RAMがAI処理をおこなうLPDDR5-PIMが発表に~将来のスマートフォンに搭載?

SamsungのLPDDR5の画像

SamsungのLPDDR5の画像
 
人工知能(AI)はすでにスマートフォンで広く利用されており、翻訳やカメラなど、さまざまな機能の改善に役立っています。しかしながら、AI処理には大きな処理能力と消費電力が必要とされるのがネックです。
 
Samsungが発表したLPDDR5-PIM技術は、RAM自体にAI処理機能を搭載することでこれらの問題を解決するものであり、将来のスマートフォンに搭載されるかもしれません。

AI処理は負荷が大きい

AI処理は最近のスマートフォンでは当たり前のように使われています。
 
その応用範囲は広く、システムパフォーマンスの改善や翻訳、音声認識、カメラ撮影画像の品質向上など、スマートフォンにとってAIはもはや欠かせない存在です。
 
しかしながら、AI処理には大きな処理能力と消費電力が必要とされます。
 
このため、バッテリーで駆動されるスマートフォンにとってAI処理は稼働可能時間の短縮につながる処理であるといえます。

SoCではなくRAM側でAI処理をおこなうPIM

この問題を解決する方法の1つに、Processing-In-Memory(PIM)という技術があります。
 
PIMは、AI処理をシステム・オン・チップ(SoC)やCPUではなく、RAM自体でおこなってしまおうというものです。
 
AI処理に必要なデータは通常RAMに格納されていますが、AI処理のためのデータは非常に大きいため、そのデータ転送のために大きな電力が使われます
 
また、RAMからAI処理をおこなうSoCやCPUまでデータを送るには時間がかかるため、このデータ転送は処理速度を制限する要因にもなります。
 
そこで、SoCやCPUへのデータ転送をやめ、RAM自体でAI処理をおこなうことができれば、これらの問題が解決し、処理速度向上と消費電力低減が実現できるわけです。
 
Samsungはすでにデータセンター向けのHBM-PIMと呼ばれる製品を発表し、実際のシステム上で2.5倍の性能向上と60%以上の電力消費の削減を確認しています。

スマートフォン向けのRAMのPIM技術を発表

さらにSamsungは2021年8月に開催されたハイパフォーマンス・チップに関するシンポジウムであるHot Chips 33において、このPIM技術をモバイル製品向けのRAMに適用したLPDDR5-PIMを発表しました。
 
Samsungは、音声認識、翻訳、チャットボットなどのAIアプリケーションをLPDDR5-PIMで実行した場合、電力を60%削減しながら性能を2倍以上に高められることをシミュレーション上で確認したとしています。
 
Samsungは2022年前半にPIM技術の標準化を完了させることを目指していますが、実際にスマートフォンに搭載される時期については明らかにされていません。

 
 
Source:Samsung via Android Authority
(ハウザー)

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この記事を書いた人

本職はSoCの設計者。このためPCやスマホのHW/SW両方に造詣が深く、その知見に基づいた記事を執筆している。スマホ歴はiPhone4→(Android)→iPhone XR→13 Pro。

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