Apple、Vision Proをネタにしたミュージシャンの最新作を配信停止

ティム・アーノルド 「Start with the Sound」 iHead
 
AppleのVision Proをネタにしたように見える「iHead」を使ったミュージックビデオを公開したミュージシャンの最新アルバムが、Apple Musicだけで配信停止されています。Apple側は問題の楽曲を削除すれば配信すると提案していますが、ミュージシャン側はこの提案を拒否、全曲を配信するよう求めています。
 
【追記】その後、Apple Musicでアルバム全曲が公開されました

 

■3行で分かる、この記事のポイント
1. Apple Musicで、ティム・アーノルド氏の最新アルバムが配信停止に。
2. 原因は架空の製品「iHead」が登場するビデオと、架空の広告。
3. Appleは問題の楽曲の削除を提案もアーティストは拒否、全曲の配信を要求。

Vision Pro発表の4年前に制作した「iHead」が問題に

Apple Musicで、ティム・アーノルド氏の最新アルバム「Super Connected」の公開が停止された原因となっているのは、iPhoneが3台取り付けられたヘッドセット「iHead」が登場する「Start With The Sound」のミュージックビデオと、アルバム中盤に差し込まれる「iHead」のパロディ広告「A Commercial Break」です。
 

 
「Start With The Sound」のミュージックビデオに登場する「iHead」の宣伝という形をとった「A Commercial Break」が「フェイク広告」と判断され、Apple Musicで最新アルバムの公開が停止されています。
 
アーノルド氏によると、「iHead」と「A Commercial Break」は4年前の2019年に制作されており、アルバム「Super Connected」リリースの3週間後にAppleがVision Proを発表した時には大変驚いたそうです。
 
なお、「Super Connected」は、SpotifyやYouTube Musicなどの音楽配信サービスでは全曲が公開されています。
 

 

Apple「問題の曲を削除すれば公開」と提案、アーティストは拒否

Appleはアーノルド氏側に、ミュージックビデオでVision Proが風刺されていること以上に、フェイク広告に問題がある、と説明しているそうです。
 
しかしアーノルド氏は、Appleはこれまで、広告のパロディを含む多くの楽曲がApple Musicで公開されている、と反論しています。
 
アーノルド氏側のアグリデーター(配信仲介団体)によると、Appleは、問題の楽曲を除外すればアルバムを公開する、と条件を提示しているそうです。
 
これに対してアーノルド氏は「この曲はアルバムコンセプトのカギだ」として、引き下がらない構えです。
 

 

Appleにあてた書簡を公開

アーノルド氏は、Appleに作品公開停止の撤回を求めた公開書簡をWebに掲載し、配信停止を撤回するよう求めています。公開書簡には、アーノルド氏のほかにミュージシャン、俳優らが名を連ねています。
 

 
同氏は、「このパロディ広告を聞いて、iHeadという製品が実在すると信じ込む人がいるとは思えない」と語り、Appleはユーモアを理解しようとしていない、と批判しています。

Appleによるパロディは許されて、Appleのパロディは許されない?

アーノルド氏はまた、こうしたパロディを取り締まることは、アーティストがストリーミング会社の方針に沿って作品を制作するようになり、ストリーミング会社がアートを管理し検閲することにつながることが懸念される、と警鐘を鳴らしています。
 
初代Macintoshを映画「1984」のパロディで表現した広告についてアーノルド氏は、インスピレーションを与えてくれた大好きな作品だと賞賛しつつ、「皮肉なことだ」と指摘しています。
 
巨大テクノロジー企業はアーティストのパロディを作るのは許されるが、アーティストが巨大企業のパロディを作るのは許されないのだろうか?と問題提起する同氏は、アルバムの公開停止を再考するよう、Appleに求めています。
 

 

問題の2曲はこちら

マインドコントロール機能を持つヘッドセット「iHead」が登場する、アルバムのオープニング曲「Start with the Sound」のミュージックビデオはこちらです。
 

 
そして、全12曲を収録したアルバムの中間で流れるパロディ広告「A Commerical Break」は、イギリスの人気俳優スティーブン・フライ氏が声優を担当しています。
 

「iHead」が4年も前に制作されていたことに驚き

筆者は、今回問題となっている「iHead」と架空のコマーシャルが2019年に制作されていたことと、AppleがVision Proを発表する3週間ほど前にアルバムがリリースされていたことに驚きました。
 
個人的には、Apple Music以外のストリーミングサービスでアルバム全曲が公開されていることも踏まえると、Appleが「フェイク広告」に過剰反応しているようにも思えます。
 
ちなみに、ミュージシャンからAppleを批判する公開書簡といえば、Apple Musicのサービスが開始された2015年に、テイラー・スウィフト氏が、Apple Musicの無料トライアル期間中に再生されたロイヤルティーを支払わない方針を批判するメッセージを公開しました
 
その後、Appleは方針を転換してスウィフト氏側と和解し、スウィフト氏はApple Musicの広告に何度も出演しています。
 
ティム・アーノルド氏の一件も、穏当な決着を迎えることを願っています。
 
 
Source:Tim Arnold/Medium via 9to5Mac
(hato)

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