ジョブズにカリグラフィーを教え、コンピュータ業界を変えた伝説の神父、83歳で逝去

アップル フォント

アップル フォント
 
今のコンピュータのフォントはこの男から生まれたと言っても過言ではないでしょう。スティーブ・ジョブズ氏にカリグラフィー(書法)を教え、Macが美しいフォントを採用するきっかけを作ったRobert Palladino氏が83歳で亡くなりました。

あの有名なスピーチに出てきた授業

最近ではそこまで格差も感じなくなりましたが、以前はMacと言えば、Windowsにはない美しいフォントで有名でした。筆者もフォントと画面の解像度が美しいというだけで、大学のコンピュータルームでは敢えてMacを使っていたものです。
 
ところで、ここまでアップルがフォントにこだわるきっかけは、スティーブ・ジョブズ氏が大学(リード・カレッジ)を退学したあともカリグラフィーの授業にコッソリ忍び込んでいたから、という逸話を知っているユーザーも多いのではないでしょうか。

当時、自分の人生のなかでこれが実際に役立つとは思いもしませんでした。しかし10年後、最初のMacintoshをデザインしているとき、ふと全てが蘇ってきたのです。私達はその全てをMacに詰め込みました。Macは美しい書体を有した初めてのコンピュータになったのです。
 
もし、私が大学であの授業に飛び入りしていなかったら、Macには多数の書体も、字体間を一定幅にする機能もなかったでしょう。そしてWindowsはMacを単にコピーしたものなので、パソコンがこういった特徴を持つことはなかったかも知れません。もし、大学をドロップアウトしなかったら、カリグラフィーのクラスには参加することもなく、パーソナルコンピュータが今あるような美しい書体を持つことはなかったでしょう。
 
もちろん、大学にいた頃には点と点をつなげて前に進むことは不可能でした。でも10年後に振り返ってみると、とても明確に理解できるのです。

 

 
スタンフォード大学でのジョブズ氏のスピーチ「Stay Hungry, Stay Foolish(ハングリーであれ、愚か者であれ)」の有名な一節ですね。そして当時、このクラスを受け持っていたのが、Robert Palladino氏だったのです。カトリックの神父であるPalladino氏は、1969~1984年までリード・カレッジでカリグラフィーを教えており、1972年に「忍び込んでいた」ジョブズ氏とはちょうど時期が重なります。
 
その後Palladino氏が特別顧問としてアップルに招聘されるようなことはありませんでしたが、キリスト教系メディアのNational Catholic Registerで同氏は、「彼は私のクラスに参加して、文字のフォルムに強い関心を持っていた…(略)…彼は1年後に戻ってきて、私のギリシャ文字に興味があると話していた」と当時を述懐しています。
 
ただし、コンピュータ業界にこれだけ偉大な業績を残しながら、彼自身はコンピュータを持つことも使うことも生涯なかったそうです。
 
 
Source:Apple Insider
(kihachi)

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この記事を書いた人

丸みを帯びたiPhone3GSの筐体に惚れ込み、Apple信者を誓ったのも今は昔。2014年から始めたライター業がきっかけで、気づけばXiaomiやHuaweiなど中華スマホにも手を出す浮気症に。

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