【Twitter】RTボタン“生みの親”「4歳児に銃を渡すようなもの」と開発を後悔

    twitter retweet

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    SNSの多くには記事や画像のシェア機能が備わっていますが、Twitterにもフォロワーとツイートを共有する「リツイート(RT)」機能が存在します。この機能について、“リツイートボタンの生みの親”が開発を後悔していることがBuzzfeed Newsのインタビューで明らかになりました。

    弾丸を込めた銃を4歳児に手渡してしまった

    日本で4,500万人、全世界で3億2,600万人の月間アクティブユーザー数(2018年10月時点)を抱えるTwitterは、ドナルド・トランプ米大統領も積極的に情報発信の場として活用するなど、プラットフォームとして大きな影響力を持っています。
     
    とりわけフォロワーのタイムラインにツイートを共有する「リツイート」は、強い拡散力を持つために実際の社会を動かすきっかけとなることも珍しくありません。
     
    しかし、リツイートボタンを生み出した開発者のクリス・ウェザレル氏は「弾丸を込めた銃を4歳児に手渡してしまったのかも知れない」と、その影響力について極めて悲観的な態度を見せます。実際、リツイートでツイートが加速度的に拡散していくことにより、結果的に“炎上”と呼ばれる望まない事態に発展していくケースがしばしば見られます。
     
    SNSが内包する問題点の象徴とも言えるリツイート機能を見直すべきだと考えるのは、ウェザレル氏だけではありません。Buzzfeed Newsによると、ジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)やリツイートボタンの開発当時プロダクトチームを率いていたジェイソン・ゴールドマン氏も、リツイートの方向性については頭を悩ませているようです。

    リツイートボタン実装で地獄の釜が開いた

    2006年からサービスを開始したツイッターには当初、リツイート機能が実装されていませんでした。ユーザーが他人のツイートをコピー&ペーストし、引用であることを示す「RT」「QT」といった文字列を手入力で追加してツイート(現在の“非公式RT”に相当)していたのです。ユーザーのこうした行動にTwitter側が目をつけ、リツイートに公式対応したのは2009年でした。
     

    twitter 非公式RT クソリプ

    リツイートボタンが公式実装される以前は、わざわざ相手のツイートをコピーして「RT」と入力、コメントを添えていた


     
    ウェザレル氏によると、リツイートボタンの実装にあたって社内では当初、啓発的な用途で使われるような明るい未来が展望されていたそうです。ところが蓋を開けてみると、手軽にリツイートできるようになったことで、ユーザーはほとんど何も考えずにツイートをシェアするようになりました。「RT」と手入力していた頃に見られた“熟慮”は失われ、代わりに“衝動性”が台頭したのです。
     
    Buzzfeed Newsはこうした事態について「リツイートボタン実装以前、Twitterは全体として友好的な場だった」ものの、実装以後は「地獄の釜の蓋が開き」無秩序が広がった、と表現しています。

    象徴的なゲーマーゲート論争

    いわゆる“オタク”がゲームで追求してきた原理主義的な表現の自由と、フェミニストが問題視してきた女性差別が複雑に絡み合った「ゲーマーゲート論争」が、欧米では2014年頃より持ち上がります。異なる価値観同士の衝突は誹謗中傷合戦に発展していきますが、この時“主戦場”となったのがTwitterでした。
     
    ウェザレル氏はゲーマーゲート論争で、リツイートボタンが問題の根源であることに気づいたと述べます。リツイートは多くの場合、理性的な熟議ではなく、徒党を組む目的や対象を攻撃するための“晒し上げ”として使われていました。
     
    ブロガーのアンディー・バイオ氏が行った調査では、72時間で発信されたゲーマーゲート関連のツイート316,669件のうち、69%にあたる217,384件をリツイートが占めていたそうです。
     
    デマの拡散や憎悪の焚き付けを目の当たりにし、ウェザレル氏は「これは我々が考えていたものと違う」と当時感じずにはいられなかった、とBuzzfeed Newsに語っています。「(ゲーマーゲートで)これは異常行動を示す小集団ではないと気づき始めた。おそらく人間一般の振る舞いなのだろう。心の底からゾッとしたよ」

    リツイート機能は今後どうなるのか

    リツイートボタンをTwitterが今後どうしたいかは不明です。
     
    リツイート機能がこれほどの魔力を持っているのであれば、ユーザーを自分たちのプラットフォームに釘付けにするために、営利企業であるTwitterがリツイートボタンを廃止する可能性は低いでしょう。慢性的な赤字に悩まされていたTwitterは、2018年にようやく通期で初の黒字を達成したばかりです。
     
    ウェザレル氏もリツイートボタン実装以前に巻き戻すのは良いアイデアではないと述べます。ツイートが拡散される(横に広がっていく)ことがないので、ユーザーは多数のフォロワーを抱えるアカウント(アルファツイッタラー)のツイートに一層注意を払うようになり、結果としてユーザー同士のパワーバランスが不均衡になってしまうためです。
     
    その代わりにウェザレル氏は、ひどい投稿を繰り返し拡散するアカウントはリツイートに制限を設ける「聴衆の整理」や、リツイート回数の上限を設けて過剰な拡散を防ぐ仕組み(Facebook傘下のWhatsAppが19年初頭より実装)を構築してもいいのではないか、と提案しています。
     
    こうした統御のアイデアはウェザレル氏特有のものではなく、ジャック・ドーシーCEOの「やりとりされる内容を最大限にまで健全化する」との考えとも一致します。Twitterとしては、無秩序なプラットフォームを提供するつもりはなく(それこそが自由だと考えるユーザーもいるでしょうが)、ユーザーの行動をある程度掌握したいということなのでしょう。
     
    ひとまずユーザーに求められているのは、リツイートする前に立ち止まってよく考えること、引用リツイート(コメント付リツイート)は画面の向こうの相手を想像してから行うよう心がけることでしょうか。
     
     
    Source:Buzzfeed News,TechCrunch,WIRED
    (kihachi)

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