
クック氏CEO退任しテルヌス体制へ、社員に最後のメッセージ

米Appleのティム・クックCEOが現地時間8月31日をもって退任し、9月1日からハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のジョン・テルヌス氏が新CEOに就任すると、The VergeやITHomeが報じています。クック氏は最終日の朝、社員に宛てて感謝をつづった最後のメッセージを送りました。iPhoneを世界的な存在へと育てた15年の「クック時代」が幕を閉じる歴史的な節目であり、Apple PayのSuica対応など日本市場への投資を主導してきた体制の交代は、日本のユーザーにとっても大きな意味を持ちます。
クック氏は執行会長に転身、テルヌス氏が本日から職務を引き継ぐ
ITHomeによると、クック氏のCEOとしての勤務は8月31日が最終日で、テルヌス氏が翌9月1日から職務を引き継ぎます。クック氏は退任後、Appleの取締役会の執行会長(エグゼクティブ・チェアマン)に就き、世界各国の政策当局とのコミュニケーションなどを引き続き担当すると伝えられています。
The Vergeも「本日がクック氏のCEOとしての最後の日」と報道。2011年にスティーブ・ジョブズ氏の後を継いでからの15年間で、Appleを数十億人の日常生活に深く根ざした企業に育て上げたと評しています。
最後のメッセージで「すべては皆さんのおかげ」と感謝
クック氏が8月31日朝に社員へ送ったメッセージの主要部分は、次の通りです(ITHome掲載の全文から翻訳)。
「今日は、私がAppleのCEOを務める最後の日です。いつかこの日が来ることは分かっていましたが、実際にその日を迎え、腰を下ろしてこの手紙を書いてみると、すべてが現実になったことがまだ信じられずにいます。私はこの会社を、そしてそれを支えるチームを愛しています。皆さんが寄せてくれた深い思いやりと、日々の努力や支えに感謝を伝えるため、今日どうしてもこの手紙を書きたかったのです。何よりも、人生で最も貴重な機会、すなわち皆さんのリーダーになるという機会を与えてくれたことに感謝します」
「正直に言えば、人々が私の成功をどう評価しようと、そのすべてが皆さんのおかげであることを私は知っています。皆さんこそが、私をより良い人間にしてくれました。Appleに来る前、これほど非凡な人々に出会ったことも、共に働いたこともありませんでした。今も毎日、その実例を目にしています」
「Appleには確かに特別な何かがあります。私が最も誇りに思うのは、年次報告書には決して表れないもの、ここにある文化の力です」
クック氏は以前から引き継ぎへの思いを語っており、今回のメッセージの中でも後任のテルヌス氏への期待に触れ、「会社をジョン・テルヌスに託せることに、この上ない安心を覚えている」と記したと報じられています。
15年で時価総額を約10倍に、日本にも投資
クック氏が2011年8月にCEOに就任した当時、Appleの時価総額は約3,500億ドルでした。その後、2018年には米上場企業として初めて1兆ドルを突破し、現在は3兆ドルを超える規模へと、約10倍に成長しています。在任中にはApple WatchやAirPodsといった新カテゴリの製品を成功させ、App StoreやiCloudなどのサービス事業を第2の柱に育てました。
日本のユーザーにとっても、クック時代の恩恵は身近です。2016年のiPhone 7では日本市場のためにFeliCaへの対応を決断し、Apple PayでSuicaが使えるようになりました。Apple 京都や丸の内など直営店の拡大も進み、クック氏自身がたびたび来日するなど、日本を重要市場として扱い続けた15年間でした。
新CEOテルヌス氏はハードウェア畑の生え抜き
テルヌス氏は2001年にAppleへ入社した生え抜きのエンジニアで、iPadやMac、AirPodsなどのハードウェア開発を統括し、2021年からハードウェアエンジニアリング担当上級副社長を務めてきました。MacをApple Silicon(Mシリーズチップ)へ移行させた立役者の一人としても知られ、かねてから後継の最有力候補と報じられてきた人物です。
体制交代が製品やサービスに与える影響は現時点で発表されておらず、日本での製品展開や価格がただちに変わることはないとみられます。例年9月に開催される新型iPhoneの発表イベントが、テルヌス新体制にとって最初の大舞台になるとみられ、ハードウェアを知り尽くした新CEOがAppleをどう導くのか、世界の注目が集まります。
