発表しました。上位モデルをTSMCに割り振ったとはいえ、チップを十分に確保するうえではSamsungの協力も仰ぐことが不可欠だと判断したのでしょう。
     
    また、EUVプロセスを用いた自社開発のチップ5G Exynosを、中国スマートフォンメーカーのVivoに供給することも決定しています。こうしたSamsungの攻勢に対抗すべく、TSMCも2019年と2020年にそれぞれ140億ドル(約1兆5,320億円)の資金を投じる予定ですが、近年はTSMC一社に絞っていたAppleとしても、再びSamsungにチップ供給を依頼する日が訪れるのかもしれません。
     
    Source:Bloomberg,日経xTECH,PCWatch
    (kihachi)

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