iPhoneを中国で販売禁止に追い込もうとする謎の現地企業、「佰利」の謎にせまる!
「北京市知的財産権局がアップルにiPhone販売停止要求」というニュースに突如現れた、意匠権を侵害していると主張している佰利公司(baili:以下「佰利」)について、初耳だと感じたユーザーは多いのではないでしょうか。それは中国でも同様で、「ニセモノ」「特許ゴロ」扱いする見方は少なくありませんでした。
しかしよくよく調べてみると、2013年には大手検索エンジン企業の百度(baidu)が投資を行うなど、それなりに実態のある企業であったことが判明しています。
「100c」って一体何?
問題の発端は、北京市の知的財産局が、iPhone6/6 Plusのデザインは中国の佰利がリリースしたスマートフォン「100c」を模倣しているとして、アップルと現地で販売を請け負う中复公司に対し、意匠権を侵害したかどで同iPhoneの販売を控えるよう命じたことがきっかけです。
佰利という謎めいた企業、そしてiPhoneに似ている機種はもっと沢山あるだろう…と言いたくなるスマートフォン「100c」に対して、大半のユーザーが疑問を覚えたことは想像に難くありません。
ところが、ニュースサイト新浪科技によると、佰利は決して「ニセモノ」を取り扱う企業でも、「特許ゴロ」でもなく、最低限は実態のあった企業だということが分かってきました。
サイトの更新は止まっているが活動の形跡はあり
中国全土の企業情報を調べるサイトで佰利を調べたところ、まず深センにある百分之百数码科技(DIGIONE)の100%子会社であること、両社の代表幹部として徐国祥(Xu Guoxiang)という元Huaweiの端末マーケティング責任者の名前が共通していることが分かりました。
調査資料によると、この百分之百は2006年に成立し、2011年には複数の投資企業から資金を獲得することに成功、2013年11月には中国最大級の大手検索エンジンである百度(baidu)からの投資を取り付けることにも成功します。ここで百度は百分之百の最大の投資者となり、百分之百は互联网手机(13年11月)や百度と自社の名前をかけたと思われる百加手机(14年5月:100c)といったスマートフォンを世に送り出します。
しかし、2015年3月に百度は投資家として撤退、先述した徐氏はスマートフォン業務を一時停止します。もし、今回の事件がなければ、ほとんど誰もがこのスマートフォンブランドの存在を忘れていたに違いありません。事実、中国SNS微博でで百加手机(100c)の公式ページをみると、最後の更新は15年1月5日で止まっています。
14年12月には悪影響があるとして不満を漏らしていた
微博の公式ページを遡ると、2014年12月1日の時点ですでに、iPhone6が100c V6の外見を模倣しているとしてアップルに対して申し立てをするも失敗に終わったこと、そして同9日には、決して自分たちがiPhone6を剽窃したのではないこと、現時点でアップルを訴えるつもりはないことなどについて釈明しています。
この時点ですでに百分之百あらため佰利が、アップルから和解金やデザイン使用権を手にしようと考えていたのか、あるいは14年5月にリリースした製品と酷似したiPhoneが9月に発売されたということで義憤に駆られただけなのかは分かりません。
しかし過去には、iPadの商標権問題でアップルが深センの唯冠科技(Proview Technology)に和解金として、12年に6,000万ドル(約60億円)支払う羽目になった事例も存在するだけに、佰利がアップルをまったくの根拠や勝算なく訴えたということはなさそうです。
仮に敗訴しても禁止となるのは北京圏内のみ
ユーザー最大の関心は、iPhone6/6 Plusは中国で本当に販売禁止されるのか、ということに尽きるでしょう。
早速アップルが北京の知的財産権法院で現在訴訟を起こしているため、現在命令の実行は差し控えられていますが、事情に詳しい弁護士が国内メディア北京晨报に語ったところによると、仮に法院が知的財産権局の決定を支持しても、販売禁止命令が及ぶのは北京地域の範囲内にとどまり、他地域でも同じように販売禁止となるわけではないとのことです。
また、仮に一審で敗訴しても当然アップルは控訴するため、裁判が数年にも長引くのは必至で、その間はiPhone6/6 Plusが販売停止の憂き目に遭うこともありません(和解金を支払うという選択肢もありますが)。ただ、いずれの結果が待ち受けているにせよ、アップルにとっては前途多難な裁判となることは確かです。
Source:新浪科技
(kihachi)