ジョブズとAppleの黒歴史?Apple Musicの前身「Ping」とは

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AppleがiTunesの次に発表した音楽サービスは、もちろんApple Music――。実は間違っています。2010年にAppleが「Ping」というSNSと音楽の統合サービスを覚えているユーザーは、一体どれだけいるでしょうか。

FacebookがiTunesに出会ったようなもの

創業者であるスティーブ・ジョブズ氏にとって最後の基調講演となった2010年9月1日、彼が壇上で熱弁を振るっていたのは、Appleが手がける新たな音楽サービスについてでした。
 
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Ping」と呼ばれるそのサービスは、当時ちょうど隆盛していたFacebookやTwitterを引き合いに出す形で、ジョブズ氏によって「FacebookとTwitterがiTunesに出会ったようなものだ。これは音楽に特化したソーシャルネットワークなのだ」と説明されました。
 
しかし、それから8年が経過した今、Pingの姿はどこにも見当たりません。

交渉は難航、初日からスパムまみれに

基調講演から2日後、Appleは最初の24時間で100万人の登録者があったと発表しましたが、実際のところPingは出だしから躓いていました。
 
「FacebookがiTunesに出会ったようなものだ」とは言ったものの、実際にはAppleの“片思い”に近かったことが、Wall Street Journalによるジョブズ氏へのインタビューから明らかになっています。
 
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18カ月にも渡る粘り強い交渉が続けられたものの、両社の間で合意がまとまることはなく、PingはFacebookの認証なしでサービスをローンチします。
 
その結果待っていたのは、スパムの横溢と、FacebookによるAPIへのアクセス拒否でした。

きっかり2年でサービス終了

リリースから1年が経過すると、アップデートや無料アルバムの更新は途絶えがちになり、Appleがリソースを割くのを嫌がっているのが誰の目にも明らかになりだしました。ユーザーは日に日に減少していきました。
 
なにより「音楽のソーシャルネットワーク」を標榜していながら、友達がオススメしてくれた曲は購入しない限り“試聴”しかできないというのも、サービスとして致命的でした。
 
この段階でもまだ、ステーブ・ジョブズ氏はFacebookの最高経営責任者(CEO)であるマーク・ザッカーバーグ氏と会食を設けるなどして、粘り強く交渉を続けていたと言われています。自身の死を予感していたであろうジョブズ氏にとって、Pingは最後の一大プロジェクトだったのでしょう。
 
CEOの座にティム・クック氏が就任すると、Pingは「エネルギーを注ごうと思える何かではない(2012年:同氏談)」と、サービス終了がおおっぴらに語られるようになります。
 
そして、2012年9月12日、華々しいデビューを飾った2010年の基調講演からちょうど2年で、Pingはサービスとしての役目を終えました。
 
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PingのDNAはApple Musicに受け継がれている

片手では足りないほどの成功物語を持つステーブ・ジョブズ氏にとって、Pingは「最後の失敗」だったのでしょうか。あるいは、Appleにとって「忘れたい過去」なのでしょうか。
 
ニュースサイトAppleInsiderによると、Apple Musicには「Pingの遺産」とでも呼べるものが垣間見えるそうです。
 
例えば、8月にはApple Musicに「Friends Mix」機能が新たに追加され、友達の聴いている曲をユーザーが収集することが可能になりました。もちろん、音楽ストリーミングサービスがベースなので、“試聴”ではなく丸々聴くことができます。
 
また、アーティストをフォローすることで、彼らの動向をチェックできる「Connect」機能も、PingがSNSとして目指したものでした。
 
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年月が経てば経つほど、Pingを覚えているユーザーは少なくなっていくでしょう。しかし、時代を先取りしたこのサービスのDNAは、確かにApple Musicの中で息づいているのです。
 
 
Source:AppleInsider
Photo:Apple,YouTube
(kihachi)

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この記事を書いた人

丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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