戻ってきて、ジョブズ!「ティム・クック氏のAppleはつまらない」元従業員が激白

ティム・クック最高経営責任者(CEO)にバトンタッチして、Appleはつまらない組織に成り下がってしまった――元エンジニアの発言が、その過激さも相まって物議を醸しています。
昔のAppleは開拓時代のようだった!
CNBCのインタビューを受けたのは、Appleでエンジニアとして務めていたボブ・バロー氏です。彼によれば、スティーブ・ジョブズ氏亡き後のAppleは良くも悪くも組織立ってしまい、ダイナミックさが失われてしまったそうです。
「2007年のAppleは、組織的には西部の開拓時代(wild west)でした」とバロー氏。「私はマネージャーとして雇用されましたが、最初の2年はマネージャーとしての中核業務には携わっておらず、複数のプロジェクトで並行して働いていました。なぜならば、組織ではなく、プロジェクトこそが優先されていたからです」と同氏は述べ、ジョブズ氏が存命していた頃のAppleは、組織が優先されがちな企業とは一線を画する存在だった、と懐かしみます。
「これは私の仕事じゃない」というのとは真逆のあり方です。それは「役割も、役職も、誰にレポートするかも関係なし。解決できる問題は何だってやってのけるために俺はここにいる」というものでした。野生的でしたが、それでもやり甲斐はありましたね。自分のやったことすべてが製品に最大限の影響を与えるんですから。
ところが、ひるがえってティム・クック氏がCEOを務める現Appleに目をやると、いつの間にかそこにあったのは、バロー氏がApple入社以前に働いていたPalmのような企業形態でした。
Palmでの仕事は、高度に組織だっており、トップダウンで責任の所在は明白。それぞれの人間が明確な責任を持っていることに疑いはなく、そこからはみだすことも滅多にありません。問題を解決するために誰かに助けを求めれば、「私の仕事じゃない」と返ってくるのは当たり前でした。
クック氏が統括するAppleを去った彼は現在、Blit Itという3Dプリンターの企業を立ち上げています。
売り上げを倍増させたクック氏
もっとも、Appleを作り上げたのがスティーブ・ジョブズ氏であるならば、Appleを更に巨大にしたのがティム・クック氏であることに疑いの余地はありません。
事実、ティム・クック氏の指揮の下、Appleはジョブズ氏が亡くなった2011年の1,082億ドル(約12兆4,400億円)から2016年の2,157億ドル(約24兆8,000億円)へと売り上げを倍増させ、世界でもっとも潤沢な資金を有する企業へと躍進を遂げています。
バロー氏はそのことを認めつつ、ティム・クック氏を、Microsoftの創業者ビル・ゲイツの右腕として知られ、CEOとしても辣腕を振るったスティーブ・バルマー氏のようだとする見方に賛同します。バルマー氏はMicrosoftの売り上げを3倍に増やしたものの、その後はAppleやGoogle、Facebook、Amazonの台頭を受け、ソフトウェア業界でのドミナンスを維持できませんでした。
昔を懐かしむ声~今のAppleはビジョンがない?
また、昔のAppleを懐かしむ声はバロー氏以外からも挙がっています。
例えば「iPodの父」と呼ばれるトニー・ファデル氏は、ジョブズ氏がiPhoneのプロトタイプである「P1」と「P2」とをプロジェクト同士で競争させたのではないか、という質問に対し、「決してそんなことはない。我々は一緒になって、最高の解決法を探し求めていた。スティーブはすべての可能性を試すよう要求したんだ」とTwitter上で答えています。ファデル氏はAppleの内部争いで社を去った、とも一部で言われています。
Wrong!!! There was never a competition. We, together, were searching for the best solution. Steve asked us to test all the possibilities… https://t.co/DNkT2WZnqV
— Tony Fadell (@tfadell) January 11, 2017
こうした発言の裏には、Bloombergが指摘したような、「2つかそれ以上の競合するアイデアの間を、Appleのマネージャーがフラつくようになっている。これはデザイナーやエンジニアが一度に複数のコンセプトにもとづいて仕事をしなければいけないことを意味する。かつて、マネージャーは確固たる1つのビジョンを推し進めていた」という見方が、今のAppleに対してあることは特筆しておきたいところです。
つまり、ティム・クック氏時代のAppleは、方向性を見失った結果、明確なビジョンを打ち出せずに右往左往しているのではないか、というわけです。それは、出口の見えないProject Titanからも明らかと言えるかもしれません。
時には血も涙もない独裁者のように見られたスティーブ・ジョブズ氏でしたが、そうした不世出の人物だったからこそ、Appleが「Appleらしさ」を保っていられた、ということなのでしょう。
Source:CNBC
Photo:Flickr-Ben Stenfield
(kihachi)