GoogleがFossilのスマートウォッチ事業を買収もWear OSは苦戦か
米ファッション・ブランドFossil Groupは現地時間1月17日、同社のスマートウォッチ技術に関する知的財産(IP)を、4,000万ドル(約43億9,100万円)でGoogleに売却すると発表しました。
これを受けてFossilの株価は8%上昇、「これでWear OSは救われる」「GoogleはいつPixel Watchを発表するのか」というコメントが相次ぎましたが、米メディアArs Technicaのロン・アマデオ氏は「今回の合意はWear OSが抱える問題を解決しない。Pixel Watchにもつながらない。Wear OSの未来が明るくないという状況は変わらないだろう」とばっさり切り捨てています。
HTCのスマホ事業買収とは比較にならない
アマデオ氏はまず、今回の買収規模が非常に小さく、一部のメディアが引き合いに出している、GoogleによるHTCの一部スマートフォン事業買収とは金額面で比べものにならないと指摘します。2018年に完了した買収の金額は約10億ドルでした。
このGoogleによるHTCのスマホ事業買収が、のちのPixelスマホの開発につながったとみられているため、Fossilのスマートウォッチ事業買収イコールPixel Watch登場という観測が浮上したものと思われます。
しかしアマデオ氏は、Googleハードウェア部門はこれまでにスマホ、タブレット、ラップトップ、スマートスピーカー、スマートディスプレイ、Wi-Fiルータ、VRヘッドセット、Chromecastとアクセサリをリリースしているものの、これまで一度もスマートウォッチに取り組んだことはないとし、それは「Wear OSに問題があるからだ」と述べています。
Wear OSの最大の問題は「優れたSoCの欠如」
同氏によれば、Wear OSの最大の問題は、優れたシステムオンチップ(SoC)サプライヤーの欠如です。Wear OS陣営ではQualcommがほぼ唯一のSoCサプライヤーですが、同社はスマートウォッチ市場にはほとんど関心がないようだ、とアマデオ氏は指摘します。
QualcommはこれまでSnapdragon 400、Snapdragon Wear 2100、Snapdragon Wear 3100の3つの主要チップをスマートウォッチ向けに提供してきましたが、内容はほぼ同じです。いずれも28ナノメートルプロセスで製造されたCortex A7 CPUを使用しているのです(これは2013年当時の最新スマホに搭載されていたもの)。つまりQualcommはスマートウォッチ向けには真剣にチップを開発しておらず、同じコアを使いまわしているということです。
Wear OS以外のOSを搭載したスマートウォッチの代表格といえばAppleのApple WatchとSamsungのGalaxy Watch(OSはTizen)ですが、両社とも社内でスマートウォッチのために優れたSoCを開発しています。
アマデオ氏は、どんなに優れたハードウェアやソフトウェアを開発しても、大昔のSoCを使っていたら意味がないとし、Googleが高性能で競争力のあるスマートウォッチ用SoCを確保しない限り、「Wear OSを救うことはできない」とまとめています。
Source:Nasdaq,Ars Technica
Photo:Fossil
(lunatic)