「Apple News+」は出版業界の救世主となるか?


 
3月末に発表された「Apple News+」は、月額9.99ドル(約1,113円)で利用できるバンドルサービスですが、契約した出版社のジャーナリストたちは新サービスが業界の苦境を救ってくれるのかその動向を注意して見守っている、とVanity Fairが伝えています。

出版社はネガティブな影響を懸念

Apple News+」は、Appleが2018年春に買収したオンライン雑誌購読サービスのTextureがもととなっています。Netflixの雑誌版とも呼ばれたTextureは、定額料金を毎月支払うことで200以上の雑誌が読み放題のサービスでした。
 
Textureのサービス終了が発表され、米国とカナダで提供が始まった「Apple News+」ですが、コンテンツ契約を交わした出版社のジャーナリストたちはAppleの新バンドルサービスが出版業界にネガティブな影響をもたらすのではないかと懸念しているといわれています。
 
現地時間の3月27日にマンハッタン島最南端のロウアー・マンハッタンで催された「Apple News+」のサービス開始を祝うパーティには、Appleと契約したNew York、GQ、Time、Esquire、The Atlanticなどの大手雑誌やデジタルメディアの人物たちが集まったとされていますが、その際「我々はパーティにいるのか、それとも通夜にいるのだろうか?」との質問が投げかけられたといいます。

大規模メディアにとっての利益は未知数

「Apple News+」は、Appleが50%の利益を得るという条件のもと、プラットフォームに掲載してもらえるというものですが、大規模メディアにとってこれが有益であるかどうかは未知数であるといわれています。
 
「9,000人ほどの購読者しかいない比較的小規模なメディアであれば、Appleと組むことで何も失うものはない」と、あるメディアの役員が語ったとされています。
 
これまでそれぞれのメディアに個別に購読料を支払っていたユーザーが、ニュースが読み放題の「Apple News+」に登録した場合、出版社の利益が失われるのは目に見えている、との意見があります。メディア会社Skiftの創業者のラファット・アリ氏は、皮肉を込めて「今出版社に個別の購読料を支払っている人は、すべてApple News+に登録し直したほうがいい。それでやっと出版社は自分たちの愚かさに気づくから」とTwitterでコメントしました。
 


 
また、個別の購読サービスが失われると、購読者との直接的なやり取りができなくなり、データや顧客関係がすべてAppleに吸収されることにもなりかねません。
 
これらを考慮すると、The Washington PostやThe New York Timesが「Apple News+」に参加しなかったのもある意味頷けます。
 
出版業界の中には判断するにはまだ早すぎるとの意見もあり、「初期のSpotifyを見ているようだ」と、大手デジタル出版社の編集者はコメントしています。
 
 
Source:Vanity Fair
(lexi)

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この記事を書いた人

ARラボ出身の猫愛好家。往年のMacユーザーで、iPhone使用歴は10年以上。

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