なぜAppleは中国の工場で1日に50万台のiPhoneを製造可能なのか

    apple 鄭州 サプライヤー

    apple 鄭州 サプライヤー
     
    なぜAppleは中国にあるFoxconnの工場で、1日に50万台ものiPhoneを作り続けることが可能なのか――その秘密はFoxconnの工場が位置する鄭州にあるとする、興味深いコラムを米メディアNew York Timesが掲載しています。

    日に500,000台生産できるiPhoneシティ

    中国には「巣を作れば、鳥がやってくる」という諺があります。今、河南省の鄭州で起きている出来事は、まさにこの格言が実際に起こりうることを的確に証明しています。
     
    決して裕福とは言えない、この地方都市には現在、600万人が住んでいますが、この中枢を占めているのがFoxconnの工場です。15億ドル(約1,600億円)の費用を投じて建設された工場では、1日あたり50万台ものiPhoneが製造されます。世界の約半分のiPhoneはここで作られることから、人呼んで「iPhoneシティ」――それが今の鄭州の姿です。
     
    Appleに限らず、中国はテクノロジー業界にとって、魅惑の都市です。もともとは、Appleが唯一の顧客であるFoxconnの工場があるのみでした。しかし、今はアメリカ中のテクノロジー企業がここにある工場に製造を発注しています。
     

    apple 鄭州 サプライヤー

    夜勤組と昼勤組が入れ替わる時間帯。人の出入りでごった返す


     
    労働コストを安価で抑えられるうえに、技術者のレベルも熟練しているため、DellやHewlett-Packard、Samsungなどもこぞって、工場を設置しています。Appleも数少ないアメリカで製造するApple製品の1つ、Mac Proを、上記の観点から今後は中国で生産しようという動きもみせています。
     
    例えば、iPhone7/32GBモデルの製造コストは400ドル(約46,000円)ですが、販売価格は699ドル(約80,500円)。単純計算でAppleは差額の34,000円ほどを利益として得ていることになりますが、New York Timesによれば、これこそがAppleが売り上げ自体はスマートフォン業界の12%しか占めていないのにもかかわらず、営業利益別では90%以上と「一人勝ち」ができる秘訣なのだそうです。

    アメリカ政府と中国政府は苦々しい気持ちでみている

    中国なしでは、テクノロジー製品が少なくとも現状のようにいかないという事実は、ドナルド・トランプ次期大統領の言うとおりにアメリカでiPhoneを生産した場合、端末の価格がいとも簡単に100ドル(約11,500円)も値上げされてしまうことからも明らかでしょう。
     
    しかし、New Tork Timesは、アメリカと中国の両国が今後、今のAppleを逆境に追い詰めていくのではないか、と指摘しています。
     
    例えば、ドナルド・トランプ氏は自国民の雇用を守るため、かねてより企業などが生産ベースを海外に設置することに否定的で、選挙キャンペーン期間中にははっきりと「糞コンピューターやら何やらをアメリカで作りやがれ」と、Appleなどテクノロジー企業を激しく罵ったほか、当選後の電話会談でもAppleに国内で製品の製造を行うよう要求したことが分かっています。
     
    また、習近平政権の中国も、アメリカなど海外の技術が同国を覆ってしまうことに懸念を示しており、突如iTunes MoviesやiBooksが国内で使用不可となったのも記憶に新しいところです。New York Timesによると、Appleを「途切れなく中国を侵食してきた」「守護戦士」の1つであり、国家の安全を脅かす存在だ、と政府機関紙が名指しで批判したこともあったそうです。
     
    膨大な雇用を保証してくれる見返りとして現在では、鄭州の地方政府による税金控除などの積極的な支援もあり、Foxconnは滞りなくAppleにiPhoneを卸し続けていますが、今後の2国間の関係次第では、変化が起きる可能性もあります。

    今のところ蜜月は終わりそうにない

    もっとも現在では、「彼らは聡明なエンジニアを抱えており、Appleの成長に合わせて投資も行っていくつもりがある」と元Apple幹部が述べているように、FoxconnとAppleの蜜月関係が終わる気配は一向に見えてきません。
     
    2007年にiPhoneの製造を請け負うことが決まった際には、Foxxonnは「まるでオリンピック誘致のコンペのように」中国各地から工場建設の候補を探したそうで、最終的に鄭州が特区の提供と、2億5,000万ドル(約300億円)のローンをFoxconnに提供したほか、100億ドル(約1兆1,500億円)で工場の傍まで空港を拡張するなどの破格の成約まで取り付け、候補を射止めたという経緯があります。
     
    いかに国家レベルで緊張が走ろうとも、ここまで鄭州がFoxconnに対して乗り気では、AppleとFoxconnの関係が崩れることは当面なさそうです。
     
     
    Source:NYT
    (kihachi)

    この記事がお役に立ったらシェアお願いします
    目次