米大学院生、PegatronのiPhone組立工場に潜入!!

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アメリカの名門私立大学ニューヨーク大学(NYU)の大学院生であるデジアン・ゼンさんが、昨年夏に上海近郊にあるPegatroniPhone組立工場で6週間働き、その時の体験を米メディアBusiness Insiderに語りました。
 
インタビューは非常に長いものとなっているため、要約してお伝えしたいと思います。

工場には電子機器持ち込み厳禁

ゼンさんは2014年にはBBC、2016年にはBloombergが、労働環境が劣悪だとして取り上げたPegatronの上海工場で、その実態について研究するために工場労働者となって潜入しました。卒業後は中国の人権擁護団体で働くことを希望しています。
 
ゼンさんがまず配属されたのは、iPhone組立の最終ラインである「FATP」と呼ばれる部門で、スピーカーをケースに入れ、ネジ止めするという作業を1日中、ひたすら1,800回繰り返しました。最初はラインの速さについていくのに必死でしたが、慣れてくると目をつむっていてもネジ止めできるようになったそうです。
 
そうなると作業に飽きてきますが、工場内への電子機器持ち込みは一切禁じられているため、音楽を聞くこともできません。おしゃべりはできますが、マネージャーによっては私語を嫌う人もいるとか。
 
もちろん携帯電話の持ち込みも禁止です。入り口に金属探知機があり、ライターを含め金属類は持ち込めません。
 
ゼンさんが働いている間にiPhone7の製造が始まりました。監視の目はさらに厳しくなり、金属探知も強化されたそうです。工場に入る際にはセキュリティチェックを2回も受けなければならなくなりました。

寮は8人部屋、1日12時間を工場で過ごす

工場労働者のほとんどは寮住まいで、寮は工場から車で10分ほど離れた場所にあります。工場と寮を結ぶシャトルバスが出ています。
 
ゼンさんの部屋は8人部屋で、最初は午後7時半スタートの夜勤でした。組立ラインの稼働時間はバラバラなため、作業時間も異なります。
 
約2時間働いて10分の休憩、また2時間働いてから50分の昼休み。その後また2時間の労働、10分の休憩、2時間の労働となり、1日の合計労働時間は8時間です。休憩時間と昼食時間を合わせると、約12時間、工場で過ごすことになります
 

典型的な寮の部屋

残業の拒否権はない

その後残業があるかどうかは日によりますが、必要な場合は拒否権はないそうです。また金曜日の場合残業時間は2時間で済みますが、月から木は2時間半の残業が求められます。
 
しかし基本給が非常に低いため、残量をしないと生活できないケースが多く、結局ほとんどの人が「自ら進んで」残業をするのだそうです。

繁忙期には11日間連続勤務も

ゼンさんが働いていた時期はそれほど忙しくなく、1日8時間、週60時間勤務でしたが、繁忙期になると週60時間を超えるのは当たり前でした。ゼンさんが辞めたあとにiPhone7の量産に突入し、工場でできた知り合いによれば、土曜日だけでなく日曜日の休日出勤も始まりました。話をした男性は11日間連続で勤務したそうです。
 
また長期休暇は繁忙期にはまず取れません。忙しい時期でなくても休暇の理由を聞かれます。あからさまに嫌な顔をされるそうです。
 
離職率は非常に高く、2週間や1ヵ月で辞めていくのはザラだそうです。

月給は約450ドル。iPhoneは買えない

ゼンさんは6週間工場で働きましたが、最初の月の給与は約3,100元、約450ドルでした。これは基本給に残業代を加えたものです。基本給は上海市が定めた最低賃金の2,320元とのことです。
 
ただしゼンさんの見たところ、Appleは残業代の支払いには注意を払っており、平日の残業には1.5倍、土曜日の場合は2倍の給与を払っていたそうです。
 
とはいえ、給与の2ヵ月分に相当するiPhoneを所有している人はほとんどおらず、大半は中国ブランドのOPPOなどを所有しています。
 

工場勤務が決まり荷物を持って寮に向かう人々

作業着は1組のみ。洗濯できず悪臭放つ


 
工場労働者は「掌知识 (Zhang Zhishi)」というオンラインプラットフォームに、専用アプリをダウンロードしてそのアプリからログインすることを義務付けられており、セキュリティやトレーニングについて学習するよう求められます。アプリをダウンロードしないと、工場のラインにはつくことができません。
 
また工場で着用する衣類、帽子、スリッパが1組のみ配布されます。1組しかないため、週末の休みまで洗濯できず、なかにはかなりの臭いを放っている人もいたそうです。

米国でのiPhone生産は非現実的

ドナルド・トランプ大統領はAppleに対し、米国内でのiPhone製造を求めていますが、ゼンさんは「まったく現実的ではない」と言います。中国人労働者は月にたった400ドルで働いています。確かにこの給料で、米国で働く人など見つからないでしょう。
 
万一米国に工場を移転するとしたら、雇用にはつながらないだろうとゼンさんは指摘します。工場での仕事のほとんどは機械でも行なうことが可能なため、人件費の高い米国で生産する場合は、ほとんどが機械に置き換えられるというのがゼンさんの見方です。
 

 
 
Source:Business Insider
(lunatic)

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