同じサイズでエネルギー密度2倍のリチウム充電池、2017年にスマホ搭載へ

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米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究室から誕生した新興企業が、現行のリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度を実現する技術を開発、2017年には商品化する計画であることが明らかになりました。

負極に極薄リチウム金属フォイルを採用

MIT卒のキチオ・フー氏が2012年に創業したSolidEnergy Systemsが、エネルギー密度2倍を実現しつつ、現行のリチウムイオン電池と同じくらい安全かつ長持ちするリチウム充電池を開発しました。
 
新開発の電池は、一般にリチウムイオン電池の負極(アノード)に用いられているグラファイトを、エネルギー密度が高い、極薄のリチウム金属フォイルに置き換えることで、電池容量を大幅に上げることに成功しています。
 
この極薄リチウム金属フォイルは、従来のリチウム金属アノードの約5分の1の厚みしかなく、他のアノード素材であるグラファイトやカーボン、シリコンと比べてもはるかに軽量かつ薄型です。そのため現行の充電池と同じエネルギー密度であれば、電池の大きさは2分の1のサイズで実現可能です。

11月にドローン、来年はスマホ、2018年には電気自動車へ

2015年10月にSolidEnergyは、エネルギー密度2倍のリチウム充電池のプロトタイプで実際にスマートフォンを動作させ、投資家らから1,200万ドル(約12億円)を超える出資を受けました。
 
同社はまずこの11月に、新リチウム充電池をドローンに搭載します。2017年初めにはスマートフォンおよびウェアラブル端末に、2018年には電気自動車への搭載を計画しているとのことです。
 
来年商品化されるとなれば、機能やデザインの大幅刷新が期待される、2017年発売見込みのiPhone8にも、この新型電池が採用されるかもしれません。

金属リチウムの二次電池への採用を実現

金属リチウムの化学活性はきわめて高く、充電の過程で負極にリチウムのデンドライトが析出・成長し、電池を急激に劣化させたり、最悪の場合破裂・発火させたりなど安全性に問題があるため、一次電池のアノード材料としては使用されているものの、これまで二次電池(充電池)には採用されませんでした。
 
SolidEnergyは、極薄のリチウム金属フォイルを薄い固体電解質でコーティングし、化学反応時に高温にならないようにしました。また非可燃性の新しいイオン液体電解質を開発、負極のリチウム金属と危険な反応が起こるのを防ぐ対策をとっています。
 
 
Source:MIT
(lunatic)

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この記事を書いた人

元某業界新聞社の記者。その後フリーライターとして各方面で執筆、英日翻訳家としての著書も多数。2014年から本メディアでライター、編集記者として活動中。アメリカ在住(現在は日本に滞在中)。iPhone使用歴は12年以上。

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