格安SIMカード/MVNOってなに?

    格安SIMカードQ&A 初心者ガイド

    格安SIMカードをうまく使い倒す方法は、格安SIMの仕組みや特徴を知り、メリットとデメリットを把握した上で使えば、大きく通信費を節約した上で、日々の利用で困ることはありません。聞きなれない言葉も多くあると思いますが、わかりやすくQ&A形式でまとめておりますので、是非参考にしてみてください。

     

    格安SIMってそもそも何?

    「格安SIMなら月々1,000円でスマホが持てる!」などの宣伝をよく目にするようになりました。しかしそもそもこの格安SIMとはなんなのでしょうか。なぜこんなに安いのでしょうか。
     
    現在、大手携帯通信会社が提供する一般的な料金プランは月額7,000円程度に設定されています。その価格を大幅に下回る1,000円、場合によっては500円程度という月額料金で通話やデータ通信を利用できるのが格安SIMです。格安SIMはMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる通信企業によって販売されており、この格安SIMをスマートフォンに入れることでMVNOの提供する格安料金での利用が可能になります。

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    MVNOとMNOとは

    格安SIMを理解して、賢く使うにはMVNOとMNOの関係を理解する必要があります。MVNOは「仮想移動体通信事業者」と呼ばれ、MNO「移動体通信事業者」から通信帯域を借りて仮想的な通信事業者となります。具体的に言えば、NTTドコモやau、ソフトバンクがMNOにあたり、これら業者がMVNOへと通信帯域を貸し出しています。
     
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    MNOは基地局建設やネットワークの構築、維持に莫大な費用をかける必要があるため、ドコモやソフトバンク、KDDIのような巨大企業である必要があります。一方でMVNOはそこから帯域を借りるだけなので、企業規模は小さくてもよく、すでに190社が参入していると言われています。

     

    なんでこんなに安いの?

    ではなぜMVNOが提供する格安SIMはそんなに安いのでしょうか。現在、格安SIMを使えば月々の通話基本料とデータ通信が1,000円〜2,000円程度にできます。またデータ通信だけに限定すれば、月々500円というプランも出現しています。この安さの秘密はMVNOの事業形態にあります。
     
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    MVNOはMNOから通信帯域を借りて、それを利用者に細分化して提供する事業者です。すでに運用されている帯域を借りるため、MVNOは基地局建設などの莫大な設備投資が不要となります。MVNOはMNOから10Mbpsの帯域を月額100万円程度で借りており、これを1,000人に貸せば、サービスの原価は一人当たり1,000円程度になります。また2,000人に貸せば500円、4,000人にかせば250円とサービスの原価をどんどん下げることができます。
     
    しかし価格が安い分、デメリットもあります。少ない帯域に利用者を大量に詰め込めば月額料金は安く設定できますが、その分通信速度は遅くなってしまいます。格安SIMを使いこなすには、メリットとデメリットを十分に把握する必要があります。

     

    格安SIMのメリット、デメリットは何ですか?

    最大のメリットは月額料金の安さ
     
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    現在の格安SIMの安いプランだと、データ通信だけの利用で月額500円程度、通話やSMSも利用するなら月額1,000円程度(データは2GB、通話料別)のプランもあります。大手通信キャリアの設定する料金の10分の1から7分の1の料金はまさに格安SIMの最大のメリットとなります。
     
    2年縛りのないプランで手軽
     
    大手通信キャリアのと契約には2年縛りがつきものですが、格安SIMの契約には長期間の契約を縛るようなプランが少なくなっているのも特徴です。通話を含むプランでは一部で半年以内の解約に違約金を課す場合もありますが、多くの場合で解約時期に縛りがありません。
     
    最大のデメリットは通信速度
     
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    格安SIMは少ない通信帯域を多くの人で分け合うことで、安さを実現しています。そのため通信速度が遅くなることも多くあります。もともと契約プランで通信速度の上限が決まっているものや、月間通信量が少なく設定されオーバーした場合の速度が遅くなるプラン、1日の通信量(超過時は速度低下)が決まっているプランが多くなっています。また通信速度に上限のないプランでも、混雑時に極端に通信速度が落ちてしまうことは頻繁に起こります。これは格安SIMの最大のデメリットとなっています。
     
    初期設定やアフターサービスも期待できない
     
    格安SIMは低料金を実現するため営業費用も節約しています。そのため営業窓口を持たないMVNOが多くなっています。そのため端末修理や契約変更時などのアフターケアは大手通信キャリアよりも貧弱になっています。また通信販売で格安SIMを購入した場合、通信関連の初期設定も全て自分で行う必要があり、これもデメリットと言っていいでしょう。
     
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    ただ、最近は初期設定を解説した動画や書籍も多く出回っています。また相談窓口を設置するなどアフターサービスの充実を謳うMVNOも出現しています(写真はmineoの相談窓口)。このデメリットはMVNOの企業努力によって解消していく可能性もあります。
     
    キャリアメールは利用不可
     
    スマホで使うメールアドレスも@docomo.ne.jpや@ezweb.ne.jpのようなキャリアメールを使うことはできません。キャリアメールを格安SIMのスマホに引き継ぐことはできません。格安SIMのスマホでは独自にフリーのアドレスを取得する必要があり、メールの初期設定等も自分でやる必要があります。慣れない人にはこれも少し高いハードルになるかもしれません。
     
    これら格安SIMのメリット、デメリットを理解した上で、特徴を把握すれば自分にピッタリな格安SIMを見つけることができます。

     

    どんな人が格安SIMを使っているのですか?

    これまでは格安SIMの利用には初期設定の知識や端末の対応周波数の知識、SIMフリー端末やロック解除に関する基本的な知識が必要であったため、「詳しい人」の利用が多かったのも事実です。しかし大手通信キャリアの料金が高止まりを続ける中、一般のユーザーも格安SIMに注目するようになり、またMVNOも設定の説明を動画で配信するなど、一般ユーザーの取り込みを強化したため、今では400万人ほどの格安SIMユーザーがいると言われています。
     
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    またガラケーからスマホに乗り換えたいものの、月額料金が高くなるのを嫌っていた人たちが格安SIMでスマホデビューというケースも出てきています。これには高齢のユーザーも含まれており、すでに格安SIMユーザーは老若男女、スマホに詳しいか詳しくないかを問わない状況になりつつあります。

     

    格安SIMはどんな端末で使えるのですか?

    格安SIMはどのスマホ端末でも使えるわけではありません。使える端末はMVNOがどこの通信キャリアの回線を借りているかによります。ただ、現在あるMVNOは2社を除いて全てドコモの回線を借りて格安SIMを販売しています。そのためドコモが最近販売した端末であれば、ほぼ問題なく格安SIMが利用できるようになっています。
     

    MVNO9ドコモ回線を借りるMVNOで利用可能な端末

     
    auやソフトバンクが販売した端末でドコモの回線を借りているMVNOを利用するにはSIMロックを解除する必要があります。もちろんauの回線を借りている2社の格安SIM(mineo、UQモバイル)を利用する際、au端末はSIMロック解除は必要ありません。しかし現在販売されている端末(中古販売も含めて)も全てがSIMロック解除が可能とはなっておらず、その意味では格安SIMで使える端末には一定の制限があると言ってもいいかもしれません。
     
    追記:2016年3月28日 総務省の規制緩和によりSIMロック解除が義務付けられました。現在持っている端末の購入時期や端末によって出来る出来ないがありますので、現在国内キャリアで契約中の方はお問合せをしてみてください。
     
    一方で海外メーカーが作るスマートフォンの一部は、最初から格安SIMで利用することを前提とした商品もあります。そうした端末はSIMロックがかかっていないため、通信規格が合致していればどこのキャリアの回線を借りるMVNOでも使えます。またiPhoneに関してはiPhone6/6 Plusから国内でもSIMフリー版が販売されており、ドコモの回線を借りるMVNOの格安SIMでは問題なく利用できるようになっています。

     

    利用できるエリアはどこでしょうか?

    格安SIMだからと言って利用可能エリアが狭くなることはありません。ドコモの回線を借りたMVNOの格安SIMならドコモの通信ネットワーク全てが利用可能であり、通話(VoLTE)、3G通信、LTE通信ともにドコモのエリアが利用できます。またauの回線を借りたMVNOであっても同様で、auのエリアの全てで通信と通話が利用できます。
     
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    ただしauの回線を借りたMVNOの場合、データ通信はLTEしか使えないため、データ通信のエリアはauのLTEエリアとなります。またau回線を借りているMVNOではVoLTEは利用できず、通話は従来の方式で行われます(mineoがVoLTE対応SIMの提供予定)。
     
    ソフトバンクの回線を借りているMVNOは現時点(2015年8月時点)でサービスを開始していませんが、ドコモやauと同様に原則として利用エリアが狭くなることはないと思われます。

     

    格安SIMはどんな種類やプランがあるのでしょうか

    格安SIMを提供するMVNOはすでに190社にも達すると報道されています。これだけの会社がそれぞれ顧客獲得競争を行なっているので、プランは豊富に存在します。
     
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    まず格安SIMのプランを大きく分けると、データ通信のみを行うプランとデータ通信と通話を行うプランに分けられます。一般的に月額料金は通話付きのプランの方が少し高くなっていて、通話は従量制の料金制度になっています。
     
    データ通信プランは月間通信量に上限があるタイプと無制限のタイプが存在します。基本的に無制限のタイプは通信速度が低く抑えられており、高速通信を無制限で使うことはできません。一方で月間データ量に上限のあるプランは1GBや2GB、3GB、5GBなどの上限があり、その上限を越えれば追加料金を支払って速度規制を解除するか、月末まで100〜300kbps程度でやり過ごすかを選択します。
     
    これらプランの上限とは別に日々の利用量に制限のあるプランも存在します。1日100MB以上使った場合は当日中の速度が低下するなど、できるだけ多くの人で少ない通信帯域を分け合う工夫がプランに盛り込まれています。
     
    これらプランから自分のスマートフォンの使い方にマッチしたものを選ぶことで、格安SIMはより快適に使えるようになります。

     

    購入した格安SIMはどうやって使うのでしょうか?

    購入した格安SIMはスマートフォンに入れるだけでは利用できません。これは大手通信キャリアのSIMと大きく違う点で、最初にデータ通信用のネットワーク設定をする必要があります。ただしこの設定はそれほど難しいものではなく、MVNOがサイト上で丁寧に解説しており、動画を使って説明していることも多くなってきました。そのためこの設定は慣れない人でも20分程度あれば終わります。
     

    MVNO12 OCNの設定説明ページ

     
    また大手通信キャリアが提供する通信サービスにはキャリアメールサービスも付随していますが、格安SIMにはそのサービスがありません。そのためスマートフォンでメールを使いたい場合は、すでに持っているメールアドレスか、新たに作ったアドレスを端末のメールアプリに登録する必要があります。
     
    なお格安SIMをAndroidスマートフォンで使う場合はGmailを、iPhoneの場合はiCloudメールを設定すれば、スマートフォンとメールが密接に連携するため便利に使うことができます。
     
    通信ネットワークの設定とメールの設定が終われば、ほぼ大手通信キャリアのサービスと同様のサービスが格安SIMでも利用できるようになります。

     

    格安SIMでも使えないサービスはあるのですか?

    どう設定してもキャリアのサービスと同等にならないものもあります。キャリアメールが使えないのは前述の通りですが、キャリアが提供するWi-Fiサービスも利用できません。ドコモのスマートフォンを使っていれば、docomo Wi-Fiが永年無料で利用できるキャンペーンが続いていますが、ドコモから回線を借りているMVNOの格安SIMでもこれを使うには月額1,500円が必要になります。
     
    留守番電話や割り込み通話(キャッチホン)もプランによっては使えない(有料オプション扱いとなる)こともあります。これも端末の設定で使えるようになるものではないので、プラン選びの際に注意する必要があります。
     
    またドコモで販売された端末とドコモ回線を借りているMVNOの格安SIMの組み合わせでは通常の設定でテザリングができません。これは端末の初期設定の問題であり、ドコモ端末のSIMロックを解除してもテザリングはできません。なおauで購入した端末とauの回線を借りているMVNOの格安SIMの組み合わせ、ドコモ以外で購入したスマートフォン(SIMロック解除済み、iPhoneを含む)とドコモの回線を借りているMVNOの格安SIMの組み合わせでのテザリングは可能です。

     

    格安SIMの通信量が足りなくなればどうなるのでしょう?

    格安SIMの月間通信量は低めに設定されていることが多くなっています。これも格安を維持するための手法ですが、実際に通信量をオーバーするとどうなるのでしょうか。
     

    MVNO11 IIJの例

     
    大手通信キャリアの場合と同様にオーバーした時点から通信速度が100〜300kbps前後へと減速されてしまいます。最近のLTEは速ければ50Mbps程度での通信も可能であり、速度で言えば400分の1にまで低下してしまいます。この減速を解除するためには追加料金が必要であり、どうしても速い通信速度を確保したい場合は追加料金を支払う(チャージする)ことになります。

     

    通信制限がかかった場合のアプリやネットの使い勝手はどうなるのでしょうか?

    しかし通信速度が128kbpsに落ちても、実際に何もできないというわけではありません。というよりできることは案外あります。メールやLINEの送受信、掲示板やTwitterの閲覧(文字情報のみ)などではほとんど不便は感じないでしょう。
     
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    しかし画質のいい画像を見るのはストレスが溜まります。全く見られないわけではありませんが、読み込みには相当の時間がかかります。また動画はほぼ見られないと思っていいでしょう。100kbpsでは低画質でも動画は途切れ途切れになってしまいます。またLINE MUSICやApple Musicなどの音楽ストリーミング配信サービスも利用することは難しくなります。こちらも全く使えないわけではありませんが、読み込みに時間がかかり、音質は悪くなってしまいます。
     
    速度が制限されても基本的な利用に問題はありません。また自宅や学校、職場などにWi-Fiがあれば、それを利用することで低速時でも快適に利用できます。