MVも登場のApple TV+人気映画「CODA」、なぜ日本では未配信?

    CODA

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    Appleが配給権を購入し、Apple TV+で公開されている「CODA」のミュージックビデオが新たに登場しました。同作品は世界で高い評価を受けており、“質”にこだわるAppleの姿勢をよく表した作品だと言えます。しかし、残念ながらこの映画は日本国内では公開されていません。AppleやNetflixといった大手ストリーマーと、旧来のバイヤーとの間の確執が理由のようです。

    高い評価受け、新たにMVも登場

    Apple TV+で公開されている「CODA」のミュージックビデオが、新たに公式YouTubeに公開されました。ビデオは映画からインスパイアされて作成されたもので、エミリア・ジョーンズの音楽と、手話演劇で名の知られたDeaf West Theatreのメンバーたちのパフォーマンスがフィーチャーされています。
     

     
    耳の聞こえない親に育てられた聴覚のある子を意味する「CODA(Children of Deaf Adults)」として育てられた主人公のルビー(エミリア・ジョーンズ主演)は、学校に通いながら両親の通訳と家族の漁船で働くことが日課です。しかし、高校の合唱部に入部したことがきっかけとなり、ルビーは歌の才能を自身のうちに発見、名門音楽学校を受験することとになります。そうした中で家族への義務感と自分の夢の間で葛藤する主人公を描く物語です。

    なぜ日本では配信されていない?

    ところで本作「CODA」は、Apple TV+で8月中旬より配信が始まっているにもかかわらず、日本では配信が見送られています(海外在住者向けとして日本語字幕は用意されているようです)。
     
    Appleは理由を明らかにしていませんが、映画事情に詳しいニュースサイトHollywood Reportersによると、Appleと他社バイヤーとの間で買い上げ額について確執が起きていることが原因のようです。実は、サンダンス映画祭でAppleが世界配給権を2,500万ドル(27億円)で購入する前から、フランス企業のPatheが各国のバイヤーに対して配給権を販売していたそうです。
     
    もともと本作は、2014年にフランスで公開され高い評価を受けた「La famille Bélier」のリメイクであり、制作費1,000万ドル(約11億円)のうち約600万ドル(約6.6億円)も、イタリアの配給会社Eagleや日本のGaga、ラテンアメリカのSun Distributionなどが、それぞれの地域で公開するために捻出したものでした。
     
    失敗するか成功するか分からないリスクを背負って投資したにもかかわらず、成功が固いとみるや、Apple TV+やNetflixといったストリーマーやメジャースタジオといった世界的なバイヤーが「強制買い戻し条項」をちらつかせ、わずかなキル・フィー(相殺するための手数料:元の映画の総価値の10%〜15%ほど)を上乗せして映画を掠め取っていく――。こうした状況が、インディペンデント映画の業界モデルを崩壊させかねないのは、想像に難くありません。
     
    先述したラテンアメリカの大手映画配給会社Sun Distributionは「もし我々がこの考え(強制的な買い戻し条項)を受け入れ始めたら、我々は廃業せざるをえないだろう。失敗作のリスクをすべて負い、ヒット作のアップサイドを制限することを意味するからだ」と語り、ストリーマーの介入の仕方に強い懸念を示しています。イタリアの配給会社Lucky Redのバイヤー責任者も「これは詐欺だ」と強く非難します。
     
    Gagaからのコメントは紹介されていませんが、こうした状況を同社が快く思っておらず、Appleと揉めている(た)がゆえに、Apple TV+で配信されていないのは明白です。今後どのような形で公開されるのかは不明ですが、バイヤーにとって死活問題であるだけでなく、消費者までもが迷惑を被っている状況を思うと、ストリーマーには節度ある行動を心がけて欲しいものです。
     
     
    Source:iMore,Hollywood Reporters
    (kihachi)

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