【レポ】組み合わせで本領発揮!Ankerの太陽電池とポータブル電源で災害の備えを

    Anker 535 Portable Power Station

    Anker 535 Portable Power Station
     
    以前公開した本サイトのレビュー記事において、災害や停電発生時に「太陽電池は最後の手段として考えるのが適当」と結論づけ、積極的に導入する必要はないと述べました。
     
    しかしながら、このときに使ったのは最大出力15ワットの小型のものであり、より大型のものを使えば結論が変わるかもしれません。
     
    そこで今回はAnkerから同社のラインナップのなかで最大出力を誇る「Anker PowerSolar 3-Port 100W」と、これを使って充電できるポータブル電源の「Anker 535 Portable Power Station」をお借りし、レビューをおこないました。

    100ワットの大出力太陽電池「Anker PowerSolar 3-Port 100W」

    まずはAnker PowerSolar 3-Port 100W(以下PowerSolar)単体で使ってみます。

     

    大型かつ重量級の本体

    この太陽電池は最大出力100ワットとAnkerのラインナップのなかでは最も出力が大きく、筆者が以前にレビューしたPowerPort Solar Lite(15W出力、以下Solar Lite)の6倍以上の出力を誇ります。
     
    その分大型かつ重く、iPhone XRも含めて比べると以下の写真のようなサイズ感です:
     
    Ankerの太陽電池の比較
     
    スペック上のサイズは格納時は約525 x 470 x 85ミリ、展開時は約1,446 x 525 x 45ミリとなっています。
     
    重さもSolar Liteの約355グラムに対して約5キログラムとかなり重く、折り畳んだときに利用する持ち運び用のハンドルが内蔵されています。
     
    Anker PowerSolar 3-Port 100Wを折り畳んだ時のハンドル
     
    それでも5キログラムはかなり重く、これを持って長距離を歩く自信は筆者にはありません

     

    USBポートの出力はSolar Liteとあまり変わらない

    PowerSolarとSolar Liteを5月の快晴および曇りの日の正午ごろに外に出し、iPhone XRや12.9インチiPad Pro(第3世代)を充電してみました。
     
    PowerSolar 3-Port 100WにはUSB-A、USB-C、そして後述するポータブル電源充電用のDC出力が用意されています。
     
    PowerPort Solar 3-Port 100Wの出力ポート
     
    USB-AポートおよびUSB-Cポートを使い、快晴時に充電した結果が以下です:
     

    Solar Lite PowerSolar
    iPhone 5.02V 1.57A 4.95V 1.35A
    iPad 5.09V 1.41A 4.95V 1.41A
    iPhone+iPad 5.19V 0.4A 4.95V 0.5A

     
    思ったよりも差がありません
     
    仕様を比較したところ、Solar LiteのUSB-Aポートが最大5V=3A出力なのに対し、PowerSolarはUSB-Cポートが5V=3A、USB-Aポートが5V=2.4Aと、あまり変わらないことがわかりました。
     
    最大100ワット出力とはいえ、USBポートを使う分には差があまりないようです。
     
    ならば天気が悪い日には差が出るだろうと、雨が降り出す前の曇りの正午に充電をおこないました。
     

    Solar Lite PowerSolar
    iPhone 不安定 不安定
    iPad 不安定 不安定
    iPhone+iPad 充電不可 充電不可

     
    残念ながらどちらも1つの機器のみを接続した際の充電は不安定で、2つの機器を接続すると充電ができなくなりました
     
    最大出力が大きいからといって曇りの日に強いというわけではないようです。

    ポータブル電源の接続で本領発揮!

    USBポートの利用ではあまり差が出ないことがわかったPowerSolarとSolar Liteですが、一縷の望みをかけてPowerSolarのみの機能であるポータブル電源の充電機能を試してみました。
     
    PowerSolarのDC出力に付属のケーブルを接続し、Anker 535 Portable Power Stationの背面にもう一方の端子を接続することで簡単に充電できます。このポータブル電源以外にAnker PowerHouse II 400/800の充電も可能です。
     
    PowerSolarとPower Stationを接続
     
    今回お借りしたAnker 535 Portable Power Stationは512Whのバッテリーを内蔵し、消費電力500ワットまでの機器を接続できるポータブル電源です。
     
    4つのUSB出力に加え、電化製品のコンセントを4つ、さらに車用のシガーソケットも付いています。
     
    Anker 535 Portable Power Station
     
    また、LEDライトも内蔵されており、キャンプや災害時などに役立つでしょう。
     
    Anker 535 Portable Power Station のLEDライト
     
    通常の6倍の寿命を持つバッテリーや長期の5年保証付きという特徴もあり、いざというときの備えとして持っておきたい1台です。

     

    快晴時のポータブル電源への充電なら90ワット近い出力が得られる

    これら2つの機器を接続し、5月の快晴の正午に外に出してみました。
     
    すると80ワットから90ワットの出力となり、電力損失を考えるとほぼスペック通りの結果が得られたといえるでしょう。
     
    PowerSolarの真価はUSBポートでの充電ではなく、ポータブル電源との組み合わせによって発揮されるようです
     
    この状態で1時間半ほど放置したところポータブル電源が0%から20%まで充電されました。
     
    512Whの20%は約100Whであり、80ワットで1.5時間充電すると120Whなので、ほぼ想定通り充電されたようです。

     

    曇りでも8ワットくらいは得られる

    一方、曇りの日に同じようにポータブル電源の充電をおこなったところ、8ワットから11ワットくらいの出力となりました。
     
    スマートフォンであればそれなりの速度で充電できる出力ですが、512Whを満充電状態にするには10ワットで50時間以上必要な計算であり、不十分な出力です。
     
    色々試してみましたが、薄曇りか本格的な曇りかにはあまり関係なく、太陽が出ているかどうかが出力にとって非常に重要なようです。
     
    雲が多い晴天のときに試したところ、晴れると80ワット以上の出力なのに、日が陰った途端11ワット以下に落ち込むという現象が観測されました。
     
    いかに太陽の恵みが大きいかということでしょう。

    普段使いすると購入価格の元は取れる?

    晴れていれば実測で80ワット以上の出力ということで、普段から使えば購入価格の元が取れるのではないか?と期待する人もいるかもしれません。
     
    そこで、PowerSolarとポータブル電源の購入費の元が取れるのにどれくらい時間がかかるか計算してみました。
     
    基準となる電気代ですが、先月の筆者宅の電気代が287kWhで9,175円でしたので、1kWhあたり9,175 ÷ 287 = 32円とします。
     
    日照時間については、気象庁によると東京では1年に平均で1,926.7時間だそうですので、365日で割って1日あたり5.3時間としました。
     
    PowerSolarからは日照時に90ワットの出力が得られるものとします。
     
    一方、Anker公式サイトでのこれらの機器の価格は、PowerSolarが29,800円、535 Portable Power Stationが59,800円で、合計は89,600円です(いずれも税込)。
     
    すると以下の計算ができます。
     

    • PowerSolarの1日あたりの発電量:90ワット x 5.3時間 = 477Wh
    • PowerSolarで節約できる1日あたりの電気代:32円 x 0.477kWh = 15.3円
    • 機器購入費用の元が取れるまでの期間:89,600円 ÷ 15.3円 = 5,856日 = 16年

     
    というわけで、太陽が出る日に毎日充電し、かつ充電した電気は余すことなく使い切ったとしても、購入価格の元を取るのに16年かかるようです。
     
    さすがにこれだけの期間使うとなると、PowerSolarかポータブル電源のどちらかが元を取るより前に壊れるでしょう。
     
    残念ながら節約のためにこれらの機器を導入するのは現実的ではないようです。

    災害や停電では強い味方に

    一方、これらの機器を持っておくことは、災害などで停電が発生した際の対策として大きな安心感を生むでしょう
     
    535 Portable Power Stationの512Whというバッテリー容量は16.75WhのiPhone13 Pro Maxを30回以上充電でき、災害時のライフラインとなるスマートフォンを長く使用可能な状態に保つことができます。
     
    しかも晴れていれば、PowerSolarは1日に477Whの発電ができますので、スマートフォンのバッテリーを節約しながら使いかつスマートフォンだけ充電する分にはバッテリー切れを起こす心配はないのではないでしょうか。
     
    また、最大500Wの出力が得られますのでパソコンなどの電化製品も使用可能です。小型IHクッキングヒーターであればポータブル電源につないで料理もできます。
     
    Solar Liteの場合は「太陽電池は最後の手段として考えるのが適当」と述べましたが、PowerSolarと535 Portable Power Stationの組み合わせであれば災害時の備えとして第1選択肢になり得ると思います。
     
    災害時の備えがモバイルバッテリーだけでは不安だという人は、ぜひこの2つの組み合わせを検討してみてください。
     
    欠点は大きさと重さです。
     
    PowerSolarは5キログラム、Anker 535 Portable Power Stationは7.6キログラムあり、避難が必要になった場合にこれらよりも優先して持ち出すべきものは他にあるでしょう。
     
    大きな太陽電池パネルを広げるための場所の用意や、盗まれないように見張っておく必要もあり、避難が必要な場合は役に立たないかもしれません。
     
    自宅での備えには役立ちそうですが、避難所へ持っていけるかどうかはわからないと考えておいた方がよさそうです。

     
     
    Source: Anker (1), (2), 気象庁
    (ハウザー)

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    この記事を書いた人

    本職はSoCの設計者。このためPCやスマホのHW/SW両方に造詣が深く、その知見に基づいた記事を執筆している。スマホ歴はiPhone4→(Android)→iPhone XR→13 Pro。

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