2019年のスマホ世界市場、米のHuawei禁輸政策でマイナス成長の見通し


 
Huaweiに対する米国の禁輸政策により、2019年における世界スマートフォン市場は、マイナス1%成長になると調査会社カウンターポイント・テクノロジーが予想しています。

1%成長予測が一転して1%マイナス成長予測に

カウンターポイントは2019年の世界スマホ市場において、以前は5Gの初期投資により約1%成長すると予測していましたが、米国によるHuawei禁輸政策により、一転して対前年比でマイナス1%の成長になるとの新たな予測を明らかにしました。
 
台数に換算すると、2018年の15億台から、2019年は14.8億台になるというのが同社の予測です。

禁輸政策でHuaweiが受ける4つの影響

またカウンターポイントは米禁輸政策がHuaweiに与えるダメージを、影響の大きい順で4点挙げています。
 
【ARMの取引停止】HuaweiのスマホはすべてARMアーキテクチャを採用しています。すでに設計を終えた現在のチップセットへの影響はありませんが、2019年第4四半期後半以降に採用予定の新チップセットには、ARMのライセンスが使えません。これにより、中国国内のスマホ事業にも影響が出る見通しです。
 
【GoogleのAndroidサービス制限】HuaweiはGoogleが提供する主要ソフトのGMS(Google Mobile Serviceの略。Google検索、Google Chromeブラウザ、YouTube、Google Play Store等をまとめたもの)が使用不可能となります。代わりにオープンソースとして提供されているAOSP(Android Open Source Projectの略。電話など端末の一般的機能のみが含まれる)を使わざるを得なくなりますが、GooglePlay StoreやGoogleの代表的アプリであるYouTubeやGmailは使えません。ユーザーは非正規ルートでのアプリのダウンロードや、他のアプリサイトを探すことを余儀なくされます。中国市場ではもともとGMSは禁止されているため大きな影響はありませんが、欧州、日本、中南米での影響は大きいと見られています。
 
【RF部品】Qorvo、Skyworks、Broadcomの各社のRF(高周波)部品は、LTEを採用するHuaweiの高級機では、代替が困難です。
 
【Intel製サーバー用チップ】Huaweiは、クラウド及び企業向けのインフラ用途のサーバーについて、Intel製のチップに依存しています。

欧州市場での影響が一番大きい

以下のグラフからわかるように、Huaweiの売上の49%は中国市場で、51%が海外市場です。海外市場では欧州市場が23%を占めるため、この市場での影響が一番大きいものになると予測されます。
 

 
Huaweiの小会社HiSiliconが、AP(アプリケーションプロセッサ)つまりSoCチップセットを製造しているため、AP不足は当面はHuaweiに影響を与えないものの、ARMとの取引停止により、将来のチップセットが設計できなくなります。

高価格帯スマホの売上減が研究開発予算に影響

もうひとつの重要な点は、400米ドル以上の価格帯のスマホが受ける影響です。この価格帯はHuaweiのスマホ出荷全体の18%に過ぎませんが、もっとも利益がとれる価格帯です。この価格帯での売上が落ちれば、Huaweiのマーケティング能力や将来に向けた研究開発の予算を削ぐことになると、カウンターポイントは予想しています。
 

制裁が長引けばスマホ事業切り離しの可能性も

Huaweiに残された選択肢は、米国が求める条件を受け入れるか、あるいは独自の道を切り開くかの2択です。機器部門は独自のビジネスを採用する可能性が高いものの、スマホについてはそれだけでは生き残りが難しく、制裁が長引けば、部門を切り離すか売る以外の方法はないというのが、カウンターポイントの見方です。
 
長期的には、同じ価格帯と地域で競合しているSamsung、Oppo、Vivo、Xiaomiは、Huaweiの売上減少による恩恵を受けるものの、市場全体としてはマイナスに落ち込む可能性があるとも述べています。

 
 
Source:Counterpoint Technology Market Research
Photo:Pixabay
(lunatic)

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