「iPhoneが米中貿易摩擦の原因、は間違い」米研究者が指摘

    iPhone7 iFixit

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    iPhone中国製だから、中国からの輸入品に高い関税をかける」という考えは間違っている、とする研究結果が発表されました。iPhoneの部品を製造するサプライヤーの本社所在地で分析すると、中国企業が得ているのはたったの947円で、多くはアメリカと日本の企業の取り分となっていました。

    中国との貿易赤字解消に躍起なトランプ政権

    中国からアメリカにiPhoneが輸入される時、工場出荷時点での価格が取引額として記録され、アメリカの対中貿易赤字を拡大させています。
     
    アメリカのドナルド・トランプ大統領は、貿易赤字の解消を目的として、中国から輸入される製品に高額な関税を課す方針です。iPhoneについては、選挙期間中から名前を挙げて標的にしてきました
     
    しかし、中国にある巨大なiPhone組み立て工場の所有者は台湾企業のFoxconnで、中国は割安な労働力を提供しているにすぎません。

    iPhoneの製造原価をサプライヤーごとに分析

    米シラキュース大学情報学部のジェイソン・デドリック教授らの研究グループは、iPhone7に使われている部品の価格を、部品を製造するサプライヤーの本社所在地で分析した結果を発表しました。
     
    iPhoneには多くの部品が使われていますが、ディスプレイやプロセッサ、カメラやストレージなどの主要部品を製造しているのは多くがアメリカ、日本、韓国や台湾の企業で、中国企業が製造しているのはバッテリーだけでした。

    iPhoneの原価内訳、最大は日米企業へ

    IHS Markitによると、iPhone7の製造原価は237.45ドルですが、そのうち主要部品を製造するサプライヤー企業の本社所在地別に見ると、内訳は以下のとおりで、日本企業とアメリカ企業が上位に並んでいます。
     
    iPhone7 製造原価 The Conversation
     

    • アメリカ:68.69ドル(約7,689円)
    • 日本:67.7ドル(約7,578円)
    • 台湾:47.84ドル(約5,355円)
    • 韓国:16.4ドル(約1,835円)
    • 中国:8.46ドル(約947円)
    • ヨーロッパ:6.56ドル(約734円)

     
    iPhone7の32GBモデルの販売価格は649ドルで、製造原価との差額はAppleの利益になるほか、研究開発、マーケティングをはじめとする企業活動に使われます。

    最終製品の取引額だけに注目するのは間違っている

    デドリック教授らは、現代の製造業では、数多くの部品を多くの国々から買い集め、どこかに運んで組み立てたものを輸出するのが一般的であり、最終製品の輸入相手との貿易赤字額だけに注目して高い関税を課すことは、結果的にアメリカの市民や企業の不利益になる、とトランプ政権の貿易政策に警鐘を鳴らしています。
     
    「アメリカでiPhoneを作ればいい」という主張については、多くのサプライヤーの工場がアジア圏に存在しており、アジアで製造するよりもはるかにコストがかかる、と指摘します。
     
    もし、アメリカ国内に工場を作らせるなら、Foxconnの液晶ディスプレイ工場の誘致に30億ドル(約3,350億円)を投じたウィスコンシン州のように、多額の誘致費用も必要になる、と述べています。
     
     
    Source:The Conversation via CBS News
    Photo:iFixit
    (hato)

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