新興国に医療革命を〜スマホで手軽にDNA解析が行えるキット登場

    結核 スマホ dna nokia UCLA

    結核 スマホ dna nokia UCLA
     
    スマートフォンDNAの解析が簡単にできるキットを、アメリカとスウェーデンの研究機関が共同で開発しました。結核など、新興国での難病治療などで期待が持たれています。

    どこでも誰でも検査ができる

    現代の日本ではあまり馴染みのない結核ですが、新興国では進化によって薬に耐性を持つ「薬剤耐性結核」が問題になっています。
     
    しかし、患者の罹患した結核が、どの薬剤に耐性を持つのかは、結核菌のDNAを抽出して測定しないことには分かりません。ところが、新興国――ましてや奥地――の場合、研究所にデータのサンプルを送って結果が届くまでに数週間を要します。仕方なく、トライアンドエラーで薬を試しているうちにも結核はどんどん広まっていき……。
     
    そうした状況を打開するのが、アメリカとスウェーデンの研究機関が共同で開発した、手元にあるスマートフォンでDNAを測定できる特殊なキットです。3Dプリンターでの出力をベースとしたものなので、コストは500ドル(約55,000円)ほどで済むうえ、結果は数時間で判明します。仮に研究所で同じ測定を行った場合、コストは数千ドルにも上ります。

    クオリティも本格的な検査と変わらず

    スピードでもコストでも研究所を上回っている――でも、検査の質は?
     
    「驚くことに、スマートフォンでの画像と研究所でのそれは区別がつかなかった」と語るのは、研究を主導したストックホルム大学のマット・ニールソン教授です。もちろん、普通のスマートフォンのカメラでは通常、人間の髪の毛より数千倍も小さいDNAを測定することはできません。
     
    結核 スマホ dna nokia UCLA
     
    しかし、研究チームは酵素を用いてDNAを大量に複製しカメラでも確認できるようにしたうえで、塩基配列によって色が変わる特殊な薬剤に浸し、ダイオードで光を照射し、薬に耐性を持つ結核株かどうかを見分ける技術を開発しました。耐性の有無がスマートフォンのディスプレイを通して、色によって分かるという仕組みです。
     
    また同キットは、結核以外にもガン治療などの分野でも活用が期待されています。

    課題も多いが未来は明るい

    ちなみに、このキットの前身は2015年にもiPhone Maniaで「DNAを測定できるマイクロスコープ」として紹介したことがあります。
     

    結核 スマホ dna nokia UCLA

    2013年に発売されたNokiaのLumia 1020。巨大なセンサーが目立つ。4年経った今でも画素数で対抗できる大手ベンダーのスマホは見当たらない


     
    現時点では、4,100万画素を有するNokiaのLumia 1020に対応したキットであり、一般的な1,200万画素程度のスマートフォン向けではないこと、一度に1つの病気しか測定できないことなどの課題がありますが、誰もが手にしているスマートフォンと、医療用キットを組み合わせるという技術は、今後も注目を集めるテーマであることには間違いありません。
     
    医者に通わずとも、スマートフォンで診断が完結する時代は訪れるのでしょうか。
     
     
    Source:BBC,QUARTZ
    (kihachi)

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    この記事を書いた人

    丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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