Siriの生みの親が語る「現在のSiriに欠けているもの」
iPhoneの音声アシスタント、Siriの生みの親であるノーマン・ワイナスキー博士によると、開発当時に目指していたSiriと現在のSiriの姿は、だいぶ違ってしまっているようです。
2010年、AppleがSIriを買収
Siriの開発を行っていたSiri社は、スタンフォード大学の研究所に起源を持つSRI Internationalから2008年にスピンオフされ、2010年にAppleに買収されました。
Siriは当初、iOSアプリとして公開されていましたが、Appleによる買収後、独立したアプリとしての公開は終了しています。
2011年、SiriはiPhone4sとともに、世界初の人工知能を搭載したデジタルパーソナルアシスタントとして公開されました。
世界初のアシスタントだが、能力でライバルに負ける
しかし、世界初のAIアシスタントは、現時点では世界最高の能力を誇るわけではありません。
Siriを搭載したスマートスピーカーHomePodは、質問への正答率が52.3%で、Google AssistantやAmazonのAlexa、MicrosoftのCortanaに負けており、レビューでも音質で高い評価を得る一方、Siriの使い勝手で評価を下げています。
また、各種AIアシスタントの知能レベルを比較した結果、Siriは10種類のAIアシスタント中で最下位となってしまいました。
旅行とエンタメに特化していた初期のSiri
Siri社の共同創業者であり、Siri開発の中心人物だったワイナスキー博士は、Siriは当初、特定の分野、まずは「旅行とエンターテインメント」に特化したパーソナル・アシスタントとして開発されたとして、具体的な活用シーンを語っています。
空港に着いて、フライトが欠航になったことが分かった時、あなたがスマートフォンをポケットから出す時までに、Siriは帰宅のための代替ルートを探し始める。
もし、代わりのルートが見つからなかったら、ホテルの予約を準備する。
Siriの守備範囲とする分野は狭いものでしたが、その分野については完璧に学習する能力を持ち、ひとつ分野を極めたら、関連する次の分野へと拡大する方針だったそうです。
現在のSiriに欠けているのは「驚きと喜び」
しかし、AppleはSiriを、ありとあらゆる分野に対応できるアシスタントとして発表しました。これが、Siriにとって困難の始まりだった、とワイナスキー博士は指摘します。
それは困難な問題だ。十億人単位を相手にしなくてはならない企業なら、なおさらだ。
Appleは、到達できないレベルの完璧さを求めている。
ワイナスキー博士は、現在のSiriについて「驚きと喜びが欠けている」と語っています。
Appleに買収される前から高い能力を持っていたSiri
Appleに買収される前、単独のアプリだった2010年当時に公開された、Siriを紹介する動画がこちらです。
「いい感じのレストラン」を提案し、予約してくれるほか、会話の文脈を踏まえた適切な提案をしてくれており、当時から非常に高い能力を持っていたことがわかります。
Source:Quartz, MacRumors
Photo:Stanford Graduate School of Business
(hato)