AppleのAI戦略:Googleからの引き抜きで急加速
人工知能(AI)の開発を加速させるべく、このところAppleがGoogleから社員を大量に引き抜いているそうです。自動運転車プロジェクトが頓挫しただけでなく、仮想現実(VR)事業の見通しも明るくない中で、AppleがAIに賭ける思いは相当なものがあります。
判明しているだけでも36人を引き抜き
テック企業の関心はこの数年で、すっかり拡張現実/仮想現実(AR/VR)からAIへと移行しました。MicrosoftやGoogleに遅れまいと、AppleもAI開発競争に邁進(まいしん)しているとされています。
そうした観測を裏付けるかのように、最近に入ってAppleがAIの専門家の雇用スピードを加速させており、Googleからも技術者を大量に引き抜いていることが分かりました。
例えば、Appleがスイスに設けたAI特化の技術開発センター「Zurich Vision Lab」では、少なくとも36人がGoogleから引き抜かれた人材であることが判明しています。
2013年には構想していた?
これまでの報道でも、Appleは電気自動車Apple Carの開発に携わっていた人材の一部を、AI開発に割り当てているとされてきました。
搭載を予定していた自動運転システムには、どのみちAIの画像認識技術が不可欠だったため、プロジェクトを放棄しても、Appleにとってすべてが無駄になったわけではありません。
それどころかFinancial Timesによると、Appleは2013年の時点ですでにニューラルネットワーク(人間の脳に張り巡らされた神経回路を模して開発されたAI)の開発に強い関心を抱いていたそうです。
音声アシスタントのSiriが登場したのは2011年ですが、そのわずか2年後には、今のChatGPTのような対話型AIの構想を練っていたのは驚くべきことです。
一刻も早く独自開発したいはず
VR事業が業績の足を引っ張っているMetaだけなく、鳴り物入りで登場したAppleのVision Proもいい噂は聞こえてきません。最近もVision Proの出荷台数予定を半減させたことが報じられたばかりです。
そんなAppleにとって、AI事業の確立は急務といっても過言ではありません。同社の焦りは、今年登場するiOS18に生成AI機能を採用するべく、ChatGPTを開発するOpenAIとの交渉を行っていることからも明らかでしょう。
ライバル企業の手を借りず、一刻も早く独自開発でのサービス提供にこぎ着けたいAppleの思いを踏まえると、Googleからの積極的な人材引き抜きも納得できるものがあります。
Source:Financial Times